英国紳士の溺愛

金剛@キット

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第2章 コテージ編

54話 トゲ 

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 今夜も恐怖の水泳教室だと怯えていたら、蘇芳はなぜかステファノのサロンへと連れてこられた。


「いらっしゃ~い! キラキラの王子様☆彡」

「ステファノ!」
 
 ギュッとハグする2人。

 何度か会ううちに、蘇芳はステファノが大好きになっていた。

 アーサーがニヤリと笑い蘇芳の頬を撫でる。

「ゼフィロスへ行くから、今夜は水泳の特訓は休みにする」

「本当にアーサー?!  ヤッターッ!」

「今夜はクレベールが、君を落とすと宣言した30日目だからな」
 
「ああ、そういうコトですか… 本当にアナタって時々スゴク意地悪になりますね… んん?」
 
 大きな手を掴まえ、てのひらにキスしようと、蘇芳は唇を寄せるが…
 赤く炎症を起こしているのを見つけ、ジッ… と観察する。

トゲが入ってる!!」

 アーサーは蘇芳の手から、手を引き抜こうとするが…
 両手でギュッ… と掴んで蘇芳はアーサーの手を放さなかった。


「あら大変! 消毒薬を取って来るわ」

 二人のやり取りを見ていたステファノもアーサーのてのひらを見て、慌てて部屋を出てゆく。

「このとげ… フェアリーゲート湖の桟橋さんばしで入ったヤツですよね? 僕を助けようとした時に…」

 暗い顔で蘇芳が問い詰めると…


「そんなコトはどうでも良いから… 蘇芳、早くゼフィロスへ行く支度をしろ」

 蘇芳がとげの一つを指先で押すとうみが出た。


「‥痛いぞ!」

 顔をしかめてアーサーは、蘇芳の手から自分の手を、引き抜こうとするが…
 がんとして蘇芳は、アーサーの手を放さなかった。


「コレだけめば、痛くて当然です! …少し我慢して下さい、カバンからとげ抜きを出しますから」

「それより蘇芳、早く支度をしろ」

 頑固さでは、アーサーも蘇芳に負けていない。


「アーサー! 忙しいからって放置してたでしょ?! 僕がこのとげ取らなければ、誰が取るのですか?!」

「別に放置したワケでは… 少し忘れたダケだ…」

 子供のような言い訳をするアーサーに蘇芳は呆れてため息をつく。


とげを抜かせないなら、僕も泳ぐ練習しませんから!」

「ソレとコレとは別だろう? たかがとげで私は死ぬコトはないが、君の場合はまた湖で溺れたら死ぬのだから!」

「・・・・・・」
 蘇芳は無言で腕組みをしてアーサーをにらむ。


「…ああ! 分かった!」

 両手を上げてアーサーはため息を吐き降参する。



 眼鏡を掛けるとステファノが用意した薬で、てのひらを消毒しながら、蘇芳はプリプリと怒りアーサーに説教した。


「14本ですよ?!  14本!!」

「何も数えなくても… 私も一応は抜いたんだ」

 困り顔で、アーサーは蘇芳をなだめるが…


「深く入り込んでいて、自分では上手く抜けなかったのでしょう?  言ってくれれば!  僕のせいだし…」


 言えば蘇芳は落ち込むだろうとアーサーは言えなかった。



「僕はとげ抜きは上手なんです… ガーデニング好きの母の手からとげを抜くのは僕の役目だったし」


「ねぇ、お2人さん☆彡  何時まで、イチャついてるの?」

 ニコニコ微笑むステファノに、2人は声を掛けられ、何となく頬を赤くする。


「…そうだった蘇芳、急げ」

「あ、忘れてた! ごめんなさい、アーサー」

 アーサーのソデを掴み、蘇芳はしょんぼりと謝る。 

 あまりの可愛さに、その場にいた全員(スタッフ含め)の胸でキュキューンと♡が炸裂した。

「性悪な小悪魔め!」

 蘇芳をギュウギュウと抱きしめながら、アーサーはののしる。



「あらまぁ~ キングも骨抜きだわ♡」

 満面の笑みを浮かべるステファノ。



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