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いまさらですが火竜の君は絶倫でした。~オーディアル城滞在記~10.
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もう一度横たえられた寝台の、敷布の感触がやけに生々しく感じる。
裸のままだから当然だけれど、今の私の脳内はいわゆる男性でいうところの「賢者タイム」。わけもわからず行為に溺れることができない状態だから、視覚、触覚、冴えに冴えている。
---誰がいつ替えたのか考えたくないさらっさらの敷布を背中に感じつつ、シグルド様を見上げた。
否、見上げなくても、視線をずらさずとも近い。近すぎて顔が見えない。さっきからなぜだか大興奮のシグルド様がめったやたらにくちづけをの豪雨を降らせているのだ。
「リヴェア、ああリヴェア、リヴェア、リヴェア」
「あの、ちょ、シグルド、さま、どして、」
「リヴェア、リヴェア、リヴェア」
「シグルド様っ……!」
……以下略。
何かのネジが飛んだらしいシグルド様は私の手を掴んで左右に肘をつき、その美貌を恍惚とさせて私の名を呼び続け、くちづけに没頭している。
嵐が過ぎるのを待とう、と思ったのだけれど、そこは情けない私のからだ。
こちらの世界に来てからというもの、従軍の時以外には一人寝など数えるほどしかない、つまりそのくらい婚約者たちとくっついて眠り、当然眠るだけではなく触れられ抱かれ開発され尽くしたからだは、壊れたシグルド様のくちづけだけではなく、裸の肌が触れ合っているだけでもじんわりと反応し始めている。
シグルド様のものもとっくに質量熱量ともに漲っていて、体重がかからないようにして下さっているとはいえ、私のからだに密着して存在を主張している。
私がそうっと気づかれない程度にささやかに腰を揺らしたのを知ってか知らずか、シグルド様はようやく顔を放して、べたべたになっているだろう私の顔を覗き見た。
「リヴェア。……俺はあなたを愛している」
飾り気のない、けれど真っ直ぐな言葉。シグルド様らしい言い方。
「何番目でもいい。妻の共有、に便乗でもいい。俺はあなたを愛している。俺‘が’あなたを愛している。だからあなたにとって俺のことは何番目でもいっこうにかまわない。ずっとそう思っていた。今もそうだ」
舌を伸ばして私の唇をゆっくりと舐めた。
思わず目を閉じてそれを受ける。
あんなに興奮していたのに、実際、今もなお私のからだにあたるそれはとても熱くて硬いのに、きわめて丁寧に、のろのろと私の唇を肉厚の舌でなぞるシグルド様は、それは奇妙で妖しくて。
何が言いたいのだろう。
目をつぶったままシグルド様の言葉に耳を傾ける。
「……あなたが俺の体調を心配して城へ来てくれた。それだけでも嬉しいのに、あなたは泣いて嫉妬してくれて」
「!?」
そのお話か!?
私はかっと目を見開いた。
恥ずかしい私の勝手な誤解。それを蒸し返すのか!?
けれど、抗議のために開こうとした口はすぐに塞がれて。
「シグルド、さ、ま!む、んん」
上下の唇を食べられた。
そしてまた唇舐めが再開される。
「嬉しかった。脳が沸騰するほど嬉しかった。嬉しくて、あなたが愛しくて」
「ん、むう、んんんっ」
「オルギールの先祖が妻を食べてしまったことがあったが、わかる気がする。こういうことだと思った。可愛くて愛しくて食ってしまいたいと」
「ふむぅ!んんんん!」
わかるのは怖い。わからなくていい。
熱に浮かされたようにシグルド様は恐ろしいことを口走っている。
くちづけはいつしかとても深くて激しい、唇を重ね合わせるそれへと変化していた。
鼻呼吸ができなかったら死にそうなレベル。
息を吐く暇もない、貪るようなくちづけ。この勢いをからだに向けられたら、本当に物理的に食べられそうだ。がち、がち、とあまりの勢いにときおり互いの歯があたる。広くもない口腔内をシグルド様の舌が縦横に暴れまわり、行き場をなくした私の舌は吸い出されてしゃぶり尽くされる。互いの顎を伝う唾液はどちらものもかもわからない。
「んん!はあ!っ、もうっ……!!」
やっと解放された口で遅すぎる抗議をしようとしたけれど。
くちづけが嫌なわけじゃない。ゆったりゆっくり言葉を交わしたくて、その延長にからだの繋がりが欲しくて、そのことを説明しようとしたのに。
「シグルド様、あの!って、あああ!」
「可愛いリヴェア」
がば!とシグルド様が身を起こすのと、自分の両足が大きく開かれるのはほぼ同時だった。
膝裏をもって割り開かれたからだの中心に、シグルド様が高い鼻梁を寄せる。
まだ滴るほどではない。けれど、じんわりと湿り気を帯びているそこが外気にさらされてひんやりする。
そして、シグルド様の荒い息遣いも伝わってくる。
「や、シグルド様……!」
「いい匂いがする」
すんすんとシグルド様が獣のように鼻をうごめかしている。
そのたびに軽く触れる鼻梁の感触がたまらない。
レオン様は行為の最中にこういうことをよく言うし、オルギールも「宝石」フェチだからいつも私のソコに鼻を押し付けたり執拗な口淫をするけれど、考えてみればシグルド様との行為は複数が多いか、二人きりのときも優しさが立ち勝っていてあまりここまでの雰囲気にはならないのだ。
さっきオルギールがいたときだってシグルド様に似たようなことをされているのに、何かが違う。
初めてのような気がする。
濃密で淫猥な空気感。
「ああ、あああっ!!」
「甘い、いい匂いだ、たまらない、リヴェア」
ぐりぐりと鼻梁が押し付けられた。
たちまち姿を現した花芽も鼻先で押され、捏ねくられ、匂いをかがれる。
「リヴェア、俺も、嗅覚は、いいんだ」
鼻先を使って私の秘所をつつきまわし、たまに蜜口を軽く吸いながらシグルド様は言う。
「レオンほどじゃないが。でもかなり、いいんだ。知っていたか?」
「はあ、ああん、ああ……」
「ここの匂いだけで、イキそうだ」
「あああああああ!!」
垂れてきた蜜ごと、キツく花芽を吸い上げられて私はのけぞって達した。
その余韻に浸る暇はなく、分厚い舌が硬くすぼめられ、ナカに侵入してきてその刺激でまたのたうつ。
視線を下げると、膝裏を抑えられたまま、弱々しく空を切って動き自分の足が見える。
緋色の髪を乱して私の秘所に顔を埋めるシグルド様も。
「リヴェア、美味いよ、とても」
「ああ、あああ、やあああ!」
あそこから臓器ごと吸い出されるのではないかと思うくらいの勢いで吸われ、舐め回され。
いつもおっとりと微笑む火竜の君はどこへ行ったのだろう、とからだを波打たせながらぼんやり思う。
「ああああ!」
「リヴェア!」
シグルド様のものが一息に最奥を突いた。
数刻前には二人にさんざん抱かれたはずなのに、私のそこはひくひくと嬉し気に蠢いている。
「く、……リヴェア」
私のうねりを自らの剛直で感じ取ったシグルド様が、何かを耐えるように眉をひそめた。
そして繋がったまま立ち上がり、私の足も腰も宙に浮くほど持ち上げ、上から叩きつけるように抽送を始める。
「シグルド、さま、そんな、……ああ!」
「見てくれ、リヴェア、ほら!」
「ああ、ああああ!!」
「繋がっている。あなたのナカに、いま、入ってるのは、俺だ」
「シグルド様……っ!」
「ほら、見て、見るんだ、リヴェア!」
見るまで、目が合うまでやめてくれないらしい。
垂直に串刺しにされるかのような衝撃に眩暈を覚えながらそこに目を向ける。
上下する肉の楔。
粘つく陰毛の間から見えるそれも、全体にたっぷりと滑りを纏ってまるで凶器のように光って見える。
真上から打ち込まれるたびに全身を貫く甘美な衝撃。
引き抜かれるときのみずからの襞の吸いつき。
蜜が飛び散る音。肌と肌が打ち合う音。
それが例えようもなく淫らな旋律を奏でて聴覚からも快感を拾う。
額に光る汗を拭おうともせず、長い緋色の髪を乱して私を抱くシグルド様は凄絶なまでに艶っぽい微笑を浮かべている。
「シグルド、さ、ま」
「リヴェア。ルードと」
「あ、はあ!」
からだが横に半回転された。
寝台側の足を跨ぐようにして跪いたシグルド様が、高く持ちあげた私の片足を抱きかかえ、ふくらはぎに舌を這わせながら腰を叩きつける。
ねじ込み、押し回して、もうこれ以上ないと思っていたよりもさらに奥まで責め立てられ、私は狂ったように髪を振り乱して身悶える。
半身を起こして、いや、起こそうとして両手を寝台についてもからだが持ち上がらない。
力なく敷布を叩き、引っ掻くだけだ。
「リヴェア、呼んでくれ、頼む、」
「そんな、シグルド、さま」
ずっとシグルド様と呼んできたのだ。
簡単に呼びなおせるものじゃない。
それにこんな状況で。さんざん揺すぶられて。
まともに口がきけない。舌を噛みそうだ。
「待って、シグル、あああ!」
「ルードだ、リヴェア!」
「はあ!」
ふくらはぎに軽く噛みつかれた。
痛いわけではないけれど、予想もしなかった感触にからだが跳ねる。
その動きがさらにまたナカの刺激を増幅させて、びりびりと脳が痺れる。
「リヴェア、ルードと」
「る、ど、さま……」
「様はなしだ、ルード」
「るー、ど」
「リヴェア、もっと、呼んでくれ、頼む」
抱えられた片足をそっと下ろされる。
こんなに激しい交わりの最中でも、このひとは私への労りを忘れることはない。
その仕草だけで、じゅわ、とまた濡れる。
く、とシグルド様が低く呻く。
優しいシグルド様も、激しいシグルド様も……いや、どんな時のルードも好き。
大好き。
正常位で繋がった彼の首に両手を回す。擦り寄るように、抱えよせるようにして肩口に噛り付く。
「ルード、好き」
「リヴェア」
真昼の空の色の瞳が細められた。
滴るような色気と溢れんばかりの愛情を込めて私を見つめてくる。
「大好き、ルード」
激しい突き上げの中、息を弾ませながら私は言った。
大事なことだから何度でも言わなくては。
「ルード、愛してる、他のひと、見ないで、私以外、見ないで」
私の言葉、ひとつひとつに胎内の楔が反応している。
びくりと跳ねて、隘路を不規則につつく。
男のひとなのに喘いでいるかのよう。リヴェア、と低く呟く彼は、絶え間なく熱い息を吐いている。
……誤解でよかった。
私以外のひとを抱いたかと思って、胸がつぶれるかと思った。
私はこんなに欲張りだったんだ。
そして、こんなにも彼を愛していたんだと実感する。
「ルード、好き、だいすき、ルード、ルード……!」
「リヴェア!リヴェア!!」
お互いの名を呼びあいながら、同時に果てた。
注ぎ込まれる熱い濁流と、迸る愛液を感じながら恍惚として目を閉じる。
幸せ。嬉しい。ルード、大好き。
からだも心も満たされて、ほとんど力の残っていない両腕を使って彼の逞しい胸に抱きつく。
温かい大きな手が私の頭を撫でる。
……この世界で私は初めてヤキモチを焼いたことになるのだろう。
今回のことで思い知らされた。
こんなにも常日頃から愛されて、それでもまだ不安なのかと。まだ足りないのかと。
私は欲張りで愚かしい。
でもそれでいいと思うのだ。
愛されることは当たり前のことではない。
愛されたら、同じように愛さないと。
私の婚約者たちは美貌と権力を兼ね備えた男性なのだ。
今回は誤解だったけれど、この先どんな女性がまた泣き落としにかかるやら。
「ルード、大好き」
私はダメ押しのように呟いて、穏やかな睡魔に身を委ねた。
裸のままだから当然だけれど、今の私の脳内はいわゆる男性でいうところの「賢者タイム」。わけもわからず行為に溺れることができない状態だから、視覚、触覚、冴えに冴えている。
---誰がいつ替えたのか考えたくないさらっさらの敷布を背中に感じつつ、シグルド様を見上げた。
否、見上げなくても、視線をずらさずとも近い。近すぎて顔が見えない。さっきからなぜだか大興奮のシグルド様がめったやたらにくちづけをの豪雨を降らせているのだ。
「リヴェア、ああリヴェア、リヴェア、リヴェア」
「あの、ちょ、シグルド、さま、どして、」
「リヴェア、リヴェア、リヴェア」
「シグルド様っ……!」
……以下略。
何かのネジが飛んだらしいシグルド様は私の手を掴んで左右に肘をつき、その美貌を恍惚とさせて私の名を呼び続け、くちづけに没頭している。
嵐が過ぎるのを待とう、と思ったのだけれど、そこは情けない私のからだ。
こちらの世界に来てからというもの、従軍の時以外には一人寝など数えるほどしかない、つまりそのくらい婚約者たちとくっついて眠り、当然眠るだけではなく触れられ抱かれ開発され尽くしたからだは、壊れたシグルド様のくちづけだけではなく、裸の肌が触れ合っているだけでもじんわりと反応し始めている。
シグルド様のものもとっくに質量熱量ともに漲っていて、体重がかからないようにして下さっているとはいえ、私のからだに密着して存在を主張している。
私がそうっと気づかれない程度にささやかに腰を揺らしたのを知ってか知らずか、シグルド様はようやく顔を放して、べたべたになっているだろう私の顔を覗き見た。
「リヴェア。……俺はあなたを愛している」
飾り気のない、けれど真っ直ぐな言葉。シグルド様らしい言い方。
「何番目でもいい。妻の共有、に便乗でもいい。俺はあなたを愛している。俺‘が’あなたを愛している。だからあなたにとって俺のことは何番目でもいっこうにかまわない。ずっとそう思っていた。今もそうだ」
舌を伸ばして私の唇をゆっくりと舐めた。
思わず目を閉じてそれを受ける。
あんなに興奮していたのに、実際、今もなお私のからだにあたるそれはとても熱くて硬いのに、きわめて丁寧に、のろのろと私の唇を肉厚の舌でなぞるシグルド様は、それは奇妙で妖しくて。
何が言いたいのだろう。
目をつぶったままシグルド様の言葉に耳を傾ける。
「……あなたが俺の体調を心配して城へ来てくれた。それだけでも嬉しいのに、あなたは泣いて嫉妬してくれて」
「!?」
そのお話か!?
私はかっと目を見開いた。
恥ずかしい私の勝手な誤解。それを蒸し返すのか!?
けれど、抗議のために開こうとした口はすぐに塞がれて。
「シグルド、さ、ま!む、んん」
上下の唇を食べられた。
そしてまた唇舐めが再開される。
「嬉しかった。脳が沸騰するほど嬉しかった。嬉しくて、あなたが愛しくて」
「ん、むう、んんんっ」
「オルギールの先祖が妻を食べてしまったことがあったが、わかる気がする。こういうことだと思った。可愛くて愛しくて食ってしまいたいと」
「ふむぅ!んんんん!」
わかるのは怖い。わからなくていい。
熱に浮かされたようにシグルド様は恐ろしいことを口走っている。
くちづけはいつしかとても深くて激しい、唇を重ね合わせるそれへと変化していた。
鼻呼吸ができなかったら死にそうなレベル。
息を吐く暇もない、貪るようなくちづけ。この勢いをからだに向けられたら、本当に物理的に食べられそうだ。がち、がち、とあまりの勢いにときおり互いの歯があたる。広くもない口腔内をシグルド様の舌が縦横に暴れまわり、行き場をなくした私の舌は吸い出されてしゃぶり尽くされる。互いの顎を伝う唾液はどちらものもかもわからない。
「んん!はあ!っ、もうっ……!!」
やっと解放された口で遅すぎる抗議をしようとしたけれど。
くちづけが嫌なわけじゃない。ゆったりゆっくり言葉を交わしたくて、その延長にからだの繋がりが欲しくて、そのことを説明しようとしたのに。
「シグルド様、あの!って、あああ!」
「可愛いリヴェア」
がば!とシグルド様が身を起こすのと、自分の両足が大きく開かれるのはほぼ同時だった。
膝裏をもって割り開かれたからだの中心に、シグルド様が高い鼻梁を寄せる。
まだ滴るほどではない。けれど、じんわりと湿り気を帯びているそこが外気にさらされてひんやりする。
そして、シグルド様の荒い息遣いも伝わってくる。
「や、シグルド様……!」
「いい匂いがする」
すんすんとシグルド様が獣のように鼻をうごめかしている。
そのたびに軽く触れる鼻梁の感触がたまらない。
レオン様は行為の最中にこういうことをよく言うし、オルギールも「宝石」フェチだからいつも私のソコに鼻を押し付けたり執拗な口淫をするけれど、考えてみればシグルド様との行為は複数が多いか、二人きりのときも優しさが立ち勝っていてあまりここまでの雰囲気にはならないのだ。
さっきオルギールがいたときだってシグルド様に似たようなことをされているのに、何かが違う。
初めてのような気がする。
濃密で淫猥な空気感。
「ああ、あああっ!!」
「甘い、いい匂いだ、たまらない、リヴェア」
ぐりぐりと鼻梁が押し付けられた。
たちまち姿を現した花芽も鼻先で押され、捏ねくられ、匂いをかがれる。
「リヴェア、俺も、嗅覚は、いいんだ」
鼻先を使って私の秘所をつつきまわし、たまに蜜口を軽く吸いながらシグルド様は言う。
「レオンほどじゃないが。でもかなり、いいんだ。知っていたか?」
「はあ、ああん、ああ……」
「ここの匂いだけで、イキそうだ」
「あああああああ!!」
垂れてきた蜜ごと、キツく花芽を吸い上げられて私はのけぞって達した。
その余韻に浸る暇はなく、分厚い舌が硬くすぼめられ、ナカに侵入してきてその刺激でまたのたうつ。
視線を下げると、膝裏を抑えられたまま、弱々しく空を切って動き自分の足が見える。
緋色の髪を乱して私の秘所に顔を埋めるシグルド様も。
「リヴェア、美味いよ、とても」
「ああ、あああ、やあああ!」
あそこから臓器ごと吸い出されるのではないかと思うくらいの勢いで吸われ、舐め回され。
いつもおっとりと微笑む火竜の君はどこへ行ったのだろう、とからだを波打たせながらぼんやり思う。
「ああああ!」
「リヴェア!」
シグルド様のものが一息に最奥を突いた。
数刻前には二人にさんざん抱かれたはずなのに、私のそこはひくひくと嬉し気に蠢いている。
「く、……リヴェア」
私のうねりを自らの剛直で感じ取ったシグルド様が、何かを耐えるように眉をひそめた。
そして繋がったまま立ち上がり、私の足も腰も宙に浮くほど持ち上げ、上から叩きつけるように抽送を始める。
「シグルド、さま、そんな、……ああ!」
「見てくれ、リヴェア、ほら!」
「ああ、ああああ!!」
「繋がっている。あなたのナカに、いま、入ってるのは、俺だ」
「シグルド様……っ!」
「ほら、見て、見るんだ、リヴェア!」
見るまで、目が合うまでやめてくれないらしい。
垂直に串刺しにされるかのような衝撃に眩暈を覚えながらそこに目を向ける。
上下する肉の楔。
粘つく陰毛の間から見えるそれも、全体にたっぷりと滑りを纏ってまるで凶器のように光って見える。
真上から打ち込まれるたびに全身を貫く甘美な衝撃。
引き抜かれるときのみずからの襞の吸いつき。
蜜が飛び散る音。肌と肌が打ち合う音。
それが例えようもなく淫らな旋律を奏でて聴覚からも快感を拾う。
額に光る汗を拭おうともせず、長い緋色の髪を乱して私を抱くシグルド様は凄絶なまでに艶っぽい微笑を浮かべている。
「シグルド、さ、ま」
「リヴェア。ルードと」
「あ、はあ!」
からだが横に半回転された。
寝台側の足を跨ぐようにして跪いたシグルド様が、高く持ちあげた私の片足を抱きかかえ、ふくらはぎに舌を這わせながら腰を叩きつける。
ねじ込み、押し回して、もうこれ以上ないと思っていたよりもさらに奥まで責め立てられ、私は狂ったように髪を振り乱して身悶える。
半身を起こして、いや、起こそうとして両手を寝台についてもからだが持ち上がらない。
力なく敷布を叩き、引っ掻くだけだ。
「リヴェア、呼んでくれ、頼む、」
「そんな、シグルド、さま」
ずっとシグルド様と呼んできたのだ。
簡単に呼びなおせるものじゃない。
それにこんな状況で。さんざん揺すぶられて。
まともに口がきけない。舌を噛みそうだ。
「待って、シグル、あああ!」
「ルードだ、リヴェア!」
「はあ!」
ふくらはぎに軽く噛みつかれた。
痛いわけではないけれど、予想もしなかった感触にからだが跳ねる。
その動きがさらにまたナカの刺激を増幅させて、びりびりと脳が痺れる。
「リヴェア、ルードと」
「る、ど、さま……」
「様はなしだ、ルード」
「るー、ど」
「リヴェア、もっと、呼んでくれ、頼む」
抱えられた片足をそっと下ろされる。
こんなに激しい交わりの最中でも、このひとは私への労りを忘れることはない。
その仕草だけで、じゅわ、とまた濡れる。
く、とシグルド様が低く呻く。
優しいシグルド様も、激しいシグルド様も……いや、どんな時のルードも好き。
大好き。
正常位で繋がった彼の首に両手を回す。擦り寄るように、抱えよせるようにして肩口に噛り付く。
「ルード、好き」
「リヴェア」
真昼の空の色の瞳が細められた。
滴るような色気と溢れんばかりの愛情を込めて私を見つめてくる。
「大好き、ルード」
激しい突き上げの中、息を弾ませながら私は言った。
大事なことだから何度でも言わなくては。
「ルード、愛してる、他のひと、見ないで、私以外、見ないで」
私の言葉、ひとつひとつに胎内の楔が反応している。
びくりと跳ねて、隘路を不規則につつく。
男のひとなのに喘いでいるかのよう。リヴェア、と低く呟く彼は、絶え間なく熱い息を吐いている。
……誤解でよかった。
私以外のひとを抱いたかと思って、胸がつぶれるかと思った。
私はこんなに欲張りだったんだ。
そして、こんなにも彼を愛していたんだと実感する。
「ルード、好き、だいすき、ルード、ルード……!」
「リヴェア!リヴェア!!」
お互いの名を呼びあいながら、同時に果てた。
注ぎ込まれる熱い濁流と、迸る愛液を感じながら恍惚として目を閉じる。
幸せ。嬉しい。ルード、大好き。
からだも心も満たされて、ほとんど力の残っていない両腕を使って彼の逞しい胸に抱きつく。
温かい大きな手が私の頭を撫でる。
……この世界で私は初めてヤキモチを焼いたことになるのだろう。
今回のことで思い知らされた。
こんなにも常日頃から愛されて、それでもまだ不安なのかと。まだ足りないのかと。
私は欲張りで愚かしい。
でもそれでいいと思うのだ。
愛されることは当たり前のことではない。
愛されたら、同じように愛さないと。
私の婚約者たちは美貌と権力を兼ね備えた男性なのだ。
今回は誤解だったけれど、この先どんな女性がまた泣き落としにかかるやら。
「ルード、大好き」
私はダメ押しのように呟いて、穏やかな睡魔に身を委ねた。
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