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LV-41:光りの中庭、暗黒の地下
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階段を下り、辿り着いた先は1階の玄関ホールだった。今回も閉じた扉は壁となり、2階に戻る事は出来なくなっている。俺たちは振り出しに戻されたのだ。
「結局2階は、既存の武器をパワーアップしてくれる場所だったと思います。私たちが持っていない、武器や防具のパワーアップもあったかもしれませんね」
「最初は焦ったけど、結局MP回復カプセルもそこまで使わなかったしね。良い寄り道だったと思うよ。——じゃ、俺たちも進もうか、地下へ」
階段を下りると、再びモンスターとの戦闘が始まった。2階に比べると圧倒的に強いモンスターが多く、ここでもMP回復カプセルを少しずつ減らしていった。この時点で誰か一人でも死ぬと、村に戻る事になる。サーシャとナイリの、回復魔法の使用頻度は特に高くなっていた。
「ごめんね、さっきはブレスリカバリー使うまでも無かったね……もうちょっと慎重にならないと……」
「気にするな、サーシャ。死んでしまったら、元も子もない。こんな所で『命の石』を使うわけにもいかないしな」
「ティシリィの言うとおりです。サーシャの回復方法のチョイスと、タイミング。今のままで問題ありませんよ。自信を持ってください」
イロエスは、我ながら素晴らしいパーティーだと思う。目が合ったサーシャは、良い顔をしていた。
通路を進み続ける内、階上へ向かう階段が現れた。その先に扉が見える。
「扉の隙間から光りが洩れてるな……あれじゃないか、さっきヴァントスたちが歩いていた中庭に続く扉は」
ティシリィが言ったとおり、扉を開けると中庭に出た。全員が一様に、眩しそうな表情を浮かべる。
「はあー! なんかホッとする! この城の中を歩いてると、太陽って本当に素晴らしいんだなって思うよ!」
サーシャは伸びをしながら、中庭を歩き回った。
「はいはいサーシャ、先を急ぐぞ。ヴァントスたちがここを通ってから、かなり時間が経ってる。このままじゃ負けるぞ」
「まあまあ、ティシリィ。確かに、地下は流石に息が詰まりそうでした。深呼吸くらいはしていきましょう」
俺たちは必要以上に大きく体を使って、深呼吸をした。確かにこれは良い。心のHPまで回復出来るような気になった。
「ホントだ、悪くないな……じゃ、そろそろ行くか! ベテルデウスは近いはずだ!」
向かい側にあった中庭の扉を開け、俺たちは再び城内の暗い世界へと戻っていく。
扉の先は、またもや地下へと続く階段で、出会うモンスターは更に強力になっていた。ギラサンドスやファイラスレベルの魔法を使う敵まで現れている。
全力で剣を振るうティシリィに、攻撃と回復のバランスを見ながら戦うナイリとサーシャ。俺も負けないよう、彼女たちに食らいついていく。
「なかなかキツいな……まだヴァントスたちに会わないって事は、アイツらも休憩無しで進んでるんだろうな」
「そうだろうね……一本道だから、リタイヤしたら俺たちとすれ違うはずだし」
「その代わり、私たちでもそこまで行けるって事だよ。絶対にヴァントスさんたちより、私たちの方が強いから!」
「フフ、頼もしいですね、サーシャは。……また来ましたよ! アイアンナイトです!」
俺たちは戦闘を繰り返す。
ベテルデウスを倒すまで、延々と。
***
地下通路での長く激しい戦いの末、2つの扉がある場所に辿り着いた。
進行方向に扉が一つ、そして右手に一つ。どちらかが、ベテルデウスへの元へと繋がっているのだろう。
「とりあえず、俺は正面の扉を見てくるよ。誰か、右側の扉を見てくれる?」
俺が正面の扉、ナイリが右側の扉まで移動し、ノブをガチャガチャと回した。
「こっちは鍵が掛かって開かない。ナイリの方はどう?」
「こちらの扉は開きます、インディ!」
「じゃあ、右手の扉だな。……準備はいいか?」
いつものように、ティシリィの号令で俺たちはその部屋へ入った。
だが、その部屋には誰も居なかった。室内は広く、天井はとても高い。
天井——?
「ガ、ガーディアンドラゴンだ!!」
見上げると、テセラの塔で戦ったガーディアンドラゴンが、俺たちを見下ろしていた。
「サーシャ! グラヴィティボムです!」
「分かってる! 叩き落とせ!! グラヴィティボム!!」
サーシャが唱えると、ガーディアンドラゴンは大きな音を立てて、地面に叩きつけられた。
「うらああああ!!」
次の瞬間には、ティシリィがガーディアンドラゴンに斬りかかっていた。CHとツインイヤリングの2回攻撃で、ガーディアンドラゴンは一瞬で絶命した。
そして、少しの間を置いて部屋の外から『ガチャン』と、鍵が開いたような音が響いた。
「俺たちが戦った時のガーディアンドラゴンと同じだったね。てっきり、強くなってるのかと思ったよ」
「確かにな……にしても、アタシたちがどれだけ強くなったのかが、よく分かるな」
「本当に……あの時は、エクラウスさんが命を落とすほどでしたからね……」
「そうだったんだ……私はまだ、ヴァントスさんたちのパーティーにいたんだっけ。……じゃ、次だね! 鍵が開いた音が聞こえたよ!」
俺たちは部屋を出て、先ほどは締まっていた扉へと向かった。ガーディアンドラゴンを倒したからだろう、こちらの扉は既に解錠されている。
「また同じような作りだな。今度はどっちの扉だ?」
ティシリィの言うように、扉を開けた先は同じ作りになっていた。両方の扉を調べると、今度は正面の扉を開くことが出来た。
次の部屋に現れたのは、死体が集まって一つのモンスターになる、デスアグリゲイトだった。今回は合体させる時間も与えず、デスアグリゲイトを消滅させた。ビトルノの村に行ったときに聖母の杖があったなら、どれほど楽に攻略出来ただろうか。
「ここは、ティシリィが死んじゃったところだね……今回は合体させる前に倒せて良かったよ」
「でも、あの時死んでて良かったな……こんな終盤で即死喰らったら、ショックなんてもんじゃないぞ。よし、じゃ次だ!!」
次の部屋には氷の層に覆われたモンスター、ツインスネイクスが現れた。魔力が上がっていた俺のエクサファイラスとαの書が、驚くほど戦いを楽にさせている。そして最後は、ナイリのエクササンドスαで二体同時に消滅させた。
「お。ドロップ通知来てる。部屋の右奥だ」
凍った部屋の片隅に、宝箱が出現していた。中には5つのMP回復カプセルが入っていた。
「これは有り難いですね、頂いておきましょう。……でも良かったです、アスドレクが現れなくて」
ツインスネイクスの部屋には、アスドレクの絵が飾ってあった。前回のように、絵から飛び出てこないかと心配していたのだ。アスドレクに限っては、今の俺たちでも手こずる事だろう。
解錠された扉を開けて進むと、今までと同じく二つの扉が現れた。だが今回は、どちらの扉も開かない。
「なんだよこれ、進めないじゃん。どうなってんだ」
ティシリィはイライラとした表情で、正面の扉をドンドンと叩いた。
「ちょ、ちょっと待ってティシリィ。扉の上、なんか光ってる」
そこには、剣と剣が重なり合ったアイコンが描かれていた。その部分がうっすらと光っている。
「あ、これは……この部屋で戦闘中の印ですね。ルッカの図書館で知りましたが、実物を見るのは初めてです。まあ、光って無かったから気付かなかっただけで、どの扉にも付いていたのでしょうが」
どうやら、この部屋でヴァントスさんたちは戦闘をしているようだ。仕方なく、俺たちはその場に腰を下ろして休憩を取った。少しでも休憩を取ることが出来たのは、かえって良かったのかもしれない。
そして5分も立った頃、もうひとつの扉の鍵が『ガチャ』という音を立て解錠された。
だが、勝利をしたであろうヴァントスさんたちは、一向に出てくる気配が無かった。
「結局2階は、既存の武器をパワーアップしてくれる場所だったと思います。私たちが持っていない、武器や防具のパワーアップもあったかもしれませんね」
「最初は焦ったけど、結局MP回復カプセルもそこまで使わなかったしね。良い寄り道だったと思うよ。——じゃ、俺たちも進もうか、地下へ」
階段を下りると、再びモンスターとの戦闘が始まった。2階に比べると圧倒的に強いモンスターが多く、ここでもMP回復カプセルを少しずつ減らしていった。この時点で誰か一人でも死ぬと、村に戻る事になる。サーシャとナイリの、回復魔法の使用頻度は特に高くなっていた。
「ごめんね、さっきはブレスリカバリー使うまでも無かったね……もうちょっと慎重にならないと……」
「気にするな、サーシャ。死んでしまったら、元も子もない。こんな所で『命の石』を使うわけにもいかないしな」
「ティシリィの言うとおりです。サーシャの回復方法のチョイスと、タイミング。今のままで問題ありませんよ。自信を持ってください」
イロエスは、我ながら素晴らしいパーティーだと思う。目が合ったサーシャは、良い顔をしていた。
通路を進み続ける内、階上へ向かう階段が現れた。その先に扉が見える。
「扉の隙間から光りが洩れてるな……あれじゃないか、さっきヴァントスたちが歩いていた中庭に続く扉は」
ティシリィが言ったとおり、扉を開けると中庭に出た。全員が一様に、眩しそうな表情を浮かべる。
「はあー! なんかホッとする! この城の中を歩いてると、太陽って本当に素晴らしいんだなって思うよ!」
サーシャは伸びをしながら、中庭を歩き回った。
「はいはいサーシャ、先を急ぐぞ。ヴァントスたちがここを通ってから、かなり時間が経ってる。このままじゃ負けるぞ」
「まあまあ、ティシリィ。確かに、地下は流石に息が詰まりそうでした。深呼吸くらいはしていきましょう」
俺たちは必要以上に大きく体を使って、深呼吸をした。確かにこれは良い。心のHPまで回復出来るような気になった。
「ホントだ、悪くないな……じゃ、そろそろ行くか! ベテルデウスは近いはずだ!」
向かい側にあった中庭の扉を開け、俺たちは再び城内の暗い世界へと戻っていく。
扉の先は、またもや地下へと続く階段で、出会うモンスターは更に強力になっていた。ギラサンドスやファイラスレベルの魔法を使う敵まで現れている。
全力で剣を振るうティシリィに、攻撃と回復のバランスを見ながら戦うナイリとサーシャ。俺も負けないよう、彼女たちに食らいついていく。
「なかなかキツいな……まだヴァントスたちに会わないって事は、アイツらも休憩無しで進んでるんだろうな」
「そうだろうね……一本道だから、リタイヤしたら俺たちとすれ違うはずだし」
「その代わり、私たちでもそこまで行けるって事だよ。絶対にヴァントスさんたちより、私たちの方が強いから!」
「フフ、頼もしいですね、サーシャは。……また来ましたよ! アイアンナイトです!」
俺たちは戦闘を繰り返す。
ベテルデウスを倒すまで、延々と。
***
地下通路での長く激しい戦いの末、2つの扉がある場所に辿り着いた。
進行方向に扉が一つ、そして右手に一つ。どちらかが、ベテルデウスへの元へと繋がっているのだろう。
「とりあえず、俺は正面の扉を見てくるよ。誰か、右側の扉を見てくれる?」
俺が正面の扉、ナイリが右側の扉まで移動し、ノブをガチャガチャと回した。
「こっちは鍵が掛かって開かない。ナイリの方はどう?」
「こちらの扉は開きます、インディ!」
「じゃあ、右手の扉だな。……準備はいいか?」
いつものように、ティシリィの号令で俺たちはその部屋へ入った。
だが、その部屋には誰も居なかった。室内は広く、天井はとても高い。
天井——?
「ガ、ガーディアンドラゴンだ!!」
見上げると、テセラの塔で戦ったガーディアンドラゴンが、俺たちを見下ろしていた。
「サーシャ! グラヴィティボムです!」
「分かってる! 叩き落とせ!! グラヴィティボム!!」
サーシャが唱えると、ガーディアンドラゴンは大きな音を立てて、地面に叩きつけられた。
「うらああああ!!」
次の瞬間には、ティシリィがガーディアンドラゴンに斬りかかっていた。CHとツインイヤリングの2回攻撃で、ガーディアンドラゴンは一瞬で絶命した。
そして、少しの間を置いて部屋の外から『ガチャン』と、鍵が開いたような音が響いた。
「俺たちが戦った時のガーディアンドラゴンと同じだったね。てっきり、強くなってるのかと思ったよ」
「確かにな……にしても、アタシたちがどれだけ強くなったのかが、よく分かるな」
「本当に……あの時は、エクラウスさんが命を落とすほどでしたからね……」
「そうだったんだ……私はまだ、ヴァントスさんたちのパーティーにいたんだっけ。……じゃ、次だね! 鍵が開いた音が聞こえたよ!」
俺たちは部屋を出て、先ほどは締まっていた扉へと向かった。ガーディアンドラゴンを倒したからだろう、こちらの扉は既に解錠されている。
「また同じような作りだな。今度はどっちの扉だ?」
ティシリィの言うように、扉を開けた先は同じ作りになっていた。両方の扉を調べると、今度は正面の扉を開くことが出来た。
次の部屋に現れたのは、死体が集まって一つのモンスターになる、デスアグリゲイトだった。今回は合体させる時間も与えず、デスアグリゲイトを消滅させた。ビトルノの村に行ったときに聖母の杖があったなら、どれほど楽に攻略出来ただろうか。
「ここは、ティシリィが死んじゃったところだね……今回は合体させる前に倒せて良かったよ」
「でも、あの時死んでて良かったな……こんな終盤で即死喰らったら、ショックなんてもんじゃないぞ。よし、じゃ次だ!!」
次の部屋には氷の層に覆われたモンスター、ツインスネイクスが現れた。魔力が上がっていた俺のエクサファイラスとαの書が、驚くほど戦いを楽にさせている。そして最後は、ナイリのエクササンドスαで二体同時に消滅させた。
「お。ドロップ通知来てる。部屋の右奥だ」
凍った部屋の片隅に、宝箱が出現していた。中には5つのMP回復カプセルが入っていた。
「これは有り難いですね、頂いておきましょう。……でも良かったです、アスドレクが現れなくて」
ツインスネイクスの部屋には、アスドレクの絵が飾ってあった。前回のように、絵から飛び出てこないかと心配していたのだ。アスドレクに限っては、今の俺たちでも手こずる事だろう。
解錠された扉を開けて進むと、今までと同じく二つの扉が現れた。だが今回は、どちらの扉も開かない。
「なんだよこれ、進めないじゃん。どうなってんだ」
ティシリィはイライラとした表情で、正面の扉をドンドンと叩いた。
「ちょ、ちょっと待ってティシリィ。扉の上、なんか光ってる」
そこには、剣と剣が重なり合ったアイコンが描かれていた。その部分がうっすらと光っている。
「あ、これは……この部屋で戦闘中の印ですね。ルッカの図書館で知りましたが、実物を見るのは初めてです。まあ、光って無かったから気付かなかっただけで、どの扉にも付いていたのでしょうが」
どうやら、この部屋でヴァントスさんたちは戦闘をしているようだ。仕方なく、俺たちはその場に腰を下ろして休憩を取った。少しでも休憩を取ることが出来たのは、かえって良かったのかもしれない。
そして5分も立った頃、もうひとつの扉の鍵が『ガチャ』という音を立て解錠された。
だが、勝利をしたであろうヴァントスさんたちは、一向に出てくる気配が無かった。
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