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就活成功させて亡命しよう!
望まぬ来訪客
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無論、悪天候などの理由による例外はあるものの、概ねほぼ連日満員御礼で、経営状況はと言えば、順風満帆――勿論こちらも目を凝らせば細々した問題……例えばモンスタークレーマー客の応対とか、従業員と客双方の些細な粗相の後始末等はあれど、概ね順調。
利用客の評判も上々で、満足してお帰りになられたお客様ご自身がリピーターになるだけでなく、その自慢話を効いた方も新規顧客としてやって来てくれている。
口コミ効果は絶大。
しかも半年程立った頃から噂は国内に留まらず各国を回り、興味を持たれた方が観光がてらお立ち寄りになるケースも増えてきた。
それも、語学や他国の文化や風習に詳しい従業員を新たに雇い入れたくらいには人数がいて。
それはネズミ算式に増え、私達は嬉しい悲鳴を挙げていたところ。
遂に私達はオープン後最大の危機を迎える事となった。
「まぁ、いつかは、とは思っていたわ。そう『いつか』は直接引導を渡す時が来ると。
お手紙はあれからも度々来ていたけれど、一応内容確認だけして燃やしていたから以前のように山になる事はなかったけれど。
それに最近では他国のお客様もだいぶ増えて、でも祖国から来る方は皆無で……。
まぁ、あの国で外国に出られる財力のある者は限られていますし、その限られた方々の大半はフライハイト王国嫌いですから、トウセと言えば当然ですけれど。
なればこそ、こうまで早くにこの知らせが来るとは思っていませんでしたの」
そう、それは私達に度々送りつけられてきた講義や恨み言が綴られた面倒なお手紙としてではなく、フライハイト王国がセイントランド聖国の聖都に置く大使館から正式な外交ルートを使っての要求。
国から国へのお願いを、亡命した結果フライハイト王国ではいち市民となった私達の一存で跳ね除けられる訳もなく。
また国としても余計な火種を作りたい訳でもないので、特にこれといった理由もなく、ただの民間の商業施設と言う国家機密でも何でもない場所への視察依頼をいちいち却下はしない。
しかも相手はしょっちゅうイチャモンをつけては開戦を望むチンピラみたいな国。
絡まれる原因を自ら差し出したくはないだろう。
それでも、この国のお役人様は「苦労をかける」と支度金まで用意してくださり、いざと言う時の為、身分と武力で抑える事の出来る近衛を同伴させるため、王弟殿下であらせられるハンネス=バウマン公爵を案内役として派遣してくださるという。
「本当にありがたい事だわ……」
それだけして貰っているのだから、私達も怯えて尻尾を巻いている時じゃないでしょ?
だから、その客が来る日は申し訳ないけど施設は臨時休業とし、彼らの貸し切りとした。
……居住区に入居し生活していらっしゃる方々には事情を説明し、基本ルームサービスで対応する旨をご承知していただいている。
「……正直、祖国がこんなで私恥ずかしくてたまらなかったわ……」
「私も。恥ずかしいより情けない気持ちの方が強かったが、祖国を誇れないと言う意味では同じ事だな」
そう、そのお呼びでないお客様とは……
「婚約破棄だ!」
「お前など国外追放してやる!」
「泣いて土下座でもすれば妾くらいにはしてやっても良いぞ!」
そう、お馬鹿三人組もその保護者たち……なんだけど。
あれぇ、ここまでお馬鹿さんだったかなぁ?
利用客の評判も上々で、満足してお帰りになられたお客様ご自身がリピーターになるだけでなく、その自慢話を効いた方も新規顧客としてやって来てくれている。
口コミ効果は絶大。
しかも半年程立った頃から噂は国内に留まらず各国を回り、興味を持たれた方が観光がてらお立ち寄りになるケースも増えてきた。
それも、語学や他国の文化や風習に詳しい従業員を新たに雇い入れたくらいには人数がいて。
それはネズミ算式に増え、私達は嬉しい悲鳴を挙げていたところ。
遂に私達はオープン後最大の危機を迎える事となった。
「まぁ、いつかは、とは思っていたわ。そう『いつか』は直接引導を渡す時が来ると。
お手紙はあれからも度々来ていたけれど、一応内容確認だけして燃やしていたから以前のように山になる事はなかったけれど。
それに最近では他国のお客様もだいぶ増えて、でも祖国から来る方は皆無で……。
まぁ、あの国で外国に出られる財力のある者は限られていますし、その限られた方々の大半はフライハイト王国嫌いですから、トウセと言えば当然ですけれど。
なればこそ、こうまで早くにこの知らせが来るとは思っていませんでしたの」
そう、それは私達に度々送りつけられてきた講義や恨み言が綴られた面倒なお手紙としてではなく、フライハイト王国がセイントランド聖国の聖都に置く大使館から正式な外交ルートを使っての要求。
国から国へのお願いを、亡命した結果フライハイト王国ではいち市民となった私達の一存で跳ね除けられる訳もなく。
また国としても余計な火種を作りたい訳でもないので、特にこれといった理由もなく、ただの民間の商業施設と言う国家機密でも何でもない場所への視察依頼をいちいち却下はしない。
しかも相手はしょっちゅうイチャモンをつけては開戦を望むチンピラみたいな国。
絡まれる原因を自ら差し出したくはないだろう。
それでも、この国のお役人様は「苦労をかける」と支度金まで用意してくださり、いざと言う時の為、身分と武力で抑える事の出来る近衛を同伴させるため、王弟殿下であらせられるハンネス=バウマン公爵を案内役として派遣してくださるという。
「本当にありがたい事だわ……」
それだけして貰っているのだから、私達も怯えて尻尾を巻いている時じゃないでしょ?
だから、その客が来る日は申し訳ないけど施設は臨時休業とし、彼らの貸し切りとした。
……居住区に入居し生活していらっしゃる方々には事情を説明し、基本ルームサービスで対応する旨をご承知していただいている。
「……正直、祖国がこんなで私恥ずかしくてたまらなかったわ……」
「私も。恥ずかしいより情けない気持ちの方が強かったが、祖国を誇れないと言う意味では同じ事だな」
そう、そのお呼びでないお客様とは……
「婚約破棄だ!」
「お前など国外追放してやる!」
「泣いて土下座でもすれば妾くらいにはしてやっても良いぞ!」
そう、お馬鹿三人組もその保護者たち……なんだけど。
あれぇ、ここまでお馬鹿さんだったかなぁ?
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