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34_告白
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「お仕事の方は順調ですか?」
「そうそう! 実はメッセージで送らず、あえて黙ってたことがあるんだけど」
白石さんは、ウンウンと俺の次の言葉を待っている。
「俺に任された新商品の企画、増産に増産が掛かってるんだって。これは会った時に言わなきゃ、と思ってて」
「凄いじゃないですか! 入社してすぐなのに! それで、どんな商品なんですか?」
先日提案した新商品、ゴミ袋ポーチはサンプルが出来るや否や、あっという間に受注が殺到した。特にハロウィン向けのアイテムを求めている企業は多かったようで、それが見事にハマったらしい。撮影していた数種類のサンプル画像を、白石さんにスマホで見て貰った。
「うわ、可愛い! これ、ハロウィンの時に渋谷なんか歩いたら、沢山見かける事が出来るんですよね?」
「そうだね、そうなってくれると嬉しいけど。……いや、そうなるはずです、うん」
「うわー、勉強してるのがもどかしくなります! 早く私も、自分の作ったものを世に出してみたいです」
「白石さん真面目だしセンス良いし、きっと大丈夫だよ。俺も白石さんの作品、早く見てみたい」
「こんな近くで刺激をくれる人がいて、私ツイてるって思います」
少し頬が赤くなった白石さんは、そう言って赤ワインのグラスに口を付けた。
タクが選んでくれたワインはどれも飲みやすく、とても美味しかった。前菜とサラダは白ワイン、パスタとメインの肉料理には赤ワインを合わせた。
「斉藤さん、ワイン全然知らないとか、ホントですか? ワイン、めちゃくちゃ詳しいじゃないですか」
「いや、ホントに全部調べたんだって。多分、ここの料理とワインが美味しいから、そう見えちゃうだけだよ」
「ホントかな~」
白石さんはそう言うと、意地悪そうに笑った。
その時、店内の照明が少しだけ暗くなった。厨房から蝋燭を立てたケーキが運ばれて来る。お願いしておいたバースデーケーキだ。
「本日はお誕生日、おめでとうございます。——それでは、ごゆっくりお過ごしくださいませ」
店員が置いていったケーキには、真っ白いクリームの上に、“KAHO Happy Birthday”と書かれている。年齢を入れていたら、また怒られていただろうか。
「斉藤さん、本当にありがとうございます。凄く嬉しいです……」
白石さんは少し涙ぐんでいた。
「喜んでくれてありがとう……それより、火消そう! 火!」
白石さんは目を潤ませたまま、笑顔で蝋燭の火を吹き消した。
「白石さん、あとこれ……喜んでくれるか分からないけど、プレゼント」
ネットで買ったハンドメイドのネックレスだ。開けて良いですか? と聞く白石さんに、「もちろん」と頷いてみせた。
「素敵……これ、ハンドメイドですか? ——着けてみてもいいですか?」
「もちろん。俺も着けてるとこ見たいと思ってたから」
白い肌の白石さんに、あまり主張しないデザインのネックレスはとても良く似合っていた。今日着ている白いワンピースが一層引き立ててくれている。
「すごく似合うよ。想像していた以上に。白石さんも見てみて」
俺はスマホを取り出し、ネックレスを付けた白石さんを写した。初めて撮る白石さんの写真だ。永久保存版になるだろう。
「ほら、こんな感じ。どう?」
「素敵です……普段アクセサリーとか付けないけど、これだったら毎日付けたいです」
「良かった……それで白石さん。ええと……会った時に、言おうって決めてた事があります」
白石さんの目を見る。彼女はきっと、俺が何を言うかは想像が付いているだろう。俺の鼓動は、今までに無く高鳴っていた。
「俺と……付き合ってくれませんか」
「はい。ずっと待ってました、ありがとう……」
そう言うと、白石さんの目には涙が溢れた。
「もっと早く言えれば良かったんだけど、仕事とか色々あって、ちゃんと自分に自信が出来てから言おうって想いもあって……」
「ううん、分かってます。新しい会社に入ってすぐの、大事な時期じゃないですか。お仕事を疎かにしちゃうより、ずっとずっといいです。——バイト最後の日に握手をしてくれた時、私待っていられるって思ったんです」
また、タクに助けられた。
感謝の気持ちと、ほんの少しの焼きもちが、俺の中で入り混じった。
「……これからは沢山会えるかな? こっちに来るにも一駅だし、白石さんがバイトの時には俺の家からも近いし」
「もちろんです! また色々行きましょう! ……もし、斉藤さんとこんな風になれたら、行ってみたいって思ってた所が沢山あるんです」
「うん、行きたかったとこまた教えて。……改めて、白石さん。これからも宜しくお願いいたします」
俺は大仰に、頭を下げた。
「こちらこそ、宜しくお願いいたします」
白石さんも同じように頭を下げた後、俺たちは顔を見合わせて笑った。
「そうそう! 実はメッセージで送らず、あえて黙ってたことがあるんだけど」
白石さんは、ウンウンと俺の次の言葉を待っている。
「俺に任された新商品の企画、増産に増産が掛かってるんだって。これは会った時に言わなきゃ、と思ってて」
「凄いじゃないですか! 入社してすぐなのに! それで、どんな商品なんですか?」
先日提案した新商品、ゴミ袋ポーチはサンプルが出来るや否や、あっという間に受注が殺到した。特にハロウィン向けのアイテムを求めている企業は多かったようで、それが見事にハマったらしい。撮影していた数種類のサンプル画像を、白石さんにスマホで見て貰った。
「うわ、可愛い! これ、ハロウィンの時に渋谷なんか歩いたら、沢山見かける事が出来るんですよね?」
「そうだね、そうなってくれると嬉しいけど。……いや、そうなるはずです、うん」
「うわー、勉強してるのがもどかしくなります! 早く私も、自分の作ったものを世に出してみたいです」
「白石さん真面目だしセンス良いし、きっと大丈夫だよ。俺も白石さんの作品、早く見てみたい」
「こんな近くで刺激をくれる人がいて、私ツイてるって思います」
少し頬が赤くなった白石さんは、そう言って赤ワインのグラスに口を付けた。
タクが選んでくれたワインはどれも飲みやすく、とても美味しかった。前菜とサラダは白ワイン、パスタとメインの肉料理には赤ワインを合わせた。
「斉藤さん、ワイン全然知らないとか、ホントですか? ワイン、めちゃくちゃ詳しいじゃないですか」
「いや、ホントに全部調べたんだって。多分、ここの料理とワインが美味しいから、そう見えちゃうだけだよ」
「ホントかな~」
白石さんはそう言うと、意地悪そうに笑った。
その時、店内の照明が少しだけ暗くなった。厨房から蝋燭を立てたケーキが運ばれて来る。お願いしておいたバースデーケーキだ。
「本日はお誕生日、おめでとうございます。——それでは、ごゆっくりお過ごしくださいませ」
店員が置いていったケーキには、真っ白いクリームの上に、“KAHO Happy Birthday”と書かれている。年齢を入れていたら、また怒られていただろうか。
「斉藤さん、本当にありがとうございます。凄く嬉しいです……」
白石さんは少し涙ぐんでいた。
「喜んでくれてありがとう……それより、火消そう! 火!」
白石さんは目を潤ませたまま、笑顔で蝋燭の火を吹き消した。
「白石さん、あとこれ……喜んでくれるか分からないけど、プレゼント」
ネットで買ったハンドメイドのネックレスだ。開けて良いですか? と聞く白石さんに、「もちろん」と頷いてみせた。
「素敵……これ、ハンドメイドですか? ——着けてみてもいいですか?」
「もちろん。俺も着けてるとこ見たいと思ってたから」
白い肌の白石さんに、あまり主張しないデザインのネックレスはとても良く似合っていた。今日着ている白いワンピースが一層引き立ててくれている。
「すごく似合うよ。想像していた以上に。白石さんも見てみて」
俺はスマホを取り出し、ネックレスを付けた白石さんを写した。初めて撮る白石さんの写真だ。永久保存版になるだろう。
「ほら、こんな感じ。どう?」
「素敵です……普段アクセサリーとか付けないけど、これだったら毎日付けたいです」
「良かった……それで白石さん。ええと……会った時に、言おうって決めてた事があります」
白石さんの目を見る。彼女はきっと、俺が何を言うかは想像が付いているだろう。俺の鼓動は、今までに無く高鳴っていた。
「俺と……付き合ってくれませんか」
「はい。ずっと待ってました、ありがとう……」
そう言うと、白石さんの目には涙が溢れた。
「もっと早く言えれば良かったんだけど、仕事とか色々あって、ちゃんと自分に自信が出来てから言おうって想いもあって……」
「ううん、分かってます。新しい会社に入ってすぐの、大事な時期じゃないですか。お仕事を疎かにしちゃうより、ずっとずっといいです。——バイト最後の日に握手をしてくれた時、私待っていられるって思ったんです」
また、タクに助けられた。
感謝の気持ちと、ほんの少しの焼きもちが、俺の中で入り混じった。
「……これからは沢山会えるかな? こっちに来るにも一駅だし、白石さんがバイトの時には俺の家からも近いし」
「もちろんです! また色々行きましょう! ……もし、斉藤さんとこんな風になれたら、行ってみたいって思ってた所が沢山あるんです」
「うん、行きたかったとこまた教えて。……改めて、白石さん。これからも宜しくお願いいたします」
俺は大仰に、頭を下げた。
「こちらこそ、宜しくお願いいたします」
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