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第4章 映画祭編
83話 元、ジャック・ブレイカー
しおりを挟む「おっと… 元"ジャック・ブレイカー" の登場だ」
「え?!」
ニックのつぶやきに、蘇芳は数日前直輝と見た映画を思い出し興奮する。
蘇芳のコスプレの元となった映画の主人公役の俳優が現れたのだ。
長身で強靭な肉体を持つ美青年が、長い髪をなびかせながら、大きくて威力のある武器でバンバン敵を打つ。
時にはその体で体当たりし、蹴散らしたり。
逞しくて美しい戦士。
「やあ、ニック! こんなトコロに隠れていたのか!」
だがソコには、怠惰と暴飲暴食を重ね、体中がタルみまくったオジサンが1人。
「・・・・・・」
<ジャック・ブレイカーは、もうこの世には存在しないんだ…?!>
「アレックス、こちらはマコト・ワダ」
「お会いできて… 光栄です」
<…うあああ―――っ… なんて残念な身体にぃ~!!>
ニックに紹介され、引きつり笑いを浮かべた後…
期待が大きかっただけに、蘇芳の眉はへにょへにょと情けなく下がる。
「そして元、ジャック・ブレイカーのアレクサンダー・カナリスだ」
ニックの声に蘇芳は少々トゲを感じた、特に"元"と言った辺りで。
「おいおい、私は今もジャック・ブレイカーのつもりだよ! 悪い冗談だニック!」
アレクサンダーは大笑いする。
お酒の匂いがプンプンしているコトから、思考力が低下して、ニックのトゲに気付かなかったようだ。
「初めまして、マコト‥ 今もジャック・ブレイカーのアレキサンダー・カナリスだ!」
<…気さくに握手の手を出すアレックスは、悪い人では無さそうだけど>
蘇芳が握手に応えようと手を差し出した時、たるんだ腹が目に入り、ため息が出そうになる。
<直輝には言わないでおこう、だって直輝は『こんな男にメチャクチャ抱かれたい!!!』 と叫んでいたから>
夢は壊さない方が良いよね? と蘇芳は心の中で苦笑いを浮かべた。
「君も俳優だね?」
ブレイカースタイルの蘇芳を見て、アレックスは嬉しそうに微笑む。
「…今は、学業に専念しています」
俳優か? と聞かれると胸の中が罪悪感でいっぱいになる。
「そうか、いつか共演できると言いな!」
蘇芳の肩をポンポンッ… と叩き、アレックスはニックを振り返った。
「なあニック、新しい"B・D" がどんなストーリーか少しぐらい教えてくれよ!」
「ダメだ!」
穏やかだったニックの雰囲気が一転して、厳しくなる。
「ジャックが出るかどうかぐらい教えてくれよ?!」
酔って赤い顔のアレックスが、より赤くなる。
「ダメだ!」
頑として受け付けないニック。
険悪度が増してゆき、2人の間でオロオロする蘇芳。
「あ… あの今は少し…」
「おおお―――っ!!! こんなトコロにいたのかニック!!」
「ひゃっ!」
険悪なムードの中でオロオロする蘇芳の背後から、第3の男が大声で呼びかけながら乱入して来た。
ソレもアーサーと同じぐらいの大男だ。
驚いた蘇芳は、その場で飛び跳ねそうになる。
「おおっとぉ… コレはコレは~?!」
大男は芝居がかった態度で、蘇芳の手を取りサッとキスをする。
「ダメだよ口説いては、マコトの左手には指輪があるだろう?」
ニックはにやにや笑いで大男を諭す。
カエルのブレスレットや時計は外して置いてきたが、指輪だけはアーサーが付けていた方が良いというから、そのままだ。
「おやおや~」
ラテン系で黒髪の大男は眉尻を下げ、残念そうにため息をつく。
思わずプハッ… と蘇芳は吹き出した。
「なぁ君! ただのファッションだと言ってくれ!」
「残念ですが…」
蘇芳は愛し気に、自分の左手に嵌めた金の指輪を撫でて見せた。
大男は大袈裟に落ち込みつつ、ちゃっかり蘇芳の肩に寄り掛かる。
「カルロ! いい加減そのクサイ芝居は止めろ!!」
「あ! アーサー?」
不機嫌そうな声がした方を見ると、いつの間にかニックの妹ジョーンを連れたアーサーが、蘇芳の近くに戻って来ていた。
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