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第六章 ふたりで奏でる最高の舞台
甘美な歌声──『愛のあいさつ』【3】
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ここに来て、初めて泰造の顔に笑みが浮かんだ。
「……この議題を受けて、一族がどう動くかも、君なら読んでいるね? そして、私がいま、何を考えているかも」
「えぇ、もちろん」
不敵な微笑みに、泰造は言葉を重ねる。
「君は以前、政治家になる気はないと言っていたね? 自分には、向いてないと」
「いまも、そう思っております」
「では、事業の方ということになるね。猫山は、あまりその方面に向かない者が多いんだが、何か手は考えているのかね?」
「詳細はのちほど書面にしますが───未優を、広告塔に使います」
泰造は眉を上げた。
廃嫡し、一族から追いだしておきながら、利用するというのか。
「彼女は、今は『禁忌』という陽のあたらない“地位”にいますが、いずれ……近い将来、『女王』になることでしょう。
その時、『山猫族』の“純血種”であることを《売り》に、事業の宣伝広告に《協力》してもらいます」
「……なるほど《君らしい》ね」
相づちをうって、泰造は立ち上がる。
未優の「夢」を守り、一族の未来を見据え、自分の「望み」を手に入れたこの青年を《養子に迎える》ことに、迷いはなかった。
「君に計算違いなど、なさそうだね」
面白そうに問う泰造に、慧一は苦笑いを浮かべた。
「いいえ、ひとつだけ。……私は彼女を《女性として》は、見られなかった。
最後まで、《可愛い妹》でしかなくて……甘やかしてしまったようで、すみません」
泰造は失笑をもらした。
「……結果オーライということでよしとしようじゃないか。できの悪い娘に、よろしく伝えてくれ」
「───はい。本日はご鑑賞いただき、ありがとうございました」
片手を上げて立ち去る泰造を、慧一は頭を下げて見送った。
「……この議題を受けて、一族がどう動くかも、君なら読んでいるね? そして、私がいま、何を考えているかも」
「えぇ、もちろん」
不敵な微笑みに、泰造は言葉を重ねる。
「君は以前、政治家になる気はないと言っていたね? 自分には、向いてないと」
「いまも、そう思っております」
「では、事業の方ということになるね。猫山は、あまりその方面に向かない者が多いんだが、何か手は考えているのかね?」
「詳細はのちほど書面にしますが───未優を、広告塔に使います」
泰造は眉を上げた。
廃嫡し、一族から追いだしておきながら、利用するというのか。
「彼女は、今は『禁忌』という陽のあたらない“地位”にいますが、いずれ……近い将来、『女王』になることでしょう。
その時、『山猫族』の“純血種”であることを《売り》に、事業の宣伝広告に《協力》してもらいます」
「……なるほど《君らしい》ね」
相づちをうって、泰造は立ち上がる。
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「君に計算違いなど、なさそうだね」
面白そうに問う泰造に、慧一は苦笑いを浮かべた。
「いいえ、ひとつだけ。……私は彼女を《女性として》は、見られなかった。
最後まで、《可愛い妹》でしかなくて……甘やかしてしまったようで、すみません」
泰造は失笑をもらした。
「……結果オーライということでよしとしようじゃないか。できの悪い娘に、よろしく伝えてくれ」
「───はい。本日はご鑑賞いただき、ありがとうございました」
片手を上げて立ち去る泰造を、慧一は頭を下げて見送った。
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