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44話 新婚初夜2日目の朝
しおりを挟む新婚初夜2日目の朝。
朝食を終えると、2人で公爵夫人おススメの薬湯を飲みながら…
昨夜、途中で中断した話を再開する。
「公爵夫人がお前の叔母上と話し合って、詳しい金額は知っていたから途中で銀行に寄って借金返済の手続きはした」
王立第二騎士団の本部は主要機関が集まる地域にあるため、その手のコトは要領良くこなせば、短時間で出来るのだ。
(ほんの少しだけ職権乱用した)
「何ですって?!」
顔色を変えるヴィトーリア。
「お前への支度金代わりだ」
「ああ… オエスチ侯爵家はお金持ちでしたね…」
冷めた声で零すヴィトーリアにムッとするアーヴィ。
「バカにするな!! 金は全部オレが騎士になってから稼いだ金だ、オエスチの金など使えるか!!」
カッとして声を荒げるアーヴィ。
「…でも、とても大きな金額…」
アーヴィに怒鳴られヴィトーリアは、怯えた顔をする。
騎士は名誉を重んじる職業で、たとえ天下の王立騎士団でも、給金はとても安いのだ。
「オレの元上司は金を増やす天才なんだ、あの人は元王子だから国の金の流れを扱う仕事をずっとしていたから…」
「元王子? エズメラウダ公爵のコトですか?」
「そうだ、あの人は部下の貧乏騎士たちが、少しでも富めるようにと、コチラが教えを乞えば給金の良い使い方を、懇切丁寧に指導してくれたのさ」
「良い使い方?」
眉をひそめるヴィトーリアの頬に、さりげなくキスをするアーヴィ…
癇癪を起し怒鳴ったせいで怯えさせたコトを後悔しているのだ。
「オレは造船所に投資をして稼いだ、ソレに公爵夫人がやってる観賞魚とソレを入れるガラスの器を作る工場にもだ… 他にも3件程ある」
ニヤリと笑い、ヴィトーリアを膝の上に乗せ、アーヴィは公爵夫妻の真似をする。
「観賞魚… とは、貴族の間で流行っている、あの赤くて可愛い魚ですか?! 音楽室や玄関でも見た? アレは公爵夫人がやっているのですか?!」
「最近は隣国にも出しているという話だ、その魚たちは金と同じ値段で取引されているのさ… 庭園の人工池にもデカいのがいただろう? 」
「そっちは見てない…」
「初夜が終わったら見に行こう」
膝に乗せたヴィトーリアの腰を抱いて、アーヴィは顎にチュッ、チュッ、とキスをする。
「はい…」
顎にキスをされ、ヴィトーリアもアーヴィの唇にチュッ、とキスを返す。
「オレはオエスチ侯爵家を頼らなくても、そこそこ裕福で、小さな家を買ってお前と暮らして行けるぐらいの貯えはあると分かったか?」
「はい…」
自分の思い込みで、アーヴィを侮辱してしまったと知り、恥ずかしさで赤くなり謝罪の気持ちを込めて「ゴメンナサイ…」と言いながら耳にキスをするヴィトーリア。
「他に何か言いたいコトは? ソレに知りたいコト…」
「あ… あるけど… 今は良いです…」
ヴィトーリアにはずっと聞きたかったコトがある。
「なぜだ? 全部話してしまえ」
「・・・・・・」
ヴィトーリアはまた侮辱してしまいそうで怖かった。
「怒らないから話せ、ヴィー」
穏やかにラベンダー色の瞳で微笑むアーヴィ。
チラリとアーヴィを見て、スグに目を逸らすヴィトーリア。
「あ… あの、エスケルダ家が2度目の襲撃を受けた時… その原因を作ったのはアーヴィの父上ではないかと」
目を合わせず、ヴィトーリアはおずおずと聞く。
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