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第四章 クラウディアを得んと暗躍する者達。
それは間違ったパズル。
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「……ヒドイ。」
クラウディアは月の宮へと戻ってから、ずっとブツブツと独り言を漏らしている。
心の中でモヤモヤしていても、このイライラが治まらないのだ。
ゲーム設定では血も涙もない暴君で血濡れ皇帝だったかもしれないけど。
そのシュヴァリエはもうこの世界には、私という存在が身近になった事で、居なくなったと思ってた。
随分と過保護に大事にされているのは分かっている。
可愛がられているのも。
時々意地悪になるが、それでも圧倒的に愛されてるのは分かる。
いい兄だ。シスコンが過ぎるけど。
シスコンが過ぎるからといって、肉親の叔父との交流まで制限されるって、どう考えてもやり過ぎである。
その事に反抗してやんわりと言い返すと途端に不機嫌度が増すし……
「ディア呼びを許すなんて、俺は許可してない。」ですって。
いつから私の呼び名に対して兄の許可制が出来た……ああ、双子王子には張り合ってたけど。アレは他人だから何となくわからないでもないけど。
叔父に対しては問題ないでしょーって思う訳で。
シュヴァリエだって叔父様には全幅の信頼をおいてるクセに。
いつもの不遜な態度が叔父様の前だと丁寧な態度になってるの知ってるんですからね。酒量とか気にかけて「お酒の量は制限してくれ。」とか、レイランに叔父様付きの従僕に伝えるよう言ってるのも知ってるんですからね!
なのに、私が叔父様と仲良く交流するのは反対って―――――
あ……ヤキモチ?
今まで叔父様と一番仲良しだったのに、姪の私が横入りして来て、取られるって思ってる的な?
名前呼びの許可って、もしかしてシュヴァリエですら叔父様に「シュヴァリエ」「陛下」としか呼ばれてないから、ズルいって感じたとか?
クラウディアの頭の中でパズルのピースがスコンスコンとはまっていく。
それは名探偵が事件解決への糸口を見つけたかのような高揚感。
「そう、そうなのね! やっとわかったわ。意味不明でムカムカしてたけど、そういう事だったのね! 謎は解けた!」
ソレ、間違ったパズルです。
アンナは席を外しているので(アレスの手紙で)、クラウディアの室内には扉前に護衛二人と、三人娘達が居る。
クラウディアの意味不明な言葉を訊いた五人の心はひとつになった。
「姫様ご乱心」と。
暗い雰囲気でソファに座りずっとブツブツ独り言を言っていたかと思えば、突然立ち上がり、やがて何もない空間に向かって腕を振っていれば(本人は決めポーズ)、周囲は戸惑うばかりなのは間違いない。
「お兄様に謝らないといけないわ……。私、そんなつもりじゃないのに。
叔父様を独り占めしようだなんて、お兄様よりも可愛がられようなんて、そんな身の程知らずの事を企んでなどいませんって。」
クラウディアは決めた。
シュヴァリエは忙しい政務中であるが、鉄は熱いうちに打て! である。
この勢いのままに突撃しないと、勇気が萎むかもしれない。
厄介ごとは時間が経過すればするほど扱いづらくなるものだ。
「モニカ! お兄様に先触れを出して貰えるかしら!」
パっと華やかな笑みを浮かべてモニカに頼むクラウディア。
それを受けたモニカは、敬愛する皇女殿下が元気になって内心でとてもホッとした。
クラウディアには暗い顔も怒った顔も似合わない。
今のように幸せいっぱいに微笑んでいて欲しいのである。
それはここにいる五人全員の総意であった。
―――その頃。
「と、いう訳でして。姫様は非常にお怒りになり、陛下もお怒りになられまして。
姫様がさっさと朝食を終え退室する旨を伝えて去った後はどうあったかはわかりませんが。」
と、アンナが締めくくる。
「しばらく椅子に固まっていたように思います。今まで皇女殿下があのように怒られて退席された事は一度もございませんでしたから。」
と、レイランが補足する。
アレスは眉間の皴を揉んだ。
「くだらない……それに尽きる。」とぼそりと呟く。
「ですが、このままでは困るんです! 仕事になりませんよ!」
マルセルが泣きつく。
「陛下には、しばらく一人でさせればいいんじゃないか。
マルセルも書類だけ届けて、決裁済みだけ回収して退室すればいい。
妹と喧嘩したくらいで魔力を制御できないようでは、迷惑だ。
我慢というものを覚えさせなければ。
頭が冷えれば後悔してどうにかするさ。
拗れて長引くようなら、いいお灸にもなるだろう。
あんなに大切にしている妹と逢えなくなるのは一番のお灸だろう?」
ククッと嗤うアレス。
三人は笑えない。
それによって被害を受けるのはこの三人である。
「まぁ……お灸にはならずに終わりそうだ。
姪は本当に優しい子だ。
先に謝るのは勇気がいるからね。」
「それは、皇女殿下が先に仲直りに来てくれそうだって事ですか!?」
マルセルが期待に瞳を輝かせてアレスに問う。
「ああ、ディアは優しい子だからね。
そして、行動力まであるようだ。」
アレスの意図の分からない言葉に、今度は三人ともキョトンとした顔になった。
アンナはアレスの力によって今起こってる出来事を把握しているだろう事を何となく察してはいるが、姫様はあれ程怒っていたのに? と考えている。
「君達が戻る頃には、全て元通りになっているかもね。」
アレスはそう締め括り、場を解散させた。
アレスが管理しているいくつかの場所に、クラウディアの宮の中にはない。
隙のないように組まれた護衛であっても、絶対は無いと思っている。
隙とは作るものである。
凄腕の者が来た時に隙など無くても作られてしまうのだ。
だから、クラウディアの月の宮に続く回廊と建物の周囲は心配だから管理している。
だから、クラウディアが間違ったパズルを組み立てながらシュヴァリエの所へと向かっているとまでは知らないのであった。
クラウディアは月の宮へと戻ってから、ずっとブツブツと独り言を漏らしている。
心の中でモヤモヤしていても、このイライラが治まらないのだ。
ゲーム設定では血も涙もない暴君で血濡れ皇帝だったかもしれないけど。
そのシュヴァリエはもうこの世界には、私という存在が身近になった事で、居なくなったと思ってた。
随分と過保護に大事にされているのは分かっている。
可愛がられているのも。
時々意地悪になるが、それでも圧倒的に愛されてるのは分かる。
いい兄だ。シスコンが過ぎるけど。
シスコンが過ぎるからといって、肉親の叔父との交流まで制限されるって、どう考えてもやり過ぎである。
その事に反抗してやんわりと言い返すと途端に不機嫌度が増すし……
「ディア呼びを許すなんて、俺は許可してない。」ですって。
いつから私の呼び名に対して兄の許可制が出来た……ああ、双子王子には張り合ってたけど。アレは他人だから何となくわからないでもないけど。
叔父に対しては問題ないでしょーって思う訳で。
シュヴァリエだって叔父様には全幅の信頼をおいてるクセに。
いつもの不遜な態度が叔父様の前だと丁寧な態度になってるの知ってるんですからね。酒量とか気にかけて「お酒の量は制限してくれ。」とか、レイランに叔父様付きの従僕に伝えるよう言ってるのも知ってるんですからね!
なのに、私が叔父様と仲良く交流するのは反対って―――――
あ……ヤキモチ?
今まで叔父様と一番仲良しだったのに、姪の私が横入りして来て、取られるって思ってる的な?
名前呼びの許可って、もしかしてシュヴァリエですら叔父様に「シュヴァリエ」「陛下」としか呼ばれてないから、ズルいって感じたとか?
クラウディアの頭の中でパズルのピースがスコンスコンとはまっていく。
それは名探偵が事件解決への糸口を見つけたかのような高揚感。
「そう、そうなのね! やっとわかったわ。意味不明でムカムカしてたけど、そういう事だったのね! 謎は解けた!」
ソレ、間違ったパズルです。
アンナは席を外しているので(アレスの手紙で)、クラウディアの室内には扉前に護衛二人と、三人娘達が居る。
クラウディアの意味不明な言葉を訊いた五人の心はひとつになった。
「姫様ご乱心」と。
暗い雰囲気でソファに座りずっとブツブツ独り言を言っていたかと思えば、突然立ち上がり、やがて何もない空間に向かって腕を振っていれば(本人は決めポーズ)、周囲は戸惑うばかりなのは間違いない。
「お兄様に謝らないといけないわ……。私、そんなつもりじゃないのに。
叔父様を独り占めしようだなんて、お兄様よりも可愛がられようなんて、そんな身の程知らずの事を企んでなどいませんって。」
クラウディアは決めた。
シュヴァリエは忙しい政務中であるが、鉄は熱いうちに打て! である。
この勢いのままに突撃しないと、勇気が萎むかもしれない。
厄介ごとは時間が経過すればするほど扱いづらくなるものだ。
「モニカ! お兄様に先触れを出して貰えるかしら!」
パっと華やかな笑みを浮かべてモニカに頼むクラウディア。
それを受けたモニカは、敬愛する皇女殿下が元気になって内心でとてもホッとした。
クラウディアには暗い顔も怒った顔も似合わない。
今のように幸せいっぱいに微笑んでいて欲しいのである。
それはここにいる五人全員の総意であった。
―――その頃。
「と、いう訳でして。姫様は非常にお怒りになり、陛下もお怒りになられまして。
姫様がさっさと朝食を終え退室する旨を伝えて去った後はどうあったかはわかりませんが。」
と、アンナが締めくくる。
「しばらく椅子に固まっていたように思います。今まで皇女殿下があのように怒られて退席された事は一度もございませんでしたから。」
と、レイランが補足する。
アレスは眉間の皴を揉んだ。
「くだらない……それに尽きる。」とぼそりと呟く。
「ですが、このままでは困るんです! 仕事になりませんよ!」
マルセルが泣きつく。
「陛下には、しばらく一人でさせればいいんじゃないか。
マルセルも書類だけ届けて、決裁済みだけ回収して退室すればいい。
妹と喧嘩したくらいで魔力を制御できないようでは、迷惑だ。
我慢というものを覚えさせなければ。
頭が冷えれば後悔してどうにかするさ。
拗れて長引くようなら、いいお灸にもなるだろう。
あんなに大切にしている妹と逢えなくなるのは一番のお灸だろう?」
ククッと嗤うアレス。
三人は笑えない。
それによって被害を受けるのはこの三人である。
「まぁ……お灸にはならずに終わりそうだ。
姪は本当に優しい子だ。
先に謝るのは勇気がいるからね。」
「それは、皇女殿下が先に仲直りに来てくれそうだって事ですか!?」
マルセルが期待に瞳を輝かせてアレスに問う。
「ああ、ディアは優しい子だからね。
そして、行動力まであるようだ。」
アレスの意図の分からない言葉に、今度は三人ともキョトンとした顔になった。
アンナはアレスの力によって今起こってる出来事を把握しているだろう事を何となく察してはいるが、姫様はあれ程怒っていたのに? と考えている。
「君達が戻る頃には、全て元通りになっているかもね。」
アレスはそう締め括り、場を解散させた。
アレスが管理しているいくつかの場所に、クラウディアの宮の中にはない。
隙のないように組まれた護衛であっても、絶対は無いと思っている。
隙とは作るものである。
凄腕の者が来た時に隙など無くても作られてしまうのだ。
だから、クラウディアの月の宮に続く回廊と建物の周囲は心配だから管理している。
だから、クラウディアが間違ったパズルを組み立てながらシュヴァリエの所へと向かっているとまでは知らないのであった。
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