愛なんて言葉だけだ

ヤクモ

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「いろんな人と付き合ってみなよ」

 うるさい。私はあの人がいいんだ。

 そう言えばよかったのに、私は笑ってごまかした。

 結婚に憧れは無い。ただ、あの人と一緒にいられるならそれでいい。一緒にいるために結婚しなくてはいけないのなら結婚をするが、あの人と一緒にいるためであって、親戚を増やしたいわけではない。
 私にはあの人が必要だが、あの人にとって私はどうなのだろう。本当は、他にも出会いを求めいているかもしれない。いろんな人と付き合おうと思っているかもしれない。私は、あの人にとっては、人生の中で付き合った一人にすぎないかもしれない。
 そんなこと本人に確かめないと知りようがないとわかっている。それでも、一抹の不安が頭をよぎる。

「そんなことない」

 声に出す。言霊があるのなら、口に出した今、その可能性は消えている。

 「残業」とだけ書かれたメッセージを見ながら「そんなことない」ともう一度呟いた。
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