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50話 師匠たち

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 新婚初夜3日目の夜に、夫が仕掛けた甘く淫らな情交を妻は何とか生き残り…


 結婚4日目の朝、オウロ公爵邸の朝食室に、オエスチ公爵夫妻は揃って顔を出す。


 朝食室には既に、オウロ公爵夫妻と長男のヒール、大奥様とエズメラウダ公爵夫妻の姿があった。


「満足そうな顔をしてるなアーヴィ、どうやら奥方に拒まれなかったようだな」

 エズメラウダ公爵がニヤリと笑う。


 エズメラウダ公爵ラーゴも、公爵邸で新婚初夜を3日間過ごしたが、初日は怒り狂った妻に暴れられ、抱くどころかソファーで1人寂しく寝る破目になったのだそうだ。


 当の暴れた妻、エズメラウダ公爵夫人クリステルは、学園生時代からの親友、オウロ公爵夫人フロルにシチュウを口に入れてもらい、満足そうにモグモグと食べている。

 その隣で御行儀良く、長男ヒールが自分でモグモグとパンにバターを塗って食べていた。


 エズメラウダ公爵は自分の妻が、餌付けされてる姿をいつものコトだと達観した様子で眺めている。


 パカリと口を開けて、その光景を見つめるヴィトーリア。

「ホホホホホホッ! トーリア、アナタも公爵夫妻を見習いなさいな」


「大奥様…」

 赤い顔でヴィトーリアは何時ものクセで、大奥様の席の隣に着くと、その隣にアーヴィが着く。


「ふふふふっ… 元々は体調を崩して食事を摂らなくなった私の為に、旦那様が心配して始めたコトなのです… こうして口に入れられると自分で食べるよりもたくさん食べてしまうのです」

 公爵夫人フロルが口を挟む。


「ホホホホホホッ! まぁそうだったのですか」

 大奥様はニコニコと機嫌よく笑い、チラリとヴィトーリアを見る。


「ううううっ… 私は今、とても体調が良いので… 膝に乗せてもらわなくても、たくさん食べますから…」

 ヴィトーリアが赤い顔で弁解すると…


「大奥様、いずれは私も妻を膝に乗せて食事を摂るつもりですから、どうか安心を」
 
 ニッコリと爽やかに…
 自分は美男だとよく理解した上で、人を虜にする麗しい笑顔を振りまくアーヴィ。

「まぁ! ソレは心強いコト! ホホホホホッ!」

 頬をバラ色に染めて微笑む大奥様。


 ヴィトーリアは恥ずかしくて顔を上げられなくなる。


「オエスチ侯爵夫人… 分かるぞ其方の気持ちが、やっと普通の感覚を持つ者が現れたな」

 エズメラウダ公爵が、ヴィトーリアに同情し苦笑いを浮かべる。


 微妙な連帯感がエズメラウダ公爵との間に生まれ…
「・・・・・・」
 ヴィトーリアは何と答えて良いのか分からず、引きつり笑いを浮かべる。
 

「実は皆様にご相談がありまして…」
 アーヴィはテーブルの下でヴィトーリアの手を握る。

「何だアーヴィ、言ってみなさい」
 オウロ公爵が鷹揚に答える。
 
 公爵夫人は、夫の口にシチュウの肉を入れるのを止めた。


「一度、西方へ帰ろうと思うのです… 妻の為に」

 チラリとヴィトーリアを見て微笑むと、アーヴィはオウロ公爵に視線を戻す。

「向こうへ移住するつもりではないのだな?」
 公爵は頷きながら尋ねた。

「はい、騎士団の仕事を気に入っていますから」

「つまり我々は副騎士団長職の代行を、このまましばらく続けろと言うのだな?」
 エズメラウダ公爵も答える。


「時期は今でなくても… もっと先でも良いのですが…」

「いや、行くなら今が良い… 奥方を会わせればお父上も少しは落ち着くだろう?」

 オウロ公爵がピクリと左眉を跳ね上げる。


 オエスチ前侯爵が勝手に婚約者を送り付けて来た時に、アーヴィは知恵を借りたくて2人の公爵に相談していたのだ。
       

「確かに!」


 アーヴィはオウロ公爵からは、誠実さと一度決めたコトは必ずやり通す、強い意志を学び…

 エズメラウダ公爵には、物事を上手く回すための腹黒さと、情報の使い方を学んだ。



 本当に良い師匠たちと巡り会えたと微笑むアーヴィ。






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