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番外編 父と母の攻防戦 その3
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ー年に1度、渉は、長期出張に行く。そのチャンスを逃す手はないわね。
晶は、計画の狙いを定めた。
少しずつ外堀を埋めよう。
手始めに、茉鈴に「高校生になったから、眉を整えた方がいいわ。」
と言って、電動の眉毛カットを買ってあげて、使い方を教えた。
「下の方を剃るときは、手が滑って目を傷つけたら大変だから、刃を上にむけてこうやって剃るのよ。」
「お母さん、上手~。」
茉鈴は、前から興味があったようで、乗り気だ。
「晶さん、茉鈴にはまだ少し早いんじゃ。」
渉が、茉鈴が変わるのを止めようとしてきた。
ー今までだったら、そのうるうるした表情で、譲ってきたけど、今回はそうはいかないわ。
「渉さん、娘の化粧を教えるのが、私の夢だったの。眉毛だけにするから、お願い。」
晶は顔の前で、手を合わせて、上目遣いで渉に頼んだ。
晶は、基本的に、渉に甘えたりしない。だから、こうやってお願いするのが1番効果があるのだ。
「眉毛、だけだよ。」
ーほら、許してくれた。
「ありがとう。」
晶は、愛情たっぷりの笑顔を渉に向けた。渉は、照れて頭をぽりぽりかいている。
「もう、こんなところで2人とものろけないでよ!」
ー茉鈴、ナイスツッコミよ。おかげで先に進めるわ。
晶は、心の中で、茉鈴を褒めた。
「ごめん、ごめん。じゃあ、続きをやるわよ。」
計画通り、眉毛処理の失敗で学校を休ませるのはいいけど、目を傷つけたら大変なので、定期的に茉鈴の眉毛カットの腕を磨くのに時間を割いた。
次に、航平がどれくらい距離感がないかも調べておいた。
「いてっ」
水の容器に、ぶつかった。
ーいつもより10㎝ずらすと、もうぶつかるのね。大丈夫かしらこの子・・・。
「母さん、これ邪魔だよー。元に戻しとくよー。」
そう言うと、航平は電話台を元の位置に戻してくれた。
「ごめん。ごめん。掃除の時に動かしたの忘れてた。元に戻してくれたの?ありがとね。」
ーほほう。15㎝ずらしたのには、気がつくのね。まるっきり距離感が無いわけじゃなくて、お母さん、ちょっとほっとしたわ。
「いってえ。」
体重計に小指をぶつけたようだ。涙目になっている。
ー5㎝でもぶつかるのね。そろそろ学習能力を身に着けようか。航平君。
試行錯誤の末、本番は、脱衣所の棚を10㎝動かすことに決めた。当日には、よっこに手伝ってもらおう。
渉さんの食べ物攻撃から茉鈴を守るためにも、ほんの少ーしだけ策を講じた。
渉さんが、高カロリーチョコケーキを1ホール(8号 10~12人分)買ってきた時は、
「忘れてた。明日、9時に悟志とよっこが、来るの。お菓子買いに行く時間がないわ。どうしよう。」
「僕が、ちょうど買ってきたのが、あるから、それを出すといいよ。」
「はい。これ。」
「うわあ、美味しそう。ありがとう。渉さん、助かったわあ。」
「どういたしまして。」
実はそんな約束はしてなかった。
【緊急!明日9時に、うちに旦那さんと一緒に来て!】
と、よっこにメールを送ったら、翌日2人が来てくれたのだ。持つべきものは、親友とおまけの幼馴染だ。
「どうしたんだよ。何かあったのか。」
悟志が、小声で心配そうに聞いてきた。渉さんに気づかれないように聞いてくる辺りは、幼馴染のスキルと言える。
「チョコレートケーキを渉さんが買ってきてくれたの。食べきれないから、緊急メールを送ってみた。」
「お前ってそういう奴だよな。・・・。」
悟志は晶の答えを聞いて脱力した。
「まあね。」
晶は、さらりと答えた。
ー結構緊急事態なのよ。こんなの茉鈴が思う存分食べたら、胃がますます大きくなって、渉さんの「茉鈴ぽっちゃ り計画」に、拍車がかかるもの。来てくれて助かったわあ。
「やったあ。ここのケーキ予約で、1か月待ちなのよー。食べてみたかったの。呼んでくれてありがとう。」
洋子は、お菓子作りが趣味なだけあって、洋菓子店に詳しい。美味しいお菓子を前にして、いつもよりテンションが高めになっている。
ーそうか1か月待ちなのかこのケーキ。・・・。渉さん、本当にもっと茉鈴を太らせようとしていたのね。私も、もっと本気で取り組まないといけないわね!
その後、大人4人でケーキを美味しく食べた。
よっこが、あんまり感動するものだからと、普通にかわいいサイズを2人分、茉鈴と航平に取り分けて、渉さんがお土産に渡していた。
茉鈴と航平は、部活から帰って,かわいいサイズのケーキを食べて「すごく美味しい」と喜んでいた。
「渉さん、予約して買ってきてくれたのね。ありがとう。よっこのあの喜びよう、久しぶりに見たわ。」
ここは謝らずに感謝しよう。
「皆に好評で僕も、予約して買いに行った甲斐があったよ。」
渉さんは、友人にも家族にも好評で嬉しそうだ。根は、本当に優しい人なのだ。
ただ、娘love過ぎるところがあるだけで・・・。
おっと。気を緩めてはいけない。本番はまだまだ先なのだから。
晶は、計画の狙いを定めた。
少しずつ外堀を埋めよう。
手始めに、茉鈴に「高校生になったから、眉を整えた方がいいわ。」
と言って、電動の眉毛カットを買ってあげて、使い方を教えた。
「下の方を剃るときは、手が滑って目を傷つけたら大変だから、刃を上にむけてこうやって剃るのよ。」
「お母さん、上手~。」
茉鈴は、前から興味があったようで、乗り気だ。
「晶さん、茉鈴にはまだ少し早いんじゃ。」
渉が、茉鈴が変わるのを止めようとしてきた。
ー今までだったら、そのうるうるした表情で、譲ってきたけど、今回はそうはいかないわ。
「渉さん、娘の化粧を教えるのが、私の夢だったの。眉毛だけにするから、お願い。」
晶は顔の前で、手を合わせて、上目遣いで渉に頼んだ。
晶は、基本的に、渉に甘えたりしない。だから、こうやってお願いするのが1番効果があるのだ。
「眉毛、だけだよ。」
ーほら、許してくれた。
「ありがとう。」
晶は、愛情たっぷりの笑顔を渉に向けた。渉は、照れて頭をぽりぽりかいている。
「もう、こんなところで2人とものろけないでよ!」
ー茉鈴、ナイスツッコミよ。おかげで先に進めるわ。
晶は、心の中で、茉鈴を褒めた。
「ごめん、ごめん。じゃあ、続きをやるわよ。」
計画通り、眉毛処理の失敗で学校を休ませるのはいいけど、目を傷つけたら大変なので、定期的に茉鈴の眉毛カットの腕を磨くのに時間を割いた。
次に、航平がどれくらい距離感がないかも調べておいた。
「いてっ」
水の容器に、ぶつかった。
ーいつもより10㎝ずらすと、もうぶつかるのね。大丈夫かしらこの子・・・。
「母さん、これ邪魔だよー。元に戻しとくよー。」
そう言うと、航平は電話台を元の位置に戻してくれた。
「ごめん。ごめん。掃除の時に動かしたの忘れてた。元に戻してくれたの?ありがとね。」
ーほほう。15㎝ずらしたのには、気がつくのね。まるっきり距離感が無いわけじゃなくて、お母さん、ちょっとほっとしたわ。
「いってえ。」
体重計に小指をぶつけたようだ。涙目になっている。
ー5㎝でもぶつかるのね。そろそろ学習能力を身に着けようか。航平君。
試行錯誤の末、本番は、脱衣所の棚を10㎝動かすことに決めた。当日には、よっこに手伝ってもらおう。
渉さんの食べ物攻撃から茉鈴を守るためにも、ほんの少ーしだけ策を講じた。
渉さんが、高カロリーチョコケーキを1ホール(8号 10~12人分)買ってきた時は、
「忘れてた。明日、9時に悟志とよっこが、来るの。お菓子買いに行く時間がないわ。どうしよう。」
「僕が、ちょうど買ってきたのが、あるから、それを出すといいよ。」
「はい。これ。」
「うわあ、美味しそう。ありがとう。渉さん、助かったわあ。」
「どういたしまして。」
実はそんな約束はしてなかった。
【緊急!明日9時に、うちに旦那さんと一緒に来て!】
と、よっこにメールを送ったら、翌日2人が来てくれたのだ。持つべきものは、親友とおまけの幼馴染だ。
「どうしたんだよ。何かあったのか。」
悟志が、小声で心配そうに聞いてきた。渉さんに気づかれないように聞いてくる辺りは、幼馴染のスキルと言える。
「チョコレートケーキを渉さんが買ってきてくれたの。食べきれないから、緊急メールを送ってみた。」
「お前ってそういう奴だよな。・・・。」
悟志は晶の答えを聞いて脱力した。
「まあね。」
晶は、さらりと答えた。
ー結構緊急事態なのよ。こんなの茉鈴が思う存分食べたら、胃がますます大きくなって、渉さんの「茉鈴ぽっちゃ り計画」に、拍車がかかるもの。来てくれて助かったわあ。
「やったあ。ここのケーキ予約で、1か月待ちなのよー。食べてみたかったの。呼んでくれてありがとう。」
洋子は、お菓子作りが趣味なだけあって、洋菓子店に詳しい。美味しいお菓子を前にして、いつもよりテンションが高めになっている。
ーそうか1か月待ちなのかこのケーキ。・・・。渉さん、本当にもっと茉鈴を太らせようとしていたのね。私も、もっと本気で取り組まないといけないわね!
その後、大人4人でケーキを美味しく食べた。
よっこが、あんまり感動するものだからと、普通にかわいいサイズを2人分、茉鈴と航平に取り分けて、渉さんがお土産に渡していた。
茉鈴と航平は、部活から帰って,かわいいサイズのケーキを食べて「すごく美味しい」と喜んでいた。
「渉さん、予約して買ってきてくれたのね。ありがとう。よっこのあの喜びよう、久しぶりに見たわ。」
ここは謝らずに感謝しよう。
「皆に好評で僕も、予約して買いに行った甲斐があったよ。」
渉さんは、友人にも家族にも好評で嬉しそうだ。根は、本当に優しい人なのだ。
ただ、娘love過ぎるところがあるだけで・・・。
おっと。気を緩めてはいけない。本番はまだまだ先なのだから。
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