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27_予定変更
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いつまでこの店に居なくてはいけないんだろう……という不安はあっけなく解消された。
白石さんたちは思ったより早くに席を立ち、8時になる前には店を出てしまったからだ。遠くから見ている限りでは、白石さんとその友人は怒って先に店を出たように見える。何かあったのだろうか。
とりあえず、俺もいつ店を出てもいい状況になった。残っているビールを飲んでしまったら、お会計をして店を出ようと思う。
ビールを飲み干し、席を立とうとしたタイミングでメッセージが届いた。白石さんからだった。
——————————
斉藤さん、また愚痴聞いてください……
——————————
——————————
どうしたの? 今でもいいよ
——————————
——————————
ありがとうございます! 今、友達と電車乗ってるので、家着いたらまたメッセージ入れます!
——————————
俺は「OK!」と書かれたスタンプを送っておいた。やはり、山岡たちと何かあったようだ。
***
家について、シャワーを浴びたかったが、白石さんから連絡が入るまで待っていた。テレビでも付けようかと思ったその時、メッセージが届いた。
——————————
お待たせしました! 長くなりそうですけど大丈夫ですか?
——————————
——————————
もちろん! メッセージが面倒なら音声通話でも大丈夫!
——————————
10秒ほど待つと、返信の代わりに着信音が鳴った。
「は、はい、斉藤です」
「し、白石です。すみません、お話まで聞いて貰う事になっちゃって……そんな大した話でも無いんですけど。——な、なんだか、電話になると緊張しますね」
「あはは、俺もちょっと緊張してる。……それで? 何があったの?」
「ええ……今日、山岡さんと山岡さんの友人と会ったんです。私の友人含めて4人で。で、会った理由がですね、山岡さんの友人が、私が通っている学校に興味があるらしくって。友人に学校の事教えてあげて欲しいってお願いされたんです。最初は断ったんですけど『本気みたいだから』とか、『ネットでの情報じゃイマイチ分からないから』とか言うので会ったんです、今日」
「うんうん。そうなんだね」
知らないふりをして聞いている事に、少々胸が痛む。ごめん、白石さん。
「山岡さんの知り合いって言っても、私一人で男性二人に会うのはちょっと抵抗があって。それで、学校の友人誘ったんです。彼女も、その彼が本気なら、この学校の良くない所も教えてあげないとね。ってちゃんと考えてくれてたのに」
「なるほど。良いお友達じゃん」
「そうなんですよ! 学校にだって、入学を考えている生徒さんがいるからって、最新のパンフレットを用意して貰ったんですよ。それなのに、学校に興味があったなんて殆ど嘘で、一緒に飲みたかったんだとか言い出して……友達にも本当に申し訳なくて。山岡さんにはガッカリしました、本当に」
「その友達が、白石さんに興味があったって事?」
「……んー、そうみたいです。私は覚えてなかったんですけど、私が受付の時にお客さんで来てたらしくて」
「そっか……山岡くんは知ってたの? 友達が学校には興味無いって?」
「多分……こうでもしなきゃ、白石さん出てきてくれないと思って、とか言ってたから……」
「なるほど。彼なりの友達思いなんだろうけど、ちょっと困るねそれは」
「はい。ちょっとどころじゃありません! って、斉藤さんに怒っても仕方ないんですけど……」
「いやいや、少しでもスッキリしてくれるなら俺はそれでいいよ。ハハハ」
「すみません……でも、確かにちょっとスッキリしたかもしれません。ありがとうございます! ……そう言えば、週明けからですよね、新しいお仕事。どんな所なんだろう、私も楽しみにしてるんです」
「ありがとう。どんな所か楽しみだったり、不安だったりだけどね」
ここでもまた、俺は嘘をついている。タクが「斉藤拓也を一人にしないと」と言ってくれた意味が、今になってよく分かる。
「そういや、初めてですね、電話で話すの。今日は愚痴聞いて貰ってありがとうございました」
「いえいえ。俺で良かったらいつでも。俺も……いや、今日話せてホント良かった」
「俺もって、斉藤さんも言いたい愚痴でもあるんですか? いいですよ、私、何時までだって聞きますから」
「あはは、ありがとう。その時はまたお願いします。それから……来週には会える日、連絡出来そう。予定は大丈夫?」
「はい、もちろん!」
その後もたわいも無い会話は続き、電話を切ったのは11時も過ぎた頃だった。
白石さんたちを居酒屋で見てしまった時には、タクの事もあり、とんでもない一日かと思ったけど、白石さんが連絡をくれたおかげで色々と救われた気がする。
今日は筋トレを休むつもりだったが、予定変更だ。
タク、これでいいんだよね……?
白石さんたちは思ったより早くに席を立ち、8時になる前には店を出てしまったからだ。遠くから見ている限りでは、白石さんとその友人は怒って先に店を出たように見える。何かあったのだろうか。
とりあえず、俺もいつ店を出てもいい状況になった。残っているビールを飲んでしまったら、お会計をして店を出ようと思う。
ビールを飲み干し、席を立とうとしたタイミングでメッセージが届いた。白石さんからだった。
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斉藤さん、また愚痴聞いてください……
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どうしたの? 今でもいいよ
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ありがとうございます! 今、友達と電車乗ってるので、家着いたらまたメッセージ入れます!
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俺は「OK!」と書かれたスタンプを送っておいた。やはり、山岡たちと何かあったようだ。
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家について、シャワーを浴びたかったが、白石さんから連絡が入るまで待っていた。テレビでも付けようかと思ったその時、メッセージが届いた。
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お待たせしました! 長くなりそうですけど大丈夫ですか?
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もちろん! メッセージが面倒なら音声通話でも大丈夫!
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10秒ほど待つと、返信の代わりに着信音が鳴った。
「は、はい、斉藤です」
「し、白石です。すみません、お話まで聞いて貰う事になっちゃって……そんな大した話でも無いんですけど。——な、なんだか、電話になると緊張しますね」
「あはは、俺もちょっと緊張してる。……それで? 何があったの?」
「ええ……今日、山岡さんと山岡さんの友人と会ったんです。私の友人含めて4人で。で、会った理由がですね、山岡さんの友人が、私が通っている学校に興味があるらしくって。友人に学校の事教えてあげて欲しいってお願いされたんです。最初は断ったんですけど『本気みたいだから』とか、『ネットでの情報じゃイマイチ分からないから』とか言うので会ったんです、今日」
「うんうん。そうなんだね」
知らないふりをして聞いている事に、少々胸が痛む。ごめん、白石さん。
「山岡さんの知り合いって言っても、私一人で男性二人に会うのはちょっと抵抗があって。それで、学校の友人誘ったんです。彼女も、その彼が本気なら、この学校の良くない所も教えてあげないとね。ってちゃんと考えてくれてたのに」
「なるほど。良いお友達じゃん」
「そうなんですよ! 学校にだって、入学を考えている生徒さんがいるからって、最新のパンフレットを用意して貰ったんですよ。それなのに、学校に興味があったなんて殆ど嘘で、一緒に飲みたかったんだとか言い出して……友達にも本当に申し訳なくて。山岡さんにはガッカリしました、本当に」
「その友達が、白石さんに興味があったって事?」
「……んー、そうみたいです。私は覚えてなかったんですけど、私が受付の時にお客さんで来てたらしくて」
「そっか……山岡くんは知ってたの? 友達が学校には興味無いって?」
「多分……こうでもしなきゃ、白石さん出てきてくれないと思って、とか言ってたから……」
「なるほど。彼なりの友達思いなんだろうけど、ちょっと困るねそれは」
「はい。ちょっとどころじゃありません! って、斉藤さんに怒っても仕方ないんですけど……」
「いやいや、少しでもスッキリしてくれるなら俺はそれでいいよ。ハハハ」
「すみません……でも、確かにちょっとスッキリしたかもしれません。ありがとうございます! ……そう言えば、週明けからですよね、新しいお仕事。どんな所なんだろう、私も楽しみにしてるんです」
「ありがとう。どんな所か楽しみだったり、不安だったりだけどね」
ここでもまた、俺は嘘をついている。タクが「斉藤拓也を一人にしないと」と言ってくれた意味が、今になってよく分かる。
「そういや、初めてですね、電話で話すの。今日は愚痴聞いて貰ってありがとうございました」
「いえいえ。俺で良かったらいつでも。俺も……いや、今日話せてホント良かった」
「俺もって、斉藤さんも言いたい愚痴でもあるんですか? いいですよ、私、何時までだって聞きますから」
「あはは、ありがとう。その時はまたお願いします。それから……来週には会える日、連絡出来そう。予定は大丈夫?」
「はい、もちろん!」
その後もたわいも無い会話は続き、電話を切ったのは11時も過ぎた頃だった。
白石さんたちを居酒屋で見てしまった時には、タクの事もあり、とんでもない一日かと思ったけど、白石さんが連絡をくれたおかげで色々と救われた気がする。
今日は筋トレを休むつもりだったが、予定変更だ。
タク、これでいいんだよね……?
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