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第4章 映画祭編
96話 音埼
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ホテルのジムで空手の鍛錬を始めてから、ギシギシと硬く強張っていた身体が温まり、ようやく気持ち良く滑らかに動くようになり、蘇芳の心が穏やかに凪ぎ始めた頃…
背後から知らない男の声で話しかけられ、蘇芳は警戒しピタリと静止する。
英国にいるのに、日本語で… それも馴れ馴れしい態度で、話しかけられたからだ。
[ズイブン気合い入ってるな! へえぇ… お前、空手なんかやるんだ?]
ほとんど聞く機会が無かったから(機会があっても拒絶した)声を知らなかっただけで、蘇芳にはその人物に心当たりがあった。
「・・・・・・」
背後を振り返り… 今は一番、蘇芳が会いたくない相手である声の主、音崎 聖を睨みつける。
[ガキみたいに、そういうの止めろよな! もう大人だろう?]
フレンドリーな雰囲気を作っているから、一瞬だけなら笑顔に見えるが、よく見ると音埼の目は、少しも笑っていなかった。
[なあ、お前さぁ… 今さら、大昔の話を持ち出して、オレの晴れ舞台にケチを付ける気か? スゲェ迷惑なんだけど!]
蘇芳が黙っていると音埼はぺらぺらと一方的に話し出す。
[大昔の話?]
蘇芳もイライラと面倒くさそうに日本語で返す。
[被害者は自分だけだと思っているのか? こっちも被害者なんだよ、ロクデナシの親父が原因で母親はうつ病にアルコール中毒とか… 心を病んじまうし、まぁオレはそれで祖父さんの養子に入れたからラッキーだったけどさ… まぁ、スゲェ田舎暮らしで貧乏だったのは仕方ないしな!]
音埼は嫌味たらしく、だらだらと話す。
「・・・っ」
<…心を病んだ? …養子? そんな話、母さんからも叔父さんからも聞いてない>
音崎の話に動揺する蘇芳。
[オレはそのコトでお前を責める気無いけど? 大人だから!! 伯父さんに聞いたけどおまえさぁ… 中学から私立の名門校に入るほど賢いんだって?]
[陽一叔父さんに会ったの?!]
蘇芳に腕時計とパソコンを贈ってくれた叔父のコトだ。
[仕事始めてからよく会うんだよ、同じ業界だし… まあ仕事の相談とかしたりしてさぁ]
叔父の陽一は、俳優の弟(蘇芳と聖の実父)東 星一と芸能事務所を設立し、経営しているから頻繁に音埼と会っていてもおかしくはない。
[お前だって裕福な伯母さんの養子になれてラッキーじゃないか、何が不満なんだよ?]
アーサーがジムへ迎えに来ると、送って来た時よりずっと沈鬱な様子の蘇芳に驚く。
「何かあったのか?!」
「アーサー…! 日本にいる叔父と連絡を取りたいので、もう少しだけ時間を下さい!!」
言いたいことを、ほとんど一方的にベラベラと話して帰って行った音崎の話に、衝撃を受けた蘇芳は、慌てて部屋へと戻った。
背後から知らない男の声で話しかけられ、蘇芳は警戒しピタリと静止する。
英国にいるのに、日本語で… それも馴れ馴れしい態度で、話しかけられたからだ。
[ズイブン気合い入ってるな! へえぇ… お前、空手なんかやるんだ?]
ほとんど聞く機会が無かったから(機会があっても拒絶した)声を知らなかっただけで、蘇芳にはその人物に心当たりがあった。
「・・・・・・」
背後を振り返り… 今は一番、蘇芳が会いたくない相手である声の主、音崎 聖を睨みつける。
[ガキみたいに、そういうの止めろよな! もう大人だろう?]
フレンドリーな雰囲気を作っているから、一瞬だけなら笑顔に見えるが、よく見ると音埼の目は、少しも笑っていなかった。
[なあ、お前さぁ… 今さら、大昔の話を持ち出して、オレの晴れ舞台にケチを付ける気か? スゲェ迷惑なんだけど!]
蘇芳が黙っていると音埼はぺらぺらと一方的に話し出す。
[大昔の話?]
蘇芳もイライラと面倒くさそうに日本語で返す。
[被害者は自分だけだと思っているのか? こっちも被害者なんだよ、ロクデナシの親父が原因で母親はうつ病にアルコール中毒とか… 心を病んじまうし、まぁオレはそれで祖父さんの養子に入れたからラッキーだったけどさ… まぁ、スゲェ田舎暮らしで貧乏だったのは仕方ないしな!]
音埼は嫌味たらしく、だらだらと話す。
「・・・っ」
<…心を病んだ? …養子? そんな話、母さんからも叔父さんからも聞いてない>
音崎の話に動揺する蘇芳。
[オレはそのコトでお前を責める気無いけど? 大人だから!! 伯父さんに聞いたけどおまえさぁ… 中学から私立の名門校に入るほど賢いんだって?]
[陽一叔父さんに会ったの?!]
蘇芳に腕時計とパソコンを贈ってくれた叔父のコトだ。
[仕事始めてからよく会うんだよ、同じ業界だし… まあ仕事の相談とかしたりしてさぁ]
叔父の陽一は、俳優の弟(蘇芳と聖の実父)東 星一と芸能事務所を設立し、経営しているから頻繁に音埼と会っていてもおかしくはない。
[お前だって裕福な伯母さんの養子になれてラッキーじゃないか、何が不満なんだよ?]
アーサーがジムへ迎えに来ると、送って来た時よりずっと沈鬱な様子の蘇芳に驚く。
「何かあったのか?!」
「アーサー…! 日本にいる叔父と連絡を取りたいので、もう少しだけ時間を下さい!!」
言いたいことを、ほとんど一方的にベラベラと話して帰って行った音崎の話に、衝撃を受けた蘇芳は、慌てて部屋へと戻った。
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