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カルロッテ・ベンヤミンはこうして作られた。3(番外編)
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カルロッテは侯爵家へ嫁いだ優秀な姉がいる。
姉に相談したいことがあると端的に手紙に書いて送れば、返事はすぐに来た。
翌日には会う事になり、今は侯爵家へと向かう馬車の中にいる。
同行してくれたのはカルロッテ付きの年若いメイドだ。
馬の嘶きが聞こえ、馬車が急停止した。
突然だったのでカルロッテの体が浮かび上がり前の座席へ強かに体をぶつけてしまった。
「どうしたの!?」
怯えるメイドを宥めながら御者席に付けてある小窓を開け尋ねた。
「お嬢様お怪我はありませんか!数台前の馬車が、荷を積んだ馬車に突っ込んで馬が暴れたそうです。
騒ぎが大きくなっており、落ち着くまでもうしばらくお待ち下さい!」
御者の心配気な声に「怪我はないわ。事故があったのね…しばらく動けないわね。」とだけ話して小窓を閉める。
まだ不安げなメイドを宥めながら、ふと馬車の窓から外を見た。
―――事故を見ようと人が集まり、混雑した中にアントンを見かけた。
アントンは誰かを人混みから守るように胸に抱きしめ、横向きに少しずつ移動していた。
胸に抱きしめているのは女性だと思った。
アントンよりも背が低く、安心しきったようにピッタリとくっついてる二人の姿が遠目にも分かる。
相思相愛の二人。
そんな言葉が頭に浮かんだ。
カルロッテは二人が人混みの中に紛れ消えるまで、馬車の窓から見つめ続けた。
姉に会って良かったかもしれない。
久しぶりに見る姉は愛されているのか輝かんばかりに美しかった。
姉にアントンの事を洗いざらい話すと「そんな男やめときなさいな」と言われた。
でも……と渋る私に、
「家格も低く、結婚前から二人も愛人が居る男よ?結婚後増えない保証だってないのだし。
おまけに、貴方には愛人を作るなって酷い話だわ。
そんな男より素敵な男なんて星の数程いるのよ。
貴方は男に言い寄られたばかりだから特別に感じているだけよ。
いい縁談がひとつあるの。
相手は公爵家よ。すごいでしょ?
ただ、婚約者候補を探しているらしいから、何人か選ばれた令嬢の中で勝ち抜ける根性が必要よ。
――――どうする?」
カルロッテはお願いする事にした。
アントンなんていらないわ。
まだ見ぬ令息を想像して甘い溜息が溢れる。
アントンのあんな姿を見てしまって、未だにイライラしているし、婚約式はまだ先の事。
婚約者としての書類もまだ書いていない状態だ。
わざわざ会って話すより手紙でお断りを入れよう。と決心するのたった。
カルロッテは帰宅するとお断りの手紙を書き、父に渡した。
その時に「姉から薦められた公爵家婚約者候補に名乗りを上げたい」と伝える事も忘れない。
二日後、伯爵家へアントンが突撃してきたという。
門前払いを何度しても毎日のように伯爵家へ訪れ、とうとう憲兵に通達するぞと脅す羽目になったそうだ。
二人も愛人が居ながら固執されても迷惑なだけだ。
カルロッテの頭の中は冴え渡り、頭の中は公爵家嫡男という素晴らしい肩書を持つ相手の事ばかりで占められた。
自分ばっかり愛人作りたいなんてワガママいう男なんてお断り!と思ったのだった。
姉に相談したいことがあると端的に手紙に書いて送れば、返事はすぐに来た。
翌日には会う事になり、今は侯爵家へと向かう馬車の中にいる。
同行してくれたのはカルロッテ付きの年若いメイドだ。
馬の嘶きが聞こえ、馬車が急停止した。
突然だったのでカルロッテの体が浮かび上がり前の座席へ強かに体をぶつけてしまった。
「どうしたの!?」
怯えるメイドを宥めながら御者席に付けてある小窓を開け尋ねた。
「お嬢様お怪我はありませんか!数台前の馬車が、荷を積んだ馬車に突っ込んで馬が暴れたそうです。
騒ぎが大きくなっており、落ち着くまでもうしばらくお待ち下さい!」
御者の心配気な声に「怪我はないわ。事故があったのね…しばらく動けないわね。」とだけ話して小窓を閉める。
まだ不安げなメイドを宥めながら、ふと馬車の窓から外を見た。
―――事故を見ようと人が集まり、混雑した中にアントンを見かけた。
アントンは誰かを人混みから守るように胸に抱きしめ、横向きに少しずつ移動していた。
胸に抱きしめているのは女性だと思った。
アントンよりも背が低く、安心しきったようにピッタリとくっついてる二人の姿が遠目にも分かる。
相思相愛の二人。
そんな言葉が頭に浮かんだ。
カルロッテは二人が人混みの中に紛れ消えるまで、馬車の窓から見つめ続けた。
姉に会って良かったかもしれない。
久しぶりに見る姉は愛されているのか輝かんばかりに美しかった。
姉にアントンの事を洗いざらい話すと「そんな男やめときなさいな」と言われた。
でも……と渋る私に、
「家格も低く、結婚前から二人も愛人が居る男よ?結婚後増えない保証だってないのだし。
おまけに、貴方には愛人を作るなって酷い話だわ。
そんな男より素敵な男なんて星の数程いるのよ。
貴方は男に言い寄られたばかりだから特別に感じているだけよ。
いい縁談がひとつあるの。
相手は公爵家よ。すごいでしょ?
ただ、婚約者候補を探しているらしいから、何人か選ばれた令嬢の中で勝ち抜ける根性が必要よ。
――――どうする?」
カルロッテはお願いする事にした。
アントンなんていらないわ。
まだ見ぬ令息を想像して甘い溜息が溢れる。
アントンのあんな姿を見てしまって、未だにイライラしているし、婚約式はまだ先の事。
婚約者としての書類もまだ書いていない状態だ。
わざわざ会って話すより手紙でお断りを入れよう。と決心するのたった。
カルロッテは帰宅するとお断りの手紙を書き、父に渡した。
その時に「姉から薦められた公爵家婚約者候補に名乗りを上げたい」と伝える事も忘れない。
二日後、伯爵家へアントンが突撃してきたという。
門前払いを何度しても毎日のように伯爵家へ訪れ、とうとう憲兵に通達するぞと脅す羽目になったそうだ。
二人も愛人が居ながら固執されても迷惑なだけだ。
カルロッテの頭の中は冴え渡り、頭の中は公爵家嫡男という素晴らしい肩書を持つ相手の事ばかりで占められた。
自分ばっかり愛人作りたいなんてワガママいう男なんてお断り!と思ったのだった。
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