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21_追い込み

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「白石さんとの会話見てたよ、やるじゃん。その代わり、ダイエットも今以上に気合い入れないとね」

 体を貸していたタクは、自分も見聞きしていたように言った。

「ほんと、自分で自分を追い込んだって感じ。こうなったら、意地でもやり遂げないと。明日からは筋トレもメニューに入れないと追いつかないな」

「多少、期間も空く事だし『ちょっと太っちゃって』でごまかせるんじゃ無い?」

「ハハハ。まあそれは、最後の手段にとっておくとするよ。タクって、筋トレのメニューも作ったり出来る?」

「大丈夫じゃないかな? とりあえず調べてみる。あと、レストランも探しておこうか? どうせ良いお店とか知らないでしょ?」

「アハハ、仰る通りで! じゃ、そっちもよろしく!」

 就職をしてからは、睡眠の質を上げるためにも、俺が寝室を使うようにしている。ジョギングを始めてからは、布団に着く時間も以前より早くなった。ついこの間までは意味も無く、ビール片手にダラダラと深夜まで起きていたのに。次に白石さんに会える日の事を考えていたら、知らない間に眠りに落ちていた。


「おはようタク。……え? 筋トレのメニュー、もう出来たの?」

 寝室から出ると、ジョギング前のおにぎりとドリンクをタクが用意してくれていた。その横にはプリントアウトされた、筋トレのメニューらしきものが置いてある。本気で運動するつもりなら、ある程度の炭水化物は摂らなくてはいけないらしい。

「筋トレは仕事終わりにやるのがちょうど良さそうだね。朝はジョギングで夕方に筋トレ。最近はお酒も飲まずに、夜は炭水化物も摂っていないなんて、以前の拓也じゃ考えられないね」

「ほんと。すっかり別人になっちゃったよ。タクがいなくなったら、すぐにダメ人間に戻っちゃいそうだけど」

「今の拓也なら大丈夫だよ。——今日も暑いらしいよ、水分補給しっかりね」

 タクは笑顔で見送ってくれた。


 ジョギングはペースを上げすぎず、距離より時間を長く走れるよう意識している。その方が走っている間にも色々な事を考えたりと、余裕も出来る。そもそも、ジョギングには脳細胞を活性化する効果もあるようだ。

 白石さんと会う日、どのような格好をしていこう。まだ試してないけど、今ならタク用に買った服も着ることが出来るだろう。そうだ、久しぶりに俺の服を買ってみるのも悪くない。

 髪型も悩みどころだ。今、俺とタクはあえて違う髪型をしている。白石さんと会う前には、タクと同じ髪型にしようと思っていたが、浅井や吉田さんたちはどう思うだろうか? 居候同士の従兄弟が同じ髪型をしているというのは、なかなかに珍妙な事だと思う。


 ジョギングを終えてハイツに戻ると、久しぶりに山内さんに会った。

「斉藤さん!? 痩せたね! 走ってるんだ、えらーい」

 山内さんとは、一緒にカラオケボックスへ行った以来だから、2ヶ月近く会ってなかった事になる。その頃から比べると4~5kgほど減ったのだろうか。

「ご無沙汰してます。こんな早い時間にお出かけ?」

「いや、今日は朝ご飯用意出来なくって、コンビニまでパンでも買いに行こうかなって。——それよりタクちゃん全然会ってくれないんだけど、元気?」

 知らない間に、山内さんから誘われたりしていたのだろうか。タクからは何も聞いていない。

「そうなの? 元気なのは元気だよ」

「まあ、それならいいんだけど。こないだ連絡先教えて貰って、メッセージ送ってはいるんだけど、のらりくらりとかわされてる感じ。私、嫌われてるのかなあ」

「いや、そんな事は無いはずだけど……またタクに言っておくね」

「まあ、あんまり深刻な感じでは言わないでね。イタい奴だと思われても嫌だから。ハハハ」

 山内さんは「じゃあね」と笑顔でコンビニへ向かっていった。
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