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27話 混乱2

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 王太子ラティゴはニヤニヤ笑いを引っ込めると、コホンッ… と1度、咳払せきばらいをしてから、ヒラソルとガロテをジッ… と見つめる。


「お前たちはこの王国で、なぜ双子がみ嫌われるかを知っているか?」
 ヒラソルが死なない理由について、ラティゴは2人に質問してから説明を始めた。 

「ええっと… それは、双子が生まれるとわざわいが付いて回ると… 昔から言われているからですよね…?」
 ガロテのひざに抱きかかえられたまま、ヒラソルがおずおずと答えると… ラティゴはニコリと笑って、ヒラソルのほほをなでた。

「そんなの、貴族の間の迷信めいしんだろう?」
 ヒラソルとラティゴのそんな微笑ましいやり取りを見て… ガロテの右目がピクリッ… と不快そうに痙攣けいれんする。

「いや、実際にわざわいが起こるんだ! だから昔から貴族の子に双子が誕生すると、どちらかの子をなるべく遠くの親類に養子に出すのさ」 

「バカらしい! 平民の双子はわざわいなど関係なく、仲良く一緒に成長するというのに…!」
 イライラとするガロテは、フンッ… と鼻を鳴らす。

「平民の多くはベータだから、わざわいが起きないのさ… だが、貴族はアルファとオメガばかりだからわざわいからは逃れられない」

「……?!」
 デアリバ男爵家の領地に住む平民たちの中で、双子は見たことがあるけれど… 貴族の家で産まれた双子なんて、実際に見たことが無いからわからないよ?! この話のどこが、僕が死なない理由に関係あるの?!

 ヒラソルはラティゴの話を聞き、首をひねる。

「ラティゴ… らさずにさっさっと話せ! 聞くのが面倒になって来たぞ?!」
「だから、ガロテ… 我々3人が体験している、現在のこの状況こそが『わざわい』そのものでは無いか?!」

「んんんん?」
 増々、意味がわからないよ?!

 首をひねるヒラソルの眉間みけんに、深いしわが寄る。

「双子のフェロモンは、容姿と同じように… つがいから勘違かんちがいされる程そっくりだという意味だ」

「なるほど… お前が言いたいことが、わかってきたぞ!」

「えええ…?!」
 ガロテ様?! 僕にはぜんぜん、意味がわかりませんけど?!

 1人だけまったく理解出来ず、ヒラソルの顔はどんどんけわしくなる。

「ヒラソル、フェロモンが似ているということは、フェロモンを放つ人間の身体を構成する要素も、そっくりだということになる…」

「んんん? 身体を構成… する要素?」
 なんか… 難しい話になってきたぞ?!

「まぁ、見ていろヒラソル… すぐにわかるから!」
「ラティゴ、さっさと解け! オレは攻撃魔法しか学んでないから、自力では解けない!」

「そう、あわてるな… アルマドゥラ!」
 不機嫌そうにボソボソッ… と文句を言うガロテのひたいに、ラティゴはぺたりと触れる。

 ラティゴの手のひらから紫色の光がキラキラとあふれ出し、ガロテのひたいに魔法陣が浮かぶ。

「ひゃあああっ?!!」
 これって… 魔法の光? さっき僕のお腹に回復の魔法をかけた時と同じ光だ?!

 ガロテのひたいに浮かんだ魔法陣が、サラサラと欠けて消えてゆき… 同時にガロテの容姿が少しずつ変化する。
 背中まである髪は鮮やかな赤い色に変わり… こげ茶色の瞳は珍しい紫色へと変わった。

「あっ?!」

 ヒラソルはようやく、ラティゴの話を理解した。
 自分の前にいる2人は… アルファの双子なのだ。





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