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ミーティング④~匠side~
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ピーピーピーピー
楽カツの駐車場は満車に近かった。建物から遠い場所が空いていたので、バックで駐車した。
数台分離れた所から、子ども連れの夫婦が楽しそうに楽カツのお店に歩いて行くのが見える。
小学校の低学年くらいの男の子が嬉しそうにスキップしている。よほど楽しみしているのだろう。
ー僕たちも今日は楽しい時間になる予定だったんだけどな。
「楓ちゃん、そんなに反省するほど悪いことしたの?」
「・・・。ごめんなさい。・・・。」
楓ちゃんはうつむいて小さい声で謝った。
「浮気でもした?」
かなり意地悪な質問をぶつける。楓ちゃんが浮気するような性格じゃないことは分かっている。けれど、「本だって僕を忘れるのなら浮気だ」という意味を込めての、本当に大人気ない質問だ。
「え・・・そんなことしないよ。」
楓ちゃんは、バッと顔をあげて僕の目を見て答えた。「浮気」という言葉にショックを受けた表情だ。目からは涙がとめどなく流れている。
「じゃあ、どうして?謝ってばかりいるの?」
「・・・。えっと、最初は仮婚約の儀の課題を合格する為に、調べものをするために図書館に行ったの。だけど、時間があると思ったらいつものように本を読んでしまって。・・・。気が付いたら、約束に間に合わない時間になってしまって。」
「本の約束を破ったから、僕に悪いなと思って落ち込んで、約束をキャンセルしようと思ったということ?」
「ううん。破ろうと思ってなかったの。その・・・あの・・・。」
楓ちゃんは、きまずそうに口をつぐんだ。
「今思ってることを全部言ってみて。」
「ごめん、・・・なさい。匠さんとの約束を思い出さなかったの。頭の中から抜け落ちてて。約束を思い出さなかったことに気づいたら、もう何だかどうしていいのか分かんなくて。」
ーなんとも言えない気分だ。結婚の許可をもらうために図書館に調べものに行ったところは、僕たちのためだ。
でも、本を目の前にしたら僕との約束は、思い出しもしなかったのか・・・。
「調べものをした証拠、見せてもらってもいい?」
「うん。」
ガサゴソ・・・パラパラ
「このページに書いてあります。」
「うん。」
カチッ
車内用のライトをオンにして僕はノートの文字を読んだ。
・夕飯のご飯は、下ごしらえを週2回まとめてする
・洗濯も汚れがひどくなければ、週2回
・掃除機は仕事から帰ってすぐにかける
・アイロンはコンセントを切り忘れたら怖いから夜にかける
・朝食は、7時 。ごみ捨てもあるので、てきぱき動く。
・買い物は、休日にする。
・お父さんとお母さんが普段してくれていることをよく見て覚える。
できれば、手伝ってやり方を覚える。
・朝5時起き 就寝23時 or 就寝22時
< 質問&相談すること>
・乾燥機付き洗濯機について
・冷蔵庫のサイズについて
・就寝時間について
と最後に大きめの字で「匠さんと相談してから決める」書いてあった。
「ーーーーーーーーーーー。」
「・・・・・。浮気なんて本当にしてないよ。匠さん、ほんとに私・・・。」
楓ちゃんをぎゅっと抱きしめた。
「た、匠さん。」
「うん。分かった。もういいよ。」
「よかった。信じてもらえて。」
楓ちゃんも僕の背中にゆっくりと手を回し、僕の胸の中に顔をうずめてぎゅっとしてきた。
「何回も2人で話し合って決めたことなのに・・・約束を思い出せなくて本当にごめんなさい。」
顔は見えないけれど、楓ちゃんの目からはまた涙があふれているのを感じた。
「いいんだ。本を1番にしてて、僕を忘れたわけじゃないって分かったから。」
楽カツの駐車場は満車に近かった。建物から遠い場所が空いていたので、バックで駐車した。
数台分離れた所から、子ども連れの夫婦が楽しそうに楽カツのお店に歩いて行くのが見える。
小学校の低学年くらいの男の子が嬉しそうにスキップしている。よほど楽しみしているのだろう。
ー僕たちも今日は楽しい時間になる予定だったんだけどな。
「楓ちゃん、そんなに反省するほど悪いことしたの?」
「・・・。ごめんなさい。・・・。」
楓ちゃんはうつむいて小さい声で謝った。
「浮気でもした?」
かなり意地悪な質問をぶつける。楓ちゃんが浮気するような性格じゃないことは分かっている。けれど、「本だって僕を忘れるのなら浮気だ」という意味を込めての、本当に大人気ない質問だ。
「え・・・そんなことしないよ。」
楓ちゃんは、バッと顔をあげて僕の目を見て答えた。「浮気」という言葉にショックを受けた表情だ。目からは涙がとめどなく流れている。
「じゃあ、どうして?謝ってばかりいるの?」
「・・・。えっと、最初は仮婚約の儀の課題を合格する為に、調べものをするために図書館に行ったの。だけど、時間があると思ったらいつものように本を読んでしまって。・・・。気が付いたら、約束に間に合わない時間になってしまって。」
「本の約束を破ったから、僕に悪いなと思って落ち込んで、約束をキャンセルしようと思ったということ?」
「ううん。破ろうと思ってなかったの。その・・・あの・・・。」
楓ちゃんは、きまずそうに口をつぐんだ。
「今思ってることを全部言ってみて。」
「ごめん、・・・なさい。匠さんとの約束を思い出さなかったの。頭の中から抜け落ちてて。約束を思い出さなかったことに気づいたら、もう何だかどうしていいのか分かんなくて。」
ーなんとも言えない気分だ。結婚の許可をもらうために図書館に調べものに行ったところは、僕たちのためだ。
でも、本を目の前にしたら僕との約束は、思い出しもしなかったのか・・・。
「調べものをした証拠、見せてもらってもいい?」
「うん。」
ガサゴソ・・・パラパラ
「このページに書いてあります。」
「うん。」
カチッ
車内用のライトをオンにして僕はノートの文字を読んだ。
・夕飯のご飯は、下ごしらえを週2回まとめてする
・洗濯も汚れがひどくなければ、週2回
・掃除機は仕事から帰ってすぐにかける
・アイロンはコンセントを切り忘れたら怖いから夜にかける
・朝食は、7時 。ごみ捨てもあるので、てきぱき動く。
・買い物は、休日にする。
・お父さんとお母さんが普段してくれていることをよく見て覚える。
できれば、手伝ってやり方を覚える。
・朝5時起き 就寝23時 or 就寝22時
< 質問&相談すること>
・乾燥機付き洗濯機について
・冷蔵庫のサイズについて
・就寝時間について
と最後に大きめの字で「匠さんと相談してから決める」書いてあった。
「ーーーーーーーーーーー。」
「・・・・・。浮気なんて本当にしてないよ。匠さん、ほんとに私・・・。」
楓ちゃんをぎゅっと抱きしめた。
「た、匠さん。」
「うん。分かった。もういいよ。」
「よかった。信じてもらえて。」
楓ちゃんも僕の背中にゆっくりと手を回し、僕の胸の中に顔をうずめてぎゅっとしてきた。
「何回も2人で話し合って決めたことなのに・・・約束を思い出せなくて本当にごめんなさい。」
顔は見えないけれど、楓ちゃんの目からはまた涙があふれているのを感じた。
「いいんだ。本を1番にしてて、僕を忘れたわけじゃないって分かったから。」
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