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番外編 父と母の攻防戦 その5
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今回は、海外出張のチームリーダーだったこともあり、2週間忙しかった。
家族の声を聞きたかったけど、そんな時間も取れなかった。
晶さんがみんなの様子をメールで送ってくれてたから、大丈夫だろうと思っていた。
まさか、こんなことになっていたとは・・・。
晶さんが作ってくれた夕飯は、いつも通り美味しかったけど、茉鈴が大人びて見えて、少し寂しくなった。
「航平から、茉鈴のことは晶さんから聞いてと言われたんだけど。」
子どもたちが、自分の部屋に行ったのを見計らって尋ねた。
「ああ、実はね。眉毛でちょっといろいろあってね・・・。」
晶さんにしては、珍しく言いにくそうに説明を始めた。
茉鈴がどうして激変したのかー。
茉鈴が眉毛をカットしていた時に航平がぶつかったこと、けがはなかったけど、茉鈴が眉毛が伸びるまで学校を休むと言って困ったこと、担任の先生に事情を説明して、病欠にしてもらったこと、不登校にならないように、晶さんが茉鈴と向き合ったことー。
「そんなことが。」
茉鈴が目をケガしなくて本当に良かった。航平は、昔から物や人によくぶつかる。きつく叱る必要があるな。
「航平も、ものすごく後悔して、ずいぶん茉鈴につくしたの。最近は、注意して歩くようになったから、物にもぶつからなくなったの。だから、できればあまり掘り返さないで欲しいのよ。」
晶さんが、僕の厳しい表情を見て、航平をかばった。
「どうして、教えてくれなかったの?」
いつもより口調が、厳しくなっている自分に気がつく。
僕は、君にとってそんなに頼りないのかな。
「渉さんが仕事が手につかなくなって、出張が伸びたら、心配だし・・・寂しいもの。」
晶さんが、うつむいてそう言った。甘える晶さんは、珍しい。
か、かわいい。
「晶さん・・・。1人で抱えさせてごめんね。
僕が、出張の間、仕事に集中できたのは、晶さんのおかげだよ。
航平には、1回話して注意するだけにしておくよ。罰はもう受けたみたいだから。」
晶さんが1人で2週間も家族の為に頑張ってくれたのだ。家にいなかった僕が、蒸し返すのは辞めよう。
「よかった。」
晶さんは、ほっとした顔をしてくれた。僕も晶さんのそんな表情が見れて、ほっとした。
だけど、このまま茉鈴に変な虫が付くのは放っておけない。
そうだ、転職しよう。
できるだけ家にいられる仕事がいい。早速、探そう!
晶さんに僕の転職を納得してもらうためには、それなりの成果が見込める仕事を見つけなければ。
渉は晶に気づかれないように、書斎でネット検索して情報を集め始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
渉さんが、納得してくれたようでよかった。
でも、あの悩んでいる表情からして何か、次の策を練っているのだろう。
まだまだ気は抜けない。
晶は、渉が日記を書き加えるのを待った。
2日後ー
ああ、日記の内容が追加されている。
こまめに記録してくれるところは、相手の動きが分かりこちらとしては助かるわ。
【20△8年6月4日
茉鈴が、晶さんの手で可愛さを取り戻した。
もう眩しすぎるほど、うちの娘は可愛い。
茉鈴の良さを120%引き出した晶さんは、すごい。
娘のことをよく分かっているのだなあ。
茉鈴も、とても嬉しそう。
僕も家族を守るために、全力を尽くそう。
茉鈴を虫から守るために
①仕事を早くおわらせて帰る
②転職を考える(自宅でできる仕事)】
①は、ぜひ実行してもらいたい。仕事に夢中になると、渉さんは、ご飯も睡眠も削るタイプなので、これはいい決意だ。思わぬ収穫だ。
②は、困るなあ。
家で、できる仕事・・・。
渉さんは、優秀だ。家でだって仕事は、できるだろう。
これは、まずい。
急いで次の手を打たなければ!
家族の声を聞きたかったけど、そんな時間も取れなかった。
晶さんがみんなの様子をメールで送ってくれてたから、大丈夫だろうと思っていた。
まさか、こんなことになっていたとは・・・。
晶さんが作ってくれた夕飯は、いつも通り美味しかったけど、茉鈴が大人びて見えて、少し寂しくなった。
「航平から、茉鈴のことは晶さんから聞いてと言われたんだけど。」
子どもたちが、自分の部屋に行ったのを見計らって尋ねた。
「ああ、実はね。眉毛でちょっといろいろあってね・・・。」
晶さんにしては、珍しく言いにくそうに説明を始めた。
茉鈴がどうして激変したのかー。
茉鈴が眉毛をカットしていた時に航平がぶつかったこと、けがはなかったけど、茉鈴が眉毛が伸びるまで学校を休むと言って困ったこと、担任の先生に事情を説明して、病欠にしてもらったこと、不登校にならないように、晶さんが茉鈴と向き合ったことー。
「そんなことが。」
茉鈴が目をケガしなくて本当に良かった。航平は、昔から物や人によくぶつかる。きつく叱る必要があるな。
「航平も、ものすごく後悔して、ずいぶん茉鈴につくしたの。最近は、注意して歩くようになったから、物にもぶつからなくなったの。だから、できればあまり掘り返さないで欲しいのよ。」
晶さんが、僕の厳しい表情を見て、航平をかばった。
「どうして、教えてくれなかったの?」
いつもより口調が、厳しくなっている自分に気がつく。
僕は、君にとってそんなに頼りないのかな。
「渉さんが仕事が手につかなくなって、出張が伸びたら、心配だし・・・寂しいもの。」
晶さんが、うつむいてそう言った。甘える晶さんは、珍しい。
か、かわいい。
「晶さん・・・。1人で抱えさせてごめんね。
僕が、出張の間、仕事に集中できたのは、晶さんのおかげだよ。
航平には、1回話して注意するだけにしておくよ。罰はもう受けたみたいだから。」
晶さんが1人で2週間も家族の為に頑張ってくれたのだ。家にいなかった僕が、蒸し返すのは辞めよう。
「よかった。」
晶さんは、ほっとした顔をしてくれた。僕も晶さんのそんな表情が見れて、ほっとした。
だけど、このまま茉鈴に変な虫が付くのは放っておけない。
そうだ、転職しよう。
できるだけ家にいられる仕事がいい。早速、探そう!
晶さんに僕の転職を納得してもらうためには、それなりの成果が見込める仕事を見つけなければ。
渉は晶に気づかれないように、書斎でネット検索して情報を集め始めた。
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渉さんが、納得してくれたようでよかった。
でも、あの悩んでいる表情からして何か、次の策を練っているのだろう。
まだまだ気は抜けない。
晶は、渉が日記を書き加えるのを待った。
2日後ー
ああ、日記の内容が追加されている。
こまめに記録してくれるところは、相手の動きが分かりこちらとしては助かるわ。
【20△8年6月4日
茉鈴が、晶さんの手で可愛さを取り戻した。
もう眩しすぎるほど、うちの娘は可愛い。
茉鈴の良さを120%引き出した晶さんは、すごい。
娘のことをよく分かっているのだなあ。
茉鈴も、とても嬉しそう。
僕も家族を守るために、全力を尽くそう。
茉鈴を虫から守るために
①仕事を早くおわらせて帰る
②転職を考える(自宅でできる仕事)】
①は、ぜひ実行してもらいたい。仕事に夢中になると、渉さんは、ご飯も睡眠も削るタイプなので、これはいい決意だ。思わぬ収穫だ。
②は、困るなあ。
家で、できる仕事・・・。
渉さんは、優秀だ。家でだって仕事は、できるだろう。
これは、まずい。
急いで次の手を打たなければ!
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