上 下
104 / 114
就活成功させて亡命しよう!

自立に向けて

しおりを挟む
 私的には色々あった長期休暇も終わり、私達の学年はいよいよ卒業を見据え、その後の人生プランを真剣に考え、それを実現する為の努力に勤しむ。
 そんな今日この頃。

 「……大会、惜しかったですね」

 「ああ。私も三年間努力はしたが、ダンス歴はまだ浅い。優勝者は幼少時よりダンスを嗜んでいたそうだ。
 とあれば、学業の片手間に嗜んだだけの私が負けるのも当然だ。
 もしもこれが、幼少時より嗜んだ剣で、三年ぽっち何かの片手間に習っただけの同世代に負けたら、私は悔しくてたまらなかっただろう。
 だから私はこの結果に満足しているし、むしろすっきりしたよ」

 部活動も一区切りつき、私達もそろそろ本格的に自分の身の振り方を決めて動き出さねばならない時期に来ていた。

 「ふふ、普段筆不精では済まないレベルで私信など送らない殿下から珍しくお手紙が送られてきましたの。
 ……まぁ、明らかにあの方の従者のどなたかが殿下の筆跡を真似て書いたものと分かる文章でしたけど。
 まぁ、要約すれば愚民の思想にどっぷり浸かってふやけた頭を教育し直してやるから有り難く思え、と。
 愚民はどちらか、教育のやり直しが必要なのは貴方の方では、と……他にも突っ込みどころ満載のお手紙でしたわ」

 ほほほ、と目が笑っていない微笑みを浮かべるジークリンデさん。

 「お陰で、どんな苦労が待っていようと、あの国には絶対に帰らないと決意を新たにする事が出来ましたから、その点では一応感謝しておりますわ」

 「それで、私達を集めたからには話がある程度まとまったのかしら?」

 そう、今日は悪役令嬢三人組とその元従者達のみならず、ライナーやヘレナといった友人達も一緒に集まってもらっている。

 そしてもう一人、ドリス女史も呼んで、街のとあるカフェの個室を一部屋貸し切っていた。

 「では、まずは私から。こちらがご依頼頂いた建築物の大まかな図面ですわ」

 大きな模造紙に描かれた、間取りの平面図と外観及び内観のイメージ画をそれぞれテーブルに広げる。

 学生がよくグループ学習等に使うカフェだけあって、中央の大きなテーブルの他に、座り心地の良い、しかしテーブルで本を読んだり筆記をするにも無理のない姿勢の取れるソファの脇に、蓋付きのコップに入った飲み物と、茶菓子の置かれた小机が別に備え付けられているから、それらを気にする必要もなく図面を広げられる。

 まず目を引くのは当然外観のイラスト。
 俯瞰図の角度で描かれたカラーイラストに皆の目が向いた。

 「建物が、一つでなく幾つも……。貴族の屋敷では主の住む邸宅の他に迎賓館や夜会を開くホールなどを併設している等珍しくもありませんが……、これはその比ではありませんね」

 「ああ。周囲の車停め等の部分を除いて見てもかなり広い。
 だがそれぞれの建物のデザインが統一され、調和している。
 見ている分には素晴らしい建物だが……」

 「内観も落ち着いていますが、こちらは種類が多いですわね。
 間取り図と見比べながら見た方がよさそうです」

 こうして間取り図と内観図に皆の興味が移っていく。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

悪役令嬢と転生ヒロイン

みおな
恋愛
「こ、これは・・・!」  鏡の中の自分の顔に、言葉をなくした。 そこに映っていたのは、青紫色の髪に瞳をした、年齢でいえば十三歳ほどの少女。  乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』に出てくるヒロイン、そのものの姿だった。  乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』は、平民の娘であるヒロインが、攻略対象である王太子や宰相の息子たちと交流を深め、彼らと結ばれるのを目指すという極々ありがちな乙女ゲームである。  ありふれた乙女ゲームは、キャラ画に人気が高まり、続編として小説やアニメとなった。  その小説版では、ヒロインは伯爵家の令嬢となり、攻略対象たちには婚約者が現れた。  この時点で、すでに乙女ゲームの枠を超えていると、ファンの間で騒然となった。  改めて、鏡の中の姿を見る。 どう見ても、ヒロインの見た目だ。アニメでもゲームでも見たから間違いない。  問題は、そこではない。 着ているのがどう見ても平民の服ではなく、ドレスだということ。  これはもしかして、小説版に転生?  

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ!〜

みおな
恋愛
 転生したら、乙女ゲームのモブ令嬢でした。って、どれだけラノベの世界なの?  だけど、ありがたいことに悪役令嬢でもヒロインでもなく、完全なモブ!!  これは離れたところから、乙女ゲームの展開を楽しもうと思っていたのに、どうして私が巻き込まれるの?  私ってモブですよね? さて、選択です。悪役令嬢ルート?ヒロインルート?

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

【完結済】監視される悪役令嬢、自滅するヒロイン

curosu
恋愛
【書きたい場面だけシリーズ】 タイトル通り

処理中です...