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28話 伯爵と男娼4
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セルビシオ伯爵は、ガタガタと震える男娼に見せつけるように、腰に下げた大剣をゆっくりと鞘から抜いた。
殴られてふらふらする身体で、アユダルはフルタの手を借りて立ち上がると… 剣を抜いたセルビシオ伯爵の姿が視界に入る。
その先には、アユダルを助けようとした風魔法を放った男娼が… 蛇に睨まれた蛙のように、恐怖で身体が凍りつき動けなくなっていた。
「逃げろ――――――っ!! 早くここから逃げろ! 逃げるんだ!!」
娼館中に響き渡りそうな大声で、アユダルは夢中でさけんだ。
アユダルのさけび声をきっかけに、風魔法を放った男娼はビクッ! と飛び跳ね、ウサギのように駆け出し… 酒場にいた客や男娼たちも、危険なトラブルに巻きこまれるのを恐れて、わらわらと逃げ出した。
「お前っ…!! よくも私の邪魔をしたな…!!」
セルビシオ伯爵は、急に大声でさけび出したアユダルに気を取られ、自分が罰をあたえようとしていた、風魔法の男娼を逃がしてしまった。
腹を立てた伯爵は、再びアユダルに向かって怒りをあらわにする。
「・・・・っ!!」
「逃げないと! アユダル… 逃げよ!」
恐怖でガタガタと震えながら、アユダルはフルタに引っ張られて、ふらつく身体で逃げ出すが…
「ひっ… !!」
ガタタッ…! と、もつれた足が椅子に引っ掛かり、椅子ごと引っくり返ってしまう。
「急いでっ…! アユダル… ううっ… 急いでっ…! 急いでっ…!」
涙声で名前を呼び、フルタが助けようと夢中で引っ張るが、アユダルは殴られた時の衝撃と恐怖で、身体に力が入らず… 立ち上がってもまっすぐ歩けなくて、テーブルや椅子にぶつかり足を取られ、モタモタとしてしまう。
「ひっ… ううっ…! くううっ…!」
こ… こんな奴に殺されてたまるか!! クソッ…! クソッ…! 逃げてやる! 逃げてやる!
フルタに支えられアユダルはようやく、娼館の入り口付近まで来たところで…
ゴツッ… ゴツッ… ゴツッ… ゴツッ… と重々しいブーツの不穏な足音が、アユダルたちに向かって近づいてくる。
「獣―――っ!! 人殺し―――っ!! お前なんて!! お前なんてぇ―――っ!!」
フルタは狂ったように泣きさけび、近くのテーブルにあった、客たちが食べ残していった料理や酒が入ったゴブレットを取り、伯爵に次々と投げつけた。
ベチャッ…! とフルタが投げた牛肉のシチューが騎士服を汚し…
続けてゴブレットが、カンッ…! と金属音を響かせて、セルビシオ伯爵が鞘から抜いた大剣に当たる。
それがセルビシオ伯爵の、怒りの炎に油を注いだ。
「この…っ! 生意気な男娼が! 伯爵の私を傷つけた罪で、お前たちを今すぐ罰してやる―――っ!」
怒りで目を血走らせて、伯爵は唾を飛ばしながら怒鳴った。
プライドを傷つけられたセルビシオ伯爵は、アユダルとフルタに復讐しようと、本気で殺すつもりなのだ。
剣を振り上げたセルビシオ伯爵は、アユダルとフルタに向かって振り下ろす。
殴られてふらふらする身体で、アユダルはフルタの手を借りて立ち上がると… 剣を抜いたセルビシオ伯爵の姿が視界に入る。
その先には、アユダルを助けようとした風魔法を放った男娼が… 蛇に睨まれた蛙のように、恐怖で身体が凍りつき動けなくなっていた。
「逃げろ――――――っ!! 早くここから逃げろ! 逃げるんだ!!」
娼館中に響き渡りそうな大声で、アユダルは夢中でさけんだ。
アユダルのさけび声をきっかけに、風魔法を放った男娼はビクッ! と飛び跳ね、ウサギのように駆け出し… 酒場にいた客や男娼たちも、危険なトラブルに巻きこまれるのを恐れて、わらわらと逃げ出した。
「お前っ…!! よくも私の邪魔をしたな…!!」
セルビシオ伯爵は、急に大声でさけび出したアユダルに気を取られ、自分が罰をあたえようとしていた、風魔法の男娼を逃がしてしまった。
腹を立てた伯爵は、再びアユダルに向かって怒りをあらわにする。
「・・・・っ!!」
「逃げないと! アユダル… 逃げよ!」
恐怖でガタガタと震えながら、アユダルはフルタに引っ張られて、ふらつく身体で逃げ出すが…
「ひっ… !!」
ガタタッ…! と、もつれた足が椅子に引っ掛かり、椅子ごと引っくり返ってしまう。
「急いでっ…! アユダル… ううっ… 急いでっ…! 急いでっ…!」
涙声で名前を呼び、フルタが助けようと夢中で引っ張るが、アユダルは殴られた時の衝撃と恐怖で、身体に力が入らず… 立ち上がってもまっすぐ歩けなくて、テーブルや椅子にぶつかり足を取られ、モタモタとしてしまう。
「ひっ… ううっ…! くううっ…!」
こ… こんな奴に殺されてたまるか!! クソッ…! クソッ…! 逃げてやる! 逃げてやる!
フルタに支えられアユダルはようやく、娼館の入り口付近まで来たところで…
ゴツッ… ゴツッ… ゴツッ… ゴツッ… と重々しいブーツの不穏な足音が、アユダルたちに向かって近づいてくる。
「獣―――っ!! 人殺し―――っ!! お前なんて!! お前なんてぇ―――っ!!」
フルタは狂ったように泣きさけび、近くのテーブルにあった、客たちが食べ残していった料理や酒が入ったゴブレットを取り、伯爵に次々と投げつけた。
ベチャッ…! とフルタが投げた牛肉のシチューが騎士服を汚し…
続けてゴブレットが、カンッ…! と金属音を響かせて、セルビシオ伯爵が鞘から抜いた大剣に当たる。
それがセルビシオ伯爵の、怒りの炎に油を注いだ。
「この…っ! 生意気な男娼が! 伯爵の私を傷つけた罪で、お前たちを今すぐ罰してやる―――っ!」
怒りで目を血走らせて、伯爵は唾を飛ばしながら怒鳴った。
プライドを傷つけられたセルビシオ伯爵は、アユダルとフルタに復讐しようと、本気で殺すつもりなのだ。
剣を振り上げたセルビシオ伯爵は、アユダルとフルタに向かって振り下ろす。
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