もう誰も愛さない

ルー

文字の大きさ
上 下
3 / 26

変わらない2人

しおりを挟む
アメリアが精神病院に入院してから2年後。いつものように洗濯物をたたんでいたアメリアのもとに受付係のアニーがやってきた。

「あの、アメリア。あなたのご家族が来てるんだけど。ええっとリリアさんとその恋人のカルスさんっていう人。」

アニーは一昨日精神病院に入院したばかりでアメリアの家族との確執について知らなかった。

「一応本人確認取れたから応接室に案内したよ。よろしくね。」

アニーは戻っていった。アメリアはうつむいた。たたむのを手伝っていたレイラが不安そうな表情になる。

「アメリアお姉ちゃん。大丈夫?」

「あ、うん。少し話してくるだけだから。レイラはたたみ終わったら遊んでいていいよ。」

アメリアの言葉にレイラはうなづいた。

「わかった。」

しかしアメリアが部屋を出て応接室に向かうとすぐに掃除係のカンナと厨房係のアンナに伝えに行った。



「お待たせしました。」

応接室に入ったアメリアの目にはにこにこと笑っているリリアとカルスがいた。幸せそうに笑っている2人を見てアメリアの胸が痛んだ。

「もう、お姉ちゃんったら遅いんだから。」

「それで何の用でここに?」

とっとと用件を言えとアメリアは急かす。

「そう急がないで。えっとね、私とカルス、結婚することになったの!」

「・・・だから?」

アメリアの思ったことは至極当然のこと。あんなに最低なことばかり言って、アメリアのことを傷つけた2人の結婚がなんだというのか。

「えー、祝福してほしくて!結婚式への招待状がこれね。あと、お祝い金。ちょうだい?」

「は?」

リリアの言葉にアメリアは固まった。そしてリリアは変わってないんだと気づいた。

「アメリア、確か貯金あったよね。それ全額くれるくらいでいいから。手帳ちょうだい。あとパスワード。」

リリアの要求にさすがのアメリアも我慢の限界だった。

「私からカルス奪っておいて次は金をよこせと?無理だから。あなたたちの結婚式に行く気もないし、お祝いする気もない。だから私はお祝い金払わなくてもいいよね?」

「ひ、酷い!実の妹でしょ!お祝いしてよ。」

リリアが泣き出し、カルスがリリアを抱きしめアメリアを睨みつけた。

「お前、それでも実の姉なのか!?」

「さっきから聞いてれば酷いってあんたたちの方でしょ?」

突然声が割り込んできた。部屋の入り口に立っていたのはカンナとアンナ。その後ろには一緒に住む仲間たちの姿があった。

「は?」

リリアとカルスは彼女たちを見る。

「実の姉の恋人寝取って家族そろって責め立てて精神病院に無理やり入院させて。挙句の果てにはお金まで奪おうとするだなんて人間のクズだわ。」

「こんな性格も顔も可愛いアメリアの妹だからどれだけ可愛いのかと思ったけどこれのどこがこの男は良かったのかな?顔も全然可愛くないし性格も醜いしー。全部においてやばい。」

すかさずカンナとアンナが言う。

「なっ!?わ、私は可愛いもん!ね、カルス?」

リリアは顔を引きつらせる。そして咄嗟にカルスに尋ねた。

「うん、リリアは世界一可愛いよ。」

「あんたにとってその子の顔が可愛くても性格は最悪だからねぇー。そんな子と結婚だなんて正気の沙汰じゃないわよ。いつか浮気されるって。」

「そもそもその子が産んだ子供って本当にあんたの子供なの?姉の恋人寝取る時点で他の男とも寝てるでしょ、確実に。それじゃあ、誰の子かもわかったもんじゃないでしょ。」

そんな2人の攻撃にリリアは泣きそうな表情になるがカルスはどこか不安そうな表情になった。

「リリア、本当にテッドは僕との子供なんだよね?他の男と寝てなんかないよね?」

「ね、寝てるわけないでしょ。私はカルス一筋よ。」

リリアは必死に訴える。

「そうだよね。びっくりしちゃった。」

カルスがほっとしたように言った。

「どんだけその女のこと信じてんのよ。馬鹿じゃないの?」

アンナが鼻で笑った。

「そういえば僕の家、アメリアの家と近いんだけど。そこの女、あんた以外の男と腕組んで歩いてたよ。」

レイが爆弾発言をし、カルスは硬直し、リリアの顔が引きつった。

「な、なんのこと!?」

「リリア、どういうこと!?」

カルスがリリアに詰め寄る。

「喧嘩ならよそでやってちょうだい。アヴィーナ、お客様がお帰りよ。」

カンナが受付係のアヴィーナに言う。

「オッケー。お2人とも本日は面会ありがとうございました。また1か月後に面会可能です。」

そう言ってアヴィーナは2人を精神病院から叩き出した。ほっと一息ついたアメリアにアニーが謝った。

「アメリア、ごめんなさい!私、アメリアのこと何も知らなくて勝手に通しちゃった。」

「大丈夫。みんなが来てくれたからこうして撃退できたの。」

アメリアがほほ笑む。

「レイラが呼びに来てくれたの。アメリアが危ないって。」

カンナがレイラの背中を押して前に出す。

「勝手に呼びに行ってごめんなさい。」

レイラが上目遣いで言う。

「ううん、逆に呼びに行ってくれてありがとう。おかげで助かった。私ひとりじゃ負けてたから。」

アメリアがレイラを抱きしめた。

「皆、私ここを去ろうと思うの。いつまたあの子がここに来るのかもわからない。またみんなに迷惑をかけるわけにはいかないから。」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】今更そんな事を言われましても…

山葵
恋愛
「お願いだよ。婚約解消は無かった事にしてくれ!」 そんな事を言われましても、もう手続きは終わっていますし、私は貴方に未練など有りません。 寧ろ清々しておりますので、婚約解消の撤回は認められませんわ。

もう無理だ…婚約を解消して欲しい

山葵
恋愛
「アリアナ、すまない。私にはもう無理だ…。婚約を解消して欲しい」 突然のランセル様の呼び出しに、急いで訪ねてみれば、謝りの言葉からの婚約解消!?

【完結】婚約者の誕生日パーティーで婚約破棄されました~2ヶ月早く産まれただけでババアと言う人なんて私だって御断りです~

山葵
恋愛
プライム伯爵令嬢のカレンには婚約者がいた。 ラングラン侯爵家の嫡男ガイラルト様だ。 ガイラルト様は、私との婚約に不服だった。 私の方が1学年上なのと、顔が好みではないらしい。 私だって、そんな不満を顔に出してくる婚約者なんて嫌だ。 相手が侯爵家でなければ、お父様に頼んで縁談を断って貰っていた。 そんな彼が誕生日パーティーで婚約破棄すると言ってきた。 勿論、大歓迎だ!!

【完結】私の婚約者は、親友の婚約者に恋してる。

山葵
恋愛
私の婚約者のグリード様には好きな人がいる。 その方は、グリード様の親友、ギルス様の婚約者のナリーシャ様。 2人を見詰め辛そうな顔をするグリード様を私は見ていた。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

【完結】ドレスと一緒にそちらの方も差し上げましょう♪

山葵
恋愛
今日も私の屋敷に来たと思えば、衣装室に籠もって「これは君には幼すぎるね。」「こっちは、君には地味だ。」と私のドレスを物色している婚約者。 「こんなものかな?じゃあこれらは僕が処分しておくから!それじゃあ僕は忙しいから失礼する。」 人の屋敷に来て婚約者の私とお茶を飲む事なくドレスを持ち帰る婚約者ってどうなの!?

【完結】彼の心は姉の物

山葵
恋愛
姉が馬車の事故で亡くなった。 突然の出来事に家族も婚約者も受け入れる事が出来ない。 それでも月日は流れていく。 ただ1人の者を除いて…。

【完結】もうすぐ春が来るようです~あの人達の頭の中は一足先にお花畑で蝶々が飛んでいる様ですね〜

山葵
恋愛
今、私は学園内で噂の的になっていた。 どうやら私の婚約者であるベンジャミン様が編入生の男爵令嬢と急接近しているというのだ。 2人の仲を知る人は、私に婚約破棄を言い渡す日も近いのでは…と言ったと聞く。 その噂が本当なら…あぁ私は……なぁーんてハッピーなの♪

処理中です...