クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません？

番外編

クラス内魔法大会4

　実況のせいで観客が盛り上がってしまい、みんな期待の目でこちらを見ている。

　どうしようかな……。

　もうっ！　そんなこというならアリーシアさんが何か案だせー！　なんて心の中で思っているがそんなことできるわけない。

　あれ？　そういえばアリーシアさんって……。

　その時ふと、アリーシアさんが主人公の小説に戦いのシーンが書かれていたのを思い出した。
　
　そのシーンは4人の敵に対し同心円状に広がるよう魔法を発動し、壁に激突させて気を失わせたというシーンである。
　敵に囲まれていたが、そんなの関係なく水で押し流し見事勝利した。

　よし、ちょっと真似してみよう。

　1度合わせていた剣をはじき、大きく距離をとった。
　そして魔法で水の波を作り出し攻撃する。

　だがそれも当然のように剣で切り裂き、波は真っ二つになった。

「もー！　チートすぎ！」
「それはあいも同じことじゃん」



　くっそー、こうなったら！

　あいは魔法で巨大な岩を作り、それを恵太に向けて投げつけた。
　ちなみに普通の人間がこの岩を持ったら当たり前のように潰れるだろう。
　それを軽々と投げつけたのである。
　いや、普通に怖くね？

「おーっとあい選手岩を投げたー！　しかーし、それも粉々にされて終わりではないのでしょうか？」

　アリーシアさん、甘いよ。
　ショートケーキにチョコとメープルシロップをかけて食べるくらい甘い。
　私がそんな単純で誰でもわかることを考えるわけないじゃん。

　まっすぐ向かっていった岩を恵太は切ろうとした。

　巨大な岩なんて普通は切れないが、チート能力を持っている恵太なら確実に切れるはずである。
　これまでの試合を見ていた観客や実況など、あい以外の全員がそう思っていた。

　しかし岩は切れなかった。

　そして切れなかった岩は容赦なく恵太を枠外へと追いやる。
　恵太も岩を何とか押し返そうとしていて、枠ギリギリで耐えていた。
　壊れない岩は恵太の力に負け始め、だんだんと押し返されている。

　だが、全てはあいのシナリオ通りだった。

　もう少しで押し返せると言う時、突如として恵太の目の前にあった岩が無くなった。
　そして押し返すために力を入れていた恵太はバランスを崩し、前に倒れる。
　あいはその隙を見逃さずテレポートで恵太の間合いに入り、魔法で吹き飛ばした。
　体勢が整っていなかった恵太は為す術なく枠外へと吹き飛ばされる。




「勝者、あい選手！」

　その実況の言葉と共に大きな歓声があがった。

　

　恵太が岩を切れなかった理由、それはあいが岩に結界を張っていたからだ。
　自身に張っている結界と全く同じ物を岩にもつけていたのである。
　それはどんなに強い攻撃を受けても壊れないものだ。



　こうして無事、あいはクラス内魔法大会個人戦で優勝を取ることができた。










　ちなみに吹き飛ばされた恵太はというと、カルテット王国とルージュ王国の間にあるルーナ達の村まで飛ばされていた。

「うわぁっ、お兄ちゃんどうしたの？」

　たまたまそこにいたルーナに、

「あいに飛ばされた」

　と答える。




「えっ……」

　


　それからしばらく村であいの変な噂が流れていたことを本人は知らない。