28 / 32
27話 混乱2
しおりを挟む王太子ラティゴはニヤニヤ笑いを引っ込めると、コホンッ… と1度、咳払いをしてから、ヒラソルとガロテをジッ… と見つめる。
「お前たちはこの王国で、なぜ双子が忌み嫌われるかを知っているか?」
ヒラソルが死なない理由について、ラティゴは2人に質問してから説明を始めた。
「ええっと… それは、双子が生まれると災いが付いて回ると… 昔から言われているからですよね…?」
ガロテの膝に抱きかかえられたまま、ヒラソルがおずおずと答えると… ラティゴはニコリと笑って、ヒラソルの頬をなでた。
「そんなの、貴族の間の迷信だろう?」
ヒラソルとラティゴのそんな微笑ましいやり取りを見て… ガロテの右目がピクリッ… と不快そうに痙攣する。
「いや、実際に災いが起こるんだ! だから昔から貴族の子に双子が誕生すると、どちらかの子をなるべく遠くの親類に養子に出すのさ」
「バカらしい! 平民の双子は災いなど関係なく、仲良く一緒に成長するというのに…!」
イライラとするガロテは、フンッ… と鼻を鳴らす。
「平民の多くはベータだから、災いが起きないのさ… だが、貴族はアルファとオメガばかりだから災いからは逃れられない」
「……?!」
デアリバ男爵家の領地に住む平民たちの中で、双子は見たことがあるけれど… 貴族の家で産まれた双子なんて、実際に見たことが無いからわからないよ?! この話のどこが、僕が死なない理由に関係あるの?!
ヒラソルはラティゴの話を聞き、首を捻る。
「ラティゴ… 焦らさずにさっさっと話せ! 聞くのが面倒になって来たぞ?!」
「だから、ガロテ… 我々3人が体験している、現在のこの状況こそが『災い』そのものでは無いか?!」
「んんんん?」
増々、意味がわからないよ?!
首を捻るヒラソルの眉間に、深いしわが寄る。
「双子のフェロモンは、容姿と同じように… 番から勘違いされる程そっくりだという意味だ」
「なるほど… お前が言いたいことが、わかってきたぞ!」
「えええ…?!」
ガロテ様?! 僕にはぜんぜん、意味がわかりませんけど?!
1人だけまったく理解出来ず、ヒラソルの顔はどんどん険しくなる。
「ヒラソル、フェロモンが似ているということは、フェロモンを放つ人間の身体を構成する要素も、そっくりだということになる…」
「んんん? 身体を構成… する要素?」
なんか… 難しい話になってきたぞ?!
「まぁ、見ていろヒラソル… すぐにわかるから!」
「ラティゴ、さっさと解け! オレは攻撃魔法しか学んでないから、自力では解けない!」
「そう、あわてるな… アルマドゥラ!」
不機嫌そうにボソボソッ… と文句を言うガロテの額に、ラティゴはぺたりと触れる。
ラティゴの手のひらから紫色の光がキラキラとあふれ出し、ガロテの額に魔法陣が浮かぶ。
「ひゃあああっ?!!」
これって… 魔法の光? さっき僕のお腹に回復の魔法をかけた時と同じ光だ?!
ガロテの額に浮かんだ魔法陣が、サラサラと欠けて消えてゆき… 同時にガロテの容姿が少しずつ変化する。
背中まである髪は鮮やかな赤い色に変わり… こげ茶色の瞳は珍しい紫色へと変わった。
「あっ?!」
ヒラソルはようやく、ラティゴの話を理解した。
自分の前にいる2人は… アルファの双子なのだ。
101
お気に入りに追加
204
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う
hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。
それはビッチングによるものだった。
幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。
国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。
※不定期更新になります。
王子様のご帰還です
小都
BL
目が覚めたらそこは、知らない国だった。
平凡に日々を過ごし無事高校3年間を終えた翌日、何もかもが違う場所で目が覚めた。
そして言われる。「おかえりなさい、王子」と・・・。
何も知らない僕に皆が強引に王子と言い、迎えに来た強引な婚約者は・・・男!?
異世界転移 王子×王子・・・?
こちらは個人サイトからの再録になります。
十年以上前の作品をそのまま移してますので変だったらすみません。
17番目の婚約者、男爵令息は王弟殿下に溺愛される
Matcha45
BL
国王陛下の17番目の婚約者、エレノア・マクレーン。陛下に呼び出され、学園を早退するも陛下は執務室で第5王妃と面会中。もともと研究者になりたかった彼は、陛下の行動に心を無にしようとするが王弟殿下がやさしく声を掛けて来てくれて?!
※にはR-18の内容が含まれます。
※この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる