英国紳士の溺愛

金剛@キット

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第2章 コテージ編

63話 贈り物

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  夕方、コテージで帰り支度を終え蘇芳とアーサーはリックの迎えを待っていると…
(アーサーの専任運転手、リックはフェアリーゲート出身。 ついでに実家に帰っていた)

 贈り物のぬいぐるみや、フェアリーゲートの工房で作られた工芸品をを抱えたMrsメイソンがやって来た。



「あらっ!  可愛いカエルちゃん‼  Mr.東野は本当にオシャレさんねぇ!」

 Mrsメイソンに蘇芳の手首で光る白金プラチナの、どこか愛嬌のあるカエルのブレスレットを発見された。

「オシャレ?  …僕に一番縁遠い言葉ですよ」

 本日のコーデは上から下までアーサーの選択だ(下着に至るまで)。


「アハハハハッ」

 乾いた笑い声を上げる蘇芳の頭になぜか小さなフェアリーの髪飾りを付けるMrsメイソン。
 (普段自分の子供たちにしているコトを、ウッカリ蘇芳にもしてしまったらしい)


「まぁ~ 男性とは思えない可愛さだわ‥ それに‥ この素敵な黒髪!  ‥うらやましいわぁ!」

 自分を見つめたまま、ため息をつくMrsメイソンに、蘇芳はリアクションに困り果てる。


「カエルは蘇芳の守護精霊なんだ」

 妖精の角をMrsメイソンに付けられた得意満面のアーサー(蘇芳がオシャレだと褒められたコトが嬉しいらしい)


「アーサーの守護精霊はヘビらしいですよ?」

 蘇芳に言われアーサーは、小指のヘビの指輪をMrsメイソンに見せる。


「それは少し悪趣味じゃないかしら?」

 顔をしかめたMrsメイソンに言われても気にせず笑うアーサー。


「ヘビの好物はカエルだそうだ」

 アーサーは含みのある言い方で、蘇芳を熱っぽく見つめ…
 前夜から散々、ベッドで食われまくっている蘇芳は赤くなる。


「本当に… ヘビににらまれたカエルの気分です」

 小さなフェアリーが縁に座るマグカップで蘇芳はハーブティーを飲む。


「ああ… そうだ蘇芳、君に渡すものがあった‥忘れるところだった!」

 Mrsメイソンにされるがままのアーサーが、背中を向けると小さなフェアリーが2人付いていて、蘇芳はブフッ… と吹き出す。

 コートのポケットからアーサーは何かを取り出し、フェアリーのぬいぐるみがコロコロと転がるソファーの、蘇芳の隣に腰を下ろした。

「無いと不便だろう?」

 蘇芳の手を取りアーサーは、カエルのブレスレットの隣に腕時計を革ベルトで止める。


「コレは‥?」

 蘇芳にさえ見るからに高級だと分かる、ズッシリと重みのある黒光りした腕時計だ。

「同じものがクローゼットにもう1箱ある…  そちらもスタッフが閉じて以来1度も開いていない」

「はい?」

「記念パーティに参加して、礼儀で購入するとよくやる失敗さ、 同じ商品を以前も買っているとスタッフに言われ"知人に贈った"  と誤魔化した覚えがある… この手首を見れば3個目を買うという、ミスを防げる」

「いくら何でも… 僕には分不相応かと…」

 カエルと時計の間の肌をアーサーが少しカサついた親指で撫でながら答えた。

「ただの道具だ、使わなければ何の価値も無い… それに君の方が良く似合う」
 手首に唇をよせ、親指で撫でていた肌に、アーサーはそっとキスする。

「うーんん」

 難色を示す蘇芳に…

「あらっ素敵! 受け取ってしまいなさいなMr.東野!」

「……っ‼」

 Mrsメイソンの存在を忘れていた蘇芳は、その場で飛び上がりそうになる。
 実際に2㎝ぐらい浮いたかも知れない。

「ほら、ベルもこう言っているし」

 ニヤリと笑うアーサーと、ニコニコと微笑むMrsメイソンに蘇芳は追い詰められる。

「お‥お借りします」

 ガックリ項垂うなだれる蘇芳にケロリと怖いコトを言って退けるアーサー。

「また洗濯しても、もう一つあるから安心しろ」

「い…いえ!  もう2度と時計は洗いません!  …たぶん…」

 恐々と蘇芳は時計に触れると、ベルトが柔らかく腕に良く馴染んでいた。

 満足げに微笑むアーサーの顔を見て…
 頑なに拒むのは恋人として良くないコトだと思い至り、諦めの境地で蘇芳はため息をつく。

「ありがとうございます… 大切に使います」

  コッソリ… アーサーとMrsメイソンが "ありがとう" 、"どういたしまして"   と微笑みあっていることに気付かない蘇芳。

  そんなアーサー自身も、自分の頭に妖精の角が付いているコトに気付いてない。
 (と言うか忘れている)


 リックが迎えに来た時、2人の姿を見て吹き出すのは当然の成り行きだった。







 翌週の週末、寮で仲良く紅茶を飲む蘇芳とドラゴン4人。


「水泳教室は?」

 戸川が赤い顔をひくひくさせながら蘇芳に聞く。

 なぜか横でドラゴン3人がお茶を一斉に吹き出す。


「アーサーが昨日からギリシャなんです」

 答えながらフェアリー付きのマグカップで紅茶を飲む蘇芳。
 

「ヒュ~  忙しそ…う… あああああ―――っ!!  オイオイオイ! この時計っ…車が‥」

 蘇芳の腕時計に、戸川の目が釘付けになる。


「うわああああああああ――――――っ!  怖過ぎて聞きたくない! 聞きたくない!   使えなくなるから言わないでぇ―――っ!!」

 自分の耳を塞ぎ叫ぶ蘇芳。







 蘇芳が叫び声を上げている頃…
 ギリシャのアーサーはタイラーとその同僚ボディーガードに守られながら宝飾店に入る。
 


「コレと同じサイズで恋人に贈る指輪を… 特別なモノにしたい」

 左手の小指から、ヘビの指輪を外し店員に渡す。






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