英国紳士の溺愛

金剛@キット

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第1章 誓約編

28話 ふしだら

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 早朝、アーサーは自分のベッドで熟睡する蘇芳を起こさないよう…
 頬に額… 掌… 最後に唇… 順番にキスを落とした。

 昨夜の蘇芳を思い出すと、どうしてもアーサーの顔は緩んでしまう。


「嬉しかったよ… 蘇芳」

 独り言のようにささやいた。

 ずっと蘇芳は、嫌々ながらゼフィロスの"契り" に付き合うのだと、アーサーはそう解釈していた。

 だから蘇芳の口から、"契り" の話が出た時は…
 抱いても良いとアーサーは許しを得たと知り、有頂天になったのだ。

「君の声を聞きたかったが、仕方がない… 夜明け近くまで鳴かせてしまった私が悪いな」

 夢中になり過ぎて、優しく出来なかったコトは、少々悔やんでいるが…
 次からは必ず心も身体もとろけるように抱くと誓う。


 静かに寝室の扉を開き、もう一度眠る蘇芳を振り返り甘く微笑んだ。

「行ってくるよ」

 扉を閉め仕事へと向かうアーサー。

 ドイツへ2日間の出張だ。







「きゃっ!!」

 小さな叫び声で蘇芳が目覚めると…
 寝室の入口に、ブラウンの髪の若い女性が呆然と立っていた。

 女性の名前はキャロリン、家政婦見習いとして新しくギルボーンハウスに来た使用人で、蘇芳も紹介されていた。


「え? ‥わぁっ!」

 蘇芳も驚いて身体を起すが…
 自分が全裸だと気づき、慌てて毛布で肌を隠す。

 彼女は険悪な目で蘇芳をにらみ付け、部屋を出てゆく。


「アーサーなぜ起こしてくれなかったの? …きっとバレたよ」

 自分の裸を見下ろし、蘇芳は赤く腫れた胸の尖りや、新たに付けられたアーサーの跡に顔をしかめ…
 ため息をつく。






 タイラーの迎えで、学校からギルボーン・ハウスへ直輝と2人で帰ると、使用人たちの態度が激変し、蘇芳と目も合わせてくれなかった。

「何だろう?なんか感じ悪く無いか?」

 さすがにコレには直輝も気付いた。


「うん…」

 この屋敷に来るたび、何かと親切にしてくれた人たちだったから、蘇芳は落ち込まずにはいられなかった。

 アーサーび寝室にいた家政婦見習いの女性… 
 キャロリンが話したのだ。

 背中をタイラーにトントンと叩かれ蘇芳は微笑む。

 タイラーは正確に蘇芳とアーサーの関係を把握していて…
 それどころかセレブ御用達のボディーガードと言うダケあり、ゼフィロスの存在まで知っているとのコトだ。


 自分の部屋に荷物を置き、蘇芳は直輝の部屋へ行く。
 
 プラプラとバニーも現れ

「お帰り~っ! おべんきょ~お疲れさ~ん」

「ただいま~っ! バニーは何してた?」

 何気なく直輝がたずねると…


「フェラチオ~っ」

「ぶっははは! 下っ品~っ!」

 直輝とバニーは気が合うらしく、蘇芳は少しだけ嫉妬した。


「なあ蘇芳… 何かあった?」 

 言いにくそうに直輝が蘇芳にたずねた。


「何かって?」

 まだ、自分でも恥ずかしいから、話したくなくて蘇芳は誤魔化そうとするが…
 直輝の方が一枚上手だった。


「だから~ キングとセックスしてるのバレただろう? ~って意味~っ! 家政婦のおばさんキッチンで話してたぜ~?」

「はぁうっ!」

 直輝の直球に、真っ赤になり蘇芳は態度で肯定してしまった。


「朝… 彼の寝室に裸でいるの… キャロリンに見られた…」

 赤い顔で蘇芳は渋々口を開いた。


「確か、家政婦見習いの一番若い女の子?」

 直輝の問い掛けに、蘇芳がコクリとうなずいた。

  
「アイツ嫌~い! なんか気取っててさぁ~ 自分がスゲェ美人だと思ってるんだぜ~」

 小指を立てて、バニーは体をくねくねさせ、キャロリンの真似をする。  

 
「オレも何度か無視されたなぁ」 

 バニーの真似にケラケラ笑う直輝。


「蘇芳のが絶対可愛いから安心しろよな~っ! チョットだけ色気が足りないけどさ~っ!」

 バニーが少々微妙な慰め方をする。







 ――― 翌日。

 蘇芳と直輝がタイラーと学校から帰ると、更にギルボーン・ハウスの雰囲気が悪くなっていた。


「何なんだ!?」
 
 動揺する蘇芳と直輝。

 使用人たちは目を合わせないどころか、白い目でにらまれた。


「お帰り~っ!」

 バニー1人ダケが、にこやかに出迎えてくれた。


「ただいま… 何か視線が痛いんだけど?」

 直輝がつぶやくと蘇芳も怯えたようにうなずく。


「庭ですれ違ったガーデナーに… チッって舌打ちされたよね?」

 首を傾げて直輝がこぼすと…


「ああ、アイツか~大したモノじゃないのに大騒ぎしやがって」

 珍しくバニーが不機嫌そうにフンッ… と鼻をならした。


「バニー、大したモノって、何?!」

 直輝とバニーのやり取りに…
 いつもは護衛に徹して見事なほど干渉しないタイラーまで注目する。


「ちょっと握ってやったんだ」

「何を?」

「ペニス」

 その場で倒れそうになる日本人2人。


「嫌がらせでもされたのか?」

 タイラーだけは冷静に問う。


「いい加減ヤル相手欲しくてさぁ~ 男全員~ 誘ってみた~」

 ケロリと言うバニー。


「相手はいたか?」

 こちらもケロリと聞き返すタイラー。


「実はアンタの帰りを待ってたぜぇ~っタイラー!」

「気が散るから、依頼先ではセックスは出来ない、諦めてくれ」

「ええ~! 全滅かぁ~ 今度は全裸でチャレンジするか~! 最初はトーマスのベッドだな~っ」

「トーマスさんも誘ったの⁈」

「だって1番偉い人から始めないと~ 気を悪くされるだろう~?」

 バニー、トラブルメーカー発覚。


「ふしだら男子… いや、ふしだら王子の名をバニーにやるよ」

 直輝は爆笑。
 蘇芳は唖然。
 ふしだら王子を命名され少し嬉しそうなバニー。


「何ならお前らが~相手してくれてもイイけどさぁ~っ?」


 バニーの爆弾発言に絶句する2人。






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