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金の王子と銀の王子 平凡受 執着
しおりを挟む銀の王子と金の王子
俺とあいつは腹違いの王子だ。別段そこまでは問題はない。
しかし何かの悪戯か、俺とあいつが同じ時、同じ時刻に同じ父親を持ちながら、違う腹から生まれて来たのが問題だった。
当時、後々跡目争いの可能性が出てくるとかで、どちらかを殺そうという案が出された。
しかし、どちらの妃も自分の子を殺すことを良しとせず、ならば将来どちらか優秀な方を王に据えて、もう一人は殺してしまおうという結論に至った。
正直、その当事者である俺にとっては迷惑な事だ。
殺すなら早いうちから殺せば良かったんだ。そうすれば、苦しい思いなんてしなかった。
あいつは憂愁の美とまで詩人が謳われるほどの美しい容貌を持ち、特に目を曳くのはその銀色の髪と瑠璃色の瞳。
そして俺は輝かんばかりの金色の髪に、紫紺の瞳を持っていたが、顔全体の彫りが浅くどちらかといえば平凡な作りをしていた。
俺達の母親は二人ともが"正室"なために今までややこしい話になってきたが、ここ最近は王を継ぐのはあいつだと誰もが囁いていた。
美しい容貌と、優秀な頭脳を持つあいつは正に王としての器に相応しいとの事だった。民衆もあいつを時期王として迎え入れていた。
ようは俺が、あいつが王に就任した暁には殺される王子に決定したも同然だった。
俺を産んでくれた母親もなにかに秀でたわけでもない息子に失望し、あいつを認めてしまった。
「やぁ、ミカエル。今日も素敵な陽気だね。これからお茶でもしようじゃないか」
「こんにちは、ガブリエル。誘って貰えて嬉しいけど遠慮しておくよ。今日はリエルと約束があってね」
「……ふぅん、リエルとね。じゃあ僕も一緒してもいいかな?」
リエルとは俺の乳母兄弟だ。誰よりも長くいたためか、気の休める相手だ。俺の前ではリエルは王子だからと表面だけではなく、ちゃんと付き合ってくれる。
しかし、ガブリエルがついてくるとなるとリエルは緊張して途端に無口になってしまう。
「いや……」
「何、何か、駄目な理由でもあるのか?もしかして謀反でも企んでいるとか?」
「違っ……ただ、リエルはガブリエルが来ると萎縮してしまうんだ。何と言っても時期国王が目の前にいるんだからな」
「別に萎縮するんなら勝手にさせてればいいじゃないか。それを言うんだったらミカエルだって、時期国王候補でしょう?」
「それは、もうガブリエルに決まっているだろう。皆そう言っている」
「まさか、分からないよ?まだ王は何も言ってないからね」
あいつ、ガブリエルは俺の前まで来てすっと頬に手をあてて撫でた。
その仕草に嫌悪が生まれ、顔を思わず反らした。
その動作にくすりとガブリエルは笑うと今度は身体を抱きしめてきた。
身をよじろうとしても腕の力は強まるばかりだった。
「何で、ミカエルは僕の望み通りにならないんだろうな」
「はな……」
「ずっと何処かに閉じ込めて、目も脚も潰してしまって、誰も見せずにしまっておけば、僕に泣き付いてくれる?」
「ガブリエル……」
「僕はね、ミカエル以外どうでもいいんだよ。だって、僕等は生まれるべくして同じ日、同じ時に出会ったんだ。同じ境遇、同じ運命。…………君は僕で、僕は君なんだよ」
「違う!俺とお前は全然違う!何もかも違う事ばかりだ。顔も、頭の出来も、回りの反応も、運命も!!」
「違わないよ。だって、僕がミカエルを離さない。ミカエルを奪う何者も僕が殺して、僕はミカエルと共にいてみせる」
壁を背に、身体を少し離してガブリエルは俺を見つめてくる。
脚の間に、ガブリエルの脚が割り込んできて妖しく絡めてくる。
「ちょ、止めろガブリエル」
「止めないよ、ミカエルのすべては僕のものだ。誰にも渡さない……」
「やめ、ん……んぅ、」
いきなり口づけて来るガブリエルに、俺は抵抗も虚しく貪りつくように深く舌を絡め取られた。
望まないキスに気を取られていると、ぐっと脚と脚の間を刺激され、うめき声が漏れる。
「あ、ガブ……ぇル」
「ねぇミカエル、僕にミカエルをちょうだい。そうしたら、ミカエルを殺さずにすむから」
息が続かなくてくたりとなった俺を嬉しそうに抱きしめて、ガブリエルは耳元で囁いた。
それに俺はこくりと無意識に頷いていた。
―――――それが、俺の牢獄のような生活の始まりだった。
END
20080418
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