32 / 49
LV-32:ガルミウム鉱山(前編)
しおりを挟む
「ヘルド・ガルーラが、結界の石を抜いて回ったのと同じくらいの衝撃だな……この世界の正しいエンディングって、アタシたちがヘルド・ガルーラを殺すことじゃないのか?」
「その考えに至っても仕方ありませんね……本当に、何が正しいのか……」
「時間も時間だし、とりあえず鉱山に行って、ガルミウム鋼を取りに行こう。今からでも、帰る頃には日が落ちているかもしれない」
「ああ、そうだな……クロトワの事は後で考えよう……」
俺たちはガルミウム鉱山を目指し、西へと進路を取った。
「ここですね……どの辺りまで洞窟は続いているのでしょう……奥深くなければいいのですが」
クロトワ集落からガルミウム鉱山まではさほど遠くなく、20分ほどで辿り着いた。洞窟の入り口はとても大きく、そこそこの長丁場になると予想される。
洞窟の中は、ガルミウム鋼を運ぶトロッコのレールが敷かれている。ただ、ここ最近は稼働していなかったからか、そのレールは少々錆びていた。ただ、洞窟内のランプは稼働時のまま、柔らかい光を灯している。
「松明が必要無くて良かったね。そんなの再現されたら、バトルの度に地面に置かなきゃいけないとこだった」
「ハハハ、昔のゲームにも詳しいんだね、サーシャは」
「動画サイトで昔のゲーム実況見るのも好きなのよ。そういや、リメイク版も結構やりこんだなあ」
「サーシャ……そんな話をしてると、またティシリィに——きっ、来ましたよっ!!」
前方に砂煙を上げ、スコーピスというモンスターが現れた。その姿は、まるでサソリだ。俺が慌てて戦闘態勢を取る頃、ティシリィは既にスコーピスに斬りかかっていた。
「いっ、痛っ! なんだコイツ!!」
ティシリィの攻撃はスコーピスにダメージを与えていたが、同時にティシリィもスコーピスの尾に刺されていた。そして、今までにない着信音が左手の顛末から聞こえてきた。
『ティシリィ:毒』
「こっ、こんな終盤で毒におかされるのね……えーと、解毒するのは何て魔法だったかしら……」
「サ、サーシャ、早く!! ティシリィのHPがもの凄いスピードで減っている!!」
伊達にこんなタイミングで出てくる攻撃では無かった。解毒魔法を早く唱えないと、ティシリィが死んでしまう。
「こっ、これだ! エリミネイション!!」
サーシャがそう叫ぶと、ティシリィから毒が排除された通知が端末に届いた。
「やっ、やばいなコイツ……攻撃は魔法にしぼって、少し距離を取ろう」
そう言うと、ティシリィにしては珍しく俺たちと同じ位置にまで後退してきた。
「あとは任せてください! ギラサンドス!!」
「来い水流! ラピオード!!」
ナイリと俺は、敵を甘く見たのだろう。そこまでMPを消費しない魔法をスコーピスに唱えた。だが、スコーピスは魔法耐性があるらしく、HPはまだ半分近くを残している。すると、スコーピスは自分の尾をムチのようにしならせ、その先から毒液を噴射した。
『ティシリィ:毒』『サーシャ:毒』『インディ:毒』
端末は連続で、ナイリ以外が毒に犯されたことを通知してきた。
「ちっ……! ウゼえな、こいつは!!」
再び毒に犯された事で吹っ切れたのか、ティシリィは再びスコーピスに斬りかかった。そのティシリィの剣は、SCHの表示と共に、硬そうなスコーピスの身体を真っ二つにした。
「最初の敵がこれとは、なかなか厄介な洞窟ですね……サーシャ、私の『αの書』を貸します。複数人が毒に犯されたときは使ってください」
そう言って、ナイリは『αの書』を手渡した。サーシャはナイリ以外を解毒すると、俺たちは再び洞窟の奥へと進み出した。
その後に出てくる敵もスコーピス同様、一癖も二癖もある敵が多かった。スコーピス以外にも毒を使う敵がおり、僧侶がいなければ攻略は不可能に近かったかもしれない。
「……みなさん、ちょっと待ってください。この左手、通路じゃありませんか? ちょっと覗いていきましょうか」
ナイリが進んでいったのは、長身の男性なら少しかがまないといけない程度の小さな横穴だった。
「やだなあ……私、こういうの苦手……」
サーシャはそう言いつつも、俺たちに続き横穴から入ってきた。中は思いのほか天井が高く、奥行きもある。そしてその一番奥には、煌びやかな宝箱がポツンと一つ置いてあった。
「怪しいな……怪しすぎる、どこからどう見ても……」
ティシリィの言葉に、俺たちは無言で頷いた。これは何かしらの罠だと、皆が思っているのだろう。進んで宝箱の元へ行く者はいなかった。
「——分かったよ、俺が見てくる。意外だなあ、ティシリィはこういうの好きそうなのに」
俺はそう言って宝箱の元へと進み出した。そして、空洞の中央を過ぎた当たりだろうか、地面から鉄格子が突き出してきた。
「きゃあっ!」
そう叫んだサーシャたちは入口側、俺だけが宝箱側と、空洞の中で二手に分けられてしまった。
すると、嫌な予感通り、俺がいる方にだけモンスターが現れた。
「その考えに至っても仕方ありませんね……本当に、何が正しいのか……」
「時間も時間だし、とりあえず鉱山に行って、ガルミウム鋼を取りに行こう。今からでも、帰る頃には日が落ちているかもしれない」
「ああ、そうだな……クロトワの事は後で考えよう……」
俺たちはガルミウム鉱山を目指し、西へと進路を取った。
「ここですね……どの辺りまで洞窟は続いているのでしょう……奥深くなければいいのですが」
クロトワ集落からガルミウム鉱山まではさほど遠くなく、20分ほどで辿り着いた。洞窟の入り口はとても大きく、そこそこの長丁場になると予想される。
洞窟の中は、ガルミウム鋼を運ぶトロッコのレールが敷かれている。ただ、ここ最近は稼働していなかったからか、そのレールは少々錆びていた。ただ、洞窟内のランプは稼働時のまま、柔らかい光を灯している。
「松明が必要無くて良かったね。そんなの再現されたら、バトルの度に地面に置かなきゃいけないとこだった」
「ハハハ、昔のゲームにも詳しいんだね、サーシャは」
「動画サイトで昔のゲーム実況見るのも好きなのよ。そういや、リメイク版も結構やりこんだなあ」
「サーシャ……そんな話をしてると、またティシリィに——きっ、来ましたよっ!!」
前方に砂煙を上げ、スコーピスというモンスターが現れた。その姿は、まるでサソリだ。俺が慌てて戦闘態勢を取る頃、ティシリィは既にスコーピスに斬りかかっていた。
「いっ、痛っ! なんだコイツ!!」
ティシリィの攻撃はスコーピスにダメージを与えていたが、同時にティシリィもスコーピスの尾に刺されていた。そして、今までにない着信音が左手の顛末から聞こえてきた。
『ティシリィ:毒』
「こっ、こんな終盤で毒におかされるのね……えーと、解毒するのは何て魔法だったかしら……」
「サ、サーシャ、早く!! ティシリィのHPがもの凄いスピードで減っている!!」
伊達にこんなタイミングで出てくる攻撃では無かった。解毒魔法を早く唱えないと、ティシリィが死んでしまう。
「こっ、これだ! エリミネイション!!」
サーシャがそう叫ぶと、ティシリィから毒が排除された通知が端末に届いた。
「やっ、やばいなコイツ……攻撃は魔法にしぼって、少し距離を取ろう」
そう言うと、ティシリィにしては珍しく俺たちと同じ位置にまで後退してきた。
「あとは任せてください! ギラサンドス!!」
「来い水流! ラピオード!!」
ナイリと俺は、敵を甘く見たのだろう。そこまでMPを消費しない魔法をスコーピスに唱えた。だが、スコーピスは魔法耐性があるらしく、HPはまだ半分近くを残している。すると、スコーピスは自分の尾をムチのようにしならせ、その先から毒液を噴射した。
『ティシリィ:毒』『サーシャ:毒』『インディ:毒』
端末は連続で、ナイリ以外が毒に犯されたことを通知してきた。
「ちっ……! ウゼえな、こいつは!!」
再び毒に犯された事で吹っ切れたのか、ティシリィは再びスコーピスに斬りかかった。そのティシリィの剣は、SCHの表示と共に、硬そうなスコーピスの身体を真っ二つにした。
「最初の敵がこれとは、なかなか厄介な洞窟ですね……サーシャ、私の『αの書』を貸します。複数人が毒に犯されたときは使ってください」
そう言って、ナイリは『αの書』を手渡した。サーシャはナイリ以外を解毒すると、俺たちは再び洞窟の奥へと進み出した。
その後に出てくる敵もスコーピス同様、一癖も二癖もある敵が多かった。スコーピス以外にも毒を使う敵がおり、僧侶がいなければ攻略は不可能に近かったかもしれない。
「……みなさん、ちょっと待ってください。この左手、通路じゃありませんか? ちょっと覗いていきましょうか」
ナイリが進んでいったのは、長身の男性なら少しかがまないといけない程度の小さな横穴だった。
「やだなあ……私、こういうの苦手……」
サーシャはそう言いつつも、俺たちに続き横穴から入ってきた。中は思いのほか天井が高く、奥行きもある。そしてその一番奥には、煌びやかな宝箱がポツンと一つ置いてあった。
「怪しいな……怪しすぎる、どこからどう見ても……」
ティシリィの言葉に、俺たちは無言で頷いた。これは何かしらの罠だと、皆が思っているのだろう。進んで宝箱の元へ行く者はいなかった。
「——分かったよ、俺が見てくる。意外だなあ、ティシリィはこういうの好きそうなのに」
俺はそう言って宝箱の元へと進み出した。そして、空洞の中央を過ぎた当たりだろうか、地面から鉄格子が突き出してきた。
「きゃあっ!」
そう叫んだサーシャたちは入口側、俺だけが宝箱側と、空洞の中で二手に分けられてしまった。
すると、嫌な予感通り、俺がいる方にだけモンスターが現れた。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
2度追放された転生元貴族 〜スキル《大喰らい》で美少女たちと幸せなスローライフを目指します〜
フユリカス
ファンタジー
「お前を追放する――」
貴族に転生したアルゼ・グラントは、実家のグラント家からも冒険者パーティーからも追放されてしまった。
それはアルゼの持つ《特殊スキル:大喰らい》というスキルが発動せず、無能という烙印を押されてしまったからだった。
しかし、実は《大喰らい》には『食べた魔物のスキルと経験値を獲得できる』という、とんでもない力を秘めていたのだった。
《大喰らい》からは《派生スキル:追い剥ぎ》も生まれ、スキルを奪う対象は魔物だけでなく人にまで広がり、アルゼは圧倒的な力をつけていく。
アルゼは奴隷商で出会った『メル』という少女と、スキルを駆使しながら最強へと成り上がっていくのだった。
スローライフという夢を目指して――。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる