上 下
6 / 16
❖グレイな隣人❖

異種接近遭遇 Part.6『恋人』

しおりを挟む
最後に、と、初めてジンが私をまともに見て言った。

「今後の対策ため訊いておきたいのだが。君は、どうやって彼の正体を知った?」
「えっと……」

いや、実はいまもよく解ってません、と、私が答えるよりも前に、ライがあっけらかんと口を挟んだ。

「秋良さんは、ものすっごく勘が鋭い人なんですよー」
「勘……今の段階では参考にならないが、まぁいずれデータ収集で解明されるだろう。ではな」

言うなり、突如として現れた男は、突如として消えた。

……いったい、なんだったの……。

脱力感に見舞われ、大きく溜息をついたあと、ライを見た。

「とりあえず、説明してくれる?」
「秋良さん怒ってる……?」
「まぁ、人並みに」

そう、私は怒ってた。
この際だから、ライが異国人だろうが宇宙人だろうが、どうでも良かった。

問題は、なんの説明もなしに、私の意思を挟む余地なくいろいろ起こって同意させられたことだ。

「さっきのは『異星人間における親善友好及び交遊交接に際する調査協力についての契約』の同意書」
「……平たくいうと?」

ライの早口に耳が追いつかず、じろりとにらみ据えてうながせば、なぜか両手をぎゅっとにぎられた。

「僕と、恋人になるってこと!」
「は!?」

「撤回はお勧めしませんよ? 殺処分になりますし」

いや、笑顔で言うことじゃないし。

「恋人って、故郷の星とかに居ないの?」
「まぁ、飽きてた所に地球への赴任話があったので」

……昭和の大人気歌謡曲デュエットかよ。

じゃあ私にもすぐ飽きるんじゃない? と、問う前に否定をされた。

「あ、でも秋良さんとは趣味が合うし。結構長く続くと思います」

何を根拠にそんな、と内心あきれていると、急に真剣な眼差しでライが言った。

「僕はこの約一ヶ月の間、楽しかったけど。秋良さんは、違いました?」
「違……わないけど」
「良かった! じゃ、これからは遠慮なく仲良くできますね。あ、片言で話す僕のほうが好きですか?」
「え? 中身一緒なら別にどっちでも……」
「実はアレ、相手の油断誘うにはいいけど、僕個人としてはまどろっこしいと思ってたので」

まさかのあざと理由……。
あれ? ちょっと待って。

「遠慮って……遠慮してたの?」
「はい。対象者に同意もらえないと、禁止事項に抵触して、良くて強制送還、悪くて殺処分なので」

あっさりと言いきったライが、私の指先にくちづけて、艶っぽく笑う。

「さてと、秋良さん。このままの僕と楽しみます? それとも先に、ファスナー下ろします?」

──欲望か、好奇心か。異国人か、宇宙人か。

どちらせよ、私に断る選択肢はなかった。



       ──END──

※次ページ、『グレイな恋人』に続きます。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】ショタが無表情オートマタに結婚強要逆レイプされてお婿さんになっちゃう話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました

中七七三
恋愛
わたしっておかしいの? 小さいころからエッチなことが大好きだった。 そして、小学校のときに起こしてしまった事件。 「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」 その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。 エッチじゃいけないの? でも、エッチは大好きなのに。 それでも…… わたしは、男の人と付き合えない―― だって、男の人がドン引きするぐらい エッチだったから。 嫌われるのが怖いから。

Perfect Beat!

aika
BL
メジャーデビューが決まったバンド、over。 ボーカルの陸は、ピアノの演奏を聴いて初めて感動の涙を流す。 そのピアノを奏でるのは、天才ピアニスト、作曲家の美雨音 三幸。 陸のバンドのプロデューサーだった。 美しいピアノを奏でる魅惑の男、三幸はとんでもなく口が悪い暴君で、陸のことをやかましい犬呼ばわりし相手にしない。 自分の歌がダメだと貶された陸は、三幸に特別レッスンをしてもらうことになり彼の部屋に居候することに。 暴君とワンコのはちゃめちゃな共同生活が始まった。 バンド仲間との絆を深め成長していく陸の、葛藤と成長、そして初めての恋を綴った物語。 R-18/R18/性描写あり/エロ/エッチ/BL/幼なじみ/恋愛/純愛/NTR/浮気/複数/イケメン/美少年/上司/部下/先輩/後輩/羞恥プレイ/同僚/童顔/同棲/バンド/元彼/元カレ/未練/新彼/彼氏/執着/年下/年上/同級生/略奪/タレ目/片思い/禁断/ワンコ/俺様/プロデューサー/ピアニスト/ギタリスト/可愛い系男子/

【R18】溺愛される公爵令嬢は鈍すぎて王子の腹黒に気づかない

かぐや
恋愛
公爵令嬢シャルロットは、まだデビューしていないにも関わらず社交界で噂になる程美しいと評判の娘であった。それは子供の頃からで、本人にはその自覚は全く無いうえ、純真過ぎて幾度も簡単に拐われかけていた。幼少期からの婚約者である幼なじみのマリウス王子を始め、周りの者が シャルロットを護る為いろいろと奮闘する。そんなお話になる予定です。溺愛系えろラブコメです。 女性が少なく子を増やす為、性に寛容で一妻多夫など婚姻の形は多様。女性大事の世界で、体も中身もかなり早熟の為13歳でも16.7歳くらいの感じで、主人公以外の女子がイケイケです。全くもってえっちでけしからん世界です。 設定ゆるいです。 出来るだけ深く考えず気軽〜に読んで頂けたら助かります。コメディなんです。 ちょいR18には※を付けます。 本番R18には☆つけます。 ※直接的な表現や、ちょこっとお下品な時もあります。あとガッツリ近親相姦や、複数プレイがあります。この世界では家族でも親以外は結婚も何でもありなのです。ツッコミ禁止でお願いします。 苦手な方はお戻りください。 基本、溺愛えろコメディなので主人公が辛い事はしません。

転生皇太子は、虐待され生命力を奪われた聖女を救い溺愛する。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

悪役令嬢の選んだ末路〜嫌われ妻は愛する夫に復讐を果たします〜

ノルジャン
恋愛
モアーナは夫のオセローに嫌われていた。夫には白い結婚を続け、お互いに愛人をつくろうと言われたのだった。それでも彼女はオセローを愛していた。だが自尊心の強いモアーナはやはり結婚生活に耐えられず、愛してくれない夫に復讐を果たす。その復讐とは……? ※残酷な描写あり ⭐︎6話からマリー、9話目からオセロー視点で完結。 ムーンライトノベルズ からの転載です。

快楽のエチュード〜父娘〜

狭山雪菜
恋愛
眞下未映子は、実家で暮らす社会人だ。週に一度、ストレスがピークになると、夜中にヘッドフォンをつけて、AV鑑賞をしていたが、ある時誰かに見られているのに気がついてしまい…… 父娘の禁断の関係を描いてますので、苦手な方はご注意ください。 月に一度の更新頻度です。基本的にはエッチしかしてないです。 こちらの作品は、「小説家になろう」でも掲載しております。

ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?

望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。 ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。 転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを―― そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。 その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。 ――そして、セイフィーラは見てしまった。 目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を―― ※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。 ※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)

処理中です...