刹那よ、永遠に

交差

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「えー、先程顧問の道上みちうえ先生もおっしゃられてましたが、1週間後に本番の県高校総体が始まります。明日以降は調整期間に入るので各自、自分の身体と相談してもらいながら調整してください。各個人の調整方法に口を出すつもりはありませんが、最後だからといって詰め込み怪我などを起こさないように充分注意してください。じゃあ今日も練習お疲れ様でした！」



「「「お疲れ様でした！！！」」」


宮原が、部長らしく部活の最後を締めくくり、部員がそれに続き挨拶を口にした。




「隼人っお疲れー」


同じ陸上部員であり、子供の頃からの幼なじみでもある春野颯希はるのさつきが声をかけてきた。


「おう、お疲れ」


「ねぇ、今日一緒に帰らない？」


「分かった。じゃあ着替え終わったら正門前集合で」




部室に戻った秋風は着替えている最中、少し考え事をしていた。


4月も終わりもうすぐ5月。5月は最初にGWがあるがそこの最終日に毎回宮城県高校総体の地区予選が行われる。

この地区予選を勝ち上がらなければ本戦の県高校総体で走ることは出来ない。

だが、県高校総体の出場を目指す人が全員予選を走るわけではない。

各種目、同じ学校から出場出来る人数は最大3人までと決まっている。
野球やサッカーの試合に出られる人数が決まっているように、陸上にも当然、本番に走る事が出来る人数が決まっている。


また、昨年の秋に行われた宮城県高校新人選手権、通称新人戦で上位の成績を収めた選手は来年の県高校総体の地区予選を免除される。上位6位までの選手である。決勝は8人で走るから、その中でも最低2人に勝たないと地区予選免除を勝ち取ることは出来ない。地区予選免除は狭き門なのである。


そして、地区予選を免除されても県総体に出場するためには、地区予選を走る必要がある。そのため、地区予選は出場して走るが、結果に関係なく県大会に進むことができるため、調整の場として利用する選手が一定層いる。


すなわち、無条件で県高校総体本戦に進めることとなる。
所謂シードというものだろう。


秋風は昨年の新人戦、予選を順調に突破し臨んだ準決勝で得意のスタートを失敗してしまい敗退。
シード権を逃すこととなった。


やはり、中学と高校の違いというものがあったのかもしれない。
潜在的にプレッシャーを感じていたのだろう。


しかし、秋風はその経験を糧とし、成長した。


満足のいく冬を乗り越え、1週間後に地区予選を迎える。


陸上は他の部活より少しだけ早く大会スタートする。


まるで、スターターピストルが鳴らされた瞬間誰よりも早く反応する秋風のように。