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就活成功させて亡命しよう!

事案です!

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 年頃の異性同士で同室での宿泊。

 ……幸い通された部屋に置かれた寝台はダブルベッド一台……ではなくシングルベッドが二台ある部屋ではあったけど。
 一応お手洗いも洗面もシャワールームも部屋に一つずつ付いてる部屋だから、着替えはそちらでするにしても、だ。
 ついさっきの列車の中での事を考えればそれは焼け石に水にしかならない。

 ニコニコしながら「ごゆっくり~」と去っていった従業員は、私達を恋人同士と思っているんだろうな……。

 しかし。
 物語のお約束だと、男のほうが「外で寝る……」とか言い出すところ。
 が、だ。
 治安面からも季節柄からも野宿が厳しい環境ではないのだけれど、治安の良い場所だからこそ一人街角の隅で休んでいればたちまち不審者として警邏隊に職質をかけられるだろう。
 つまり、まぁあまりそれは得策とは言えない、と。

 ここはもう、腹をくくるしかないだろう。

 私以上に呆然としているミヒャエルを横目に、私はさっさとカバンから着替えを取り出し、「先にシャワー使うよ」と、汗を流して着替えを済ませる。

 だって、基本列車の座席に座っていただけとはいえそこそこ疲れているんだもの。
 明日の事を思えば尚更に、とっとと眠りたい。

 ベッドに座り込み、一人「考える人」化しているミヒャエルの隣のベッドにダイブする。

 「シャワー空いたから、次どうぞ」
 「あ、ああ……」

 ゴソゴソと荷物を探り、おずおずとシャワールームへ向かうミヒャエルの足音が扉の閉まる音と共に部屋の向こうへ消える。
 その瞬間、浅かった吐息を一気に吐き出した。

 もう、寝る。眠れなくなる前にとっとと眠ってしまうに限るんだ。
 羊が一ぴーき、羊が二ひーき、羊が三びーき……
 羊が百ぴーき……
 羊が二百……三百…………

 ね、眠れない……!

 早く寝なければと気持ちが逸るばかりでちっとも意識が遠のいていかない。

 そうこうするうち、ガチャリと扉の開く音が聞こえてしまう。
 ああ……、間に合わなかった……

 と、とにかくこのまま狸寝入りを――

 「おぉう! 帰ったぞぉ~!」

 次の瞬間、バタンと乱暴に共用廊下と部屋を隔てる扉が蹴り上げられ、男の声が。
 そしてプンと広がるアルコール臭。

 「……あん? ネェちゃん……じゃねぇか、ボウズか? あれ、ジークはどこ行った? あ、そっちのベッドか? 先に寝るなんて付き合い悪いなぁ、部屋で飲み直すんじゃなかったのかよぉ」

 一人やけに大きな声で喋り散らかす――多分酔っ払いが部屋を間違えているんだろうけど……、鍵、かけてたはずなんだよね……。
 そっと伺い見れば、冒険者パーティーなら盾役タンクしてそうなスキンヘッドのガチムチマッチョ。
 これは……鍵は彼の腕力に屈したと見える。

 って、コラ布団剥がしに来るんじゃない!

 「おい、こら、酔っ払いが! 部屋間違えてるんだよ!」

 ミヒャエルも慌てて牽制してくれようとするも、その体格差たるや……

 「あっ、カシムさん! ここに居た!
 す、スンマセン、俺らの連れがご迷惑お掛けしまして……。
 ほら、カシムさん、ジークならあっちでカシムさんの酒を楽しみに待ってますから、行きますよ!」

 しかし、幸いにもすぐに男の仲間と思しきやっぱり体格の良い男たちが騒がしくやってきて、力づくで彼を引きずって行き――

 再び静かになった部屋にはミヒャエルと私が取り残され……

 「うわっ、み、ミヒャエル……! ちょ、ちょっと、ハウス! 今すぐシャワールームに引き返して!」

 男とちょっともみ合いになったらしいミヒャエルの着衣が乱れ――しかもシャワーを浴びた直後とあって、アメニティのバスローブを引っ掛けていたものだから、見えちゃイケナイモノが見えそうで……。

 「へ? あ! うわぁぁぁ!」

 彼もすぐにそれに気づいたようで、慌ててシャワールームへ引っ込んで言った。

 得、眠気? そんなもん跡形もなく吹っ飛びましたよ?
 畜生、あの野郎……、明日は酷い二日酔いに悩まされる様に呪ってやりたい……!
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