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62話 故郷
しおりを挟む色は暗いワインレッドで、背中側の裾が長く、綺麗にお尻が隠れる燕尾服型の上着に、黒のパンツを穿き、膝まである革製の乗馬用ブーツを履き、アーヴィと共に颯爽と厩舎に現れたヴィトーリア。
ソコでヴィトーリアが見たのは、青毛の若い馬たち。
みんなカステーロの子供や孫たちだ。
「隣国で修行したあと、一時期西方騎士団に所属していたんだが、その間にカステーロに惚れ込んだ、厩舎の奴らが種付けさせろと煩くて、任せていたらこうなった」
「フフフフッ… カステーロもよく頑張ったね! 主に似たのかな?」
薄っすら頬を染めたアーヴィを、面白そうに見上げて笑うヴィトーリア。
「ソレでだなヴィー…」
「んん?」
「アイツも10歳越えてるし …この生まれ故郷で、のんびり過ごさせたらどうかと思うんだ」
馬の寿命は平均20~30年、精神的ストレスが多ければ、もっと短命になる。
「もっと種付けさせたいの?」
「まぁソレが一番の理由だな」
厩舎前の柵の中で、のんびりと草を食む雌馬が気に入った様子で、擦り寄るカステーロを、2人で眺めた。
「私よりもアナタの方が、彼とは付き合いが長いから、アナタが決めてやれば良いよ」
隣に立つ背の高い夫の手に触れるヴィトーリア。
「ああ…」
アーヴィは妻の細い手を握り返す。
2人はカステーロの息子たちに乗り、西方騎士団の本部へと向かう。
「おお、やっと顔を見せに来たな! 10年ぶりだなアーヴィ!!」
ハンサムなノルチの眉間に、以前は無かった、深いシワが出来ていた。
ソレだけ気苦労が多かったのだろう。
「ご無沙汰しております! ノルチ団長」
アーヴィとノルチはガシッと握手して、ギュッとハグすると、カラカラと笑い、お互いの背中をバンバンッ乱暴に叩き合う。
この10年でノルチは、オウロ公爵にも負けない、西方では知る人ぞ知る騎士団長になっていた。
騎士団と癒着していた大きな強盗団は、オウロ公爵が一掃したが…
だからと言って、隣国からの流れ者たちが、来なくなるワケではない。
逆に治安が良くなり、安く土地が手に入るという理由から移住者が増え、そうなると別の問題も増えてくる。
「ノルチ団長、妻のヴィトーリアを紹介します」
アーヴィが自分の後ろに立っていた、ヴィトーリアに手を差し出す。
ヴィトーリアはアーヴィの手に掴まり、優雅にお辞儀をした。
「お初にお目にかかりますノルチ団長、夫から数々の武勇を聞き、一度お会いしたいと思っておりました」
顔を上げ、キラキラと光る深い紺青色の瞳で、ノルチを見上げるヴィトーリア。
ノルチはパチパチと瞬きをした後、少年のようにニカッと笑う。
「アーヴィに奥方… あの、アーヴィに奥方が出来たのか!! コレは良い!!」
ヴィトーリアに、サッと握手の手をノルチが差し出すと…
差し出された手を、力強くギュッと握るヴィトーリアに、ノルチは増々笑みを深くする。
「奥方はこの男と、ドコで知り合われたのかな? 私が知る限り、アーヴィ程、面倒な男は居ないのだが… 何か困って居るコトがあったら、私に相談すると良い」
ニヤニヤと笑うノルチに、アーヴィは渋い顔をする。
「ノルチさん… オレの妻を口説く気ですか? 本当に止めて下さいよ」
「アーヴィは、婚約者だったのです」
ヴィトーリアが答えると、ノルチは酷く驚いた顔をする。
「親父さんの思惑に乗ったのか? イヤ、でもコレほどの美人相手では仕方ないか!」
「ヴィトーリアはエスケルダ家の者です」
アーヴィの言葉にノルチは息を呑み、ヴィトーリアをジッと見つめる。
「…君が? …そうか」
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