知らないとは言わせません

ルー

文字の大きさ
上 下
4 / 5

番外編 とある男爵令嬢の末路

しおりを挟む
「リリアナ、また寝坊?」

起床の鐘がなってから30分後に食堂に現れたリリアナに同期のシエナが眉をひそめた。

「悪い?」

「いや、普通に寝坊はだめでしょ。訓練もサボり気味なのに。こんなこと聖王陛下にバレたら大変なことになるよ。だってあんた聖王陛下直々に入れられたんでしょ?」

シエナはご飯を掻き込むと席を立った。

「まぁ私は知らないけど。同期のみんなはもう先輩とペア組めるまでに成長してるけどあんただけだからねいつまでたっても先輩とペア組めてないの。ま、先輩に嫌われてるっていうのも理由の1つかもね。」

「どういうこと?嫌われてるってなに?」

「知らないの?あんた母国で聖女を騙ったんだってね。聖女様に対して失礼だと思わないの?」

「別に。」

シエナは目を見開いた後何も言わずにその場を去った。

「なんなの?」

リリアナは文句を言いながら食器を片付け、庭に向かった。

「あー、マジ怠い。なんで授業なんて受けなくちゃいけないの。治癒なんかしたくないっつてんだろ!」

リリアナはいつもは誰もいないため、今日もそうだと思い大声をあげた。

「ほんとむかつく。」

ため息をついたリリアナの後ろに誰かが立つ気配がした。

「だ、誰!?」

リリアナが振り向くとそこには聖女アメリアが立っていた。

「お久しぶりです、リリアナさん。この時間帯は授業の時間だと思うのですがどうされたのですか?もしかしてサボりですか?」

アメリアの後ろには聖騎士が2人立って、リリアナに厳しい目を向けている。

「さ、サボりに決まってるじゃないですか!!」

言った後自分の口をおさえたリリアナにアメリアは納得したように言った。

「そうなんですね!確かにサボりたいときはありますよね。」

「聖女様、その女はほとんどの授業をサボっています。すでに聖王陛下に報告済みでございます。」

聖騎士の言葉にアメリアは驚く。

「ええっ!?そ、そんなこと・・・。」

「聖女様、こちらにいらしたのですね。」

廊下の向こうから現われたのは聖王。

「あ、やばっ。」

小さくつぶやいたリリアナは全力で逃げようとしたが聖騎士に拘束されてしまい未遂に終わった。

「聖女様は先にお行きください。少々こちらの令嬢に用がありまして。お灸をすえなければならないようで。」

「わかりました。先に行っていますね。」

アメリアは聖騎士を連れて去っていった。

「彼女をアヴィランの屋敷に。」

「かしこまりました。」

聖騎士に拘束されたまま馬車に放り込まれ、走り出した馬車の中でリリアナは悪態をついていた。

「なんなのよ、本当に!!」

そしてついたのは恐ろしく豪勢な屋敷。待ち構えていたのは顔立ちが整った若い男性。

「初めまして、ご令嬢。私はアヴィラン・ヨーク。あなたにお灸をすえるよう聖王陛下より頼まれましてね。君たち。」

アヴィランの後ろから屈強な男たちが現れ、リリアナを拘束し引きづって行った。リリアナが解放されたのは屋敷の
地下牢だった。

「な、なによここ。」

「あなたにはここで魔力が尽きるまで治癒魔法を使っていただきます。ここに来る彼らの傷を治してください。死ぬまで、一生。では頼みましたよ。」

リリアナは地下牢に放り込まれ、鍵がかけられた。そして次々と現れる男たちの傷を治していった。リリアナの魔力量は多くなく10人治せたら良い方だ。しかし1日に来る男の数は50人。魔力が足りなくなっても治さなければ暴力を振るわれるのでリリアナは魔力を絞り出して必死に治癒していた。しかし枯渇した魔力の代わりに引き出されるのは寿命だ。何回も寿命を犠牲にし続けたリリアナはたった半年で命を落とした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームのヒロインが純潔を重んじる聖女とか終わってません?

ララ
恋愛
私は侯爵令嬢のフレイヤ。 前世の記憶を持っている。 その記憶によるとどうやら私の生きるこの世界は乙女ゲームの世界らしい。 乙女ゲームのヒロインは聖女でさまざまな困難を乗り越えながら攻略対象と絆を深め愛し合っていくらしい。 最後には大勢から祝福を受けて結婚するハッピーエンドが待っている。 子宝にも恵まれて平民出身のヒロインが王子と身分差の恋に落ち、その恋がみのるシンデレラストーリーだ。 そして私はそんな2人を邪魔する悪役令嬢。 途中でヒロインに嫉妬に狂い危害を加えようとした罪により断罪される。 今日は断罪の日。 けれど私はヒロインに危害を加えようとしたことなんてない。 それなのに断罪は始まった。 まあそれは別にいいとして‥‥。 現実を見ましょう? 聖女たる資格は純潔無垢。 つまり恋愛はもちろん結婚なんてできないのよ? むしろそんなことしたら資格は失われる。 ただの容姿のいい平民になるのよ? 誰も気づいていないみたいだけど‥‥。 うん、よく考えたらこの乙女ゲームの設定終わってません??

聖女に巻き込まれた、愛されなかった彼女の話

下菊みこと
恋愛
転生聖女に嵌められた現地主人公が幸せになるだけ。 主人公は誰にも愛されなかった。そんな彼女が幸せになるためには過去彼女を愛さなかった人々への制裁が必要なのである。 小説家になろう様でも投稿しています。

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

ブラックな職場で働いていた聖女は超高待遇を提示してきた隣国に引き抜かれます

京月
恋愛
残業など当たり前のお祈り いつも高圧的でうざい前聖女 少ない給料 もう我慢が出来ない そう思ってた私の前に現れた隣国の使者 え!残業お祈りしなくていいの!? 嘘!上司がいないの!? マジ!そんなに給料もらえるの!? 私今からこの国捨ててそっちに引き抜かれます

駒として無能なお前は追放する?ええ、どうぞ?けど、聖女の私が一番権力を持っているんですが?

水垣するめ
恋愛
主人公エミリー・ヘミングスは男爵家の令嬢として生まれた。 しかし、父のトーマスから聖女として働くことを強制される。 聖女という地位には大きな権力と名声、そして金が入ってくるからだ。 エミリーは朝から晩まで働かされ、屋敷からも隔離され汚い小屋で暮すことを強要される。 一度駒として働くことが嫌になってトーマスに「聖女をやめたいです……」と言ったが、「駒が口答えするなっ!」と気絶しそうになるぐらいまで殴られた。 次に逆らえば家から追放するとまでいわれた。 それからエミリーは聖女をやめることも出来ずに日々を過ごしてきた。 しかしエミリーは諦めなかった。 強制的に働かされてきた聖女の権力を使い、毒親へと反撃することを決意する。

【完結】逆行した聖女

ウミ
恋愛
 1度目の生で、取り巻き達の罪まで着せられ処刑された公爵令嬢が、逆行してやり直す。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書いた作品で、色々矛盾があります。どうか寛大な心でお読みいただけるととても嬉しいですm(_ _)m

わ、私がやりました

mios
恋愛
悪役令嬢の断罪中申し訳ありません。 それ、やったの私です。 聖女様を池に落としたり、階段から突き落としたフリをしたり、虐められたフリをした聖女様の演出は、全て私がやりました。

誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗
恋愛
エルドー王国の聖女ミレイナは、予知夢で王国が龍に襲われるという事実を知った。 それを国の人々に伝えるものの、誰にも信じられず、それ所か虚言癖と避難されることになってしまう。 誰にも信じてもらえず、罵倒される。 そんな状況に疲弊した彼女は、国から出て行くことを決意した。 実はミレイナはエルドー王国で生まれ育ったという訳ではなかった。 彼女は、精霊の森という森で生まれ育ったのである。 故郷に戻った彼女は、兄弟のような関係の狼シャルピードと再会した。 彼はミレイナを快く受け入れてくれた。 こうして、彼女はシャルピードを含む森の獣達と平和に暮らすようになった。 そんな彼女の元に、ある時知らせが入ってくる。エルドー王国が、予知夢の通りに龍に襲われていると。 しかし、彼女は王国を助けようという気にはならなかった。 むしろ、散々忠告したのに、何も準備をしていなかった王国への失望が、強まるばかりだったのだ。

処理中です...