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私、ざまぁ系ヒロインに転生してしまったかも……!?

波乱の夜会の始まり

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 「はぁ……」
 「フィリーネ、気持ちは分かるけどそろそろ覚悟を決めなさい。
 そろそろ王宮に着くのよ」

 そう、嫌な事がある時程時間というのは何故か早々に過ぎ去る。
 あれからカレンダー通りの日にちが過ぎたはずなのに、「あれ、私の数日間は何処へ?」と言う気分だ。

 因みに義母は今朝早くに帰り、湯浴みと身支度のみ屋敷で済ませた義父と同じ馬車で王宮へ向かっている。

 トビアス様は、第二王子の側近候補として彼の側についており、王宮で落ち合う予定なのだという。

 「……まだデビュー前ですし、王太子様でも無いので日頃の王族教育の課題の他に特別やらなければならない事など無いはずなのですけどね……。
 まして今日のような夜会では社交こそが王族及び貴族の仕事。
 それに障る仕事など、天災や戦争などの非常事態でなければあるはずもありませんのに」

 例え本当に何か仕事があったとしても、それは夜会後にでも徹夜してでも片付けるべきなのに。
 パートナーのエスコートを放っぽり出すとは。

 やがて。
 前世の記憶持ちの私でも慄く豪奢な城の前、車寄せに馬車がスムーズに滑り込んで行く。

 「……フィリーネ、勘違いしている様ですけど。
 確かにここも王城の敷地の中ですが、実際に政務など行う王宮はこの奥の建物ですわよ?
 この美しい建物は本日の夜会の様な催しを行う為のホールですわ。
 侯爵家にもあるでしょう? 勿論規模が段違いですけれど」

 聞けば、他にも教会も王城支部や外国からの貴人をもてなす迎賓館や、政務を行う政務棟、騎士団棟と闘技場、それらを支える使用人の寮に後宮もあるらしい。

 広いと思っていた侯爵家のホールでさえニ、三は入りそうな、吹き抜け二階建てのホールの手前、玄関ホールには入場の順番を待ちつつ早速爵位の近い者同士と社交の前哨戦を始める者がひしめいているのが、招待状のチェックをする順番待ちの列の後ろからでも分かる。

 そして、その中で既に私は目立ちに目立っていた。

 「濃紫のドレスに差し色に赤と青。我らの色が似合っていて美しい!
 さすが我らのご主人!」
 「空気が乾燥していますね。
 お肌に良くありません、保湿の魔法を使いましょう」

 相変わらず私の世話を甲斐甲斐しく焼いてくれる、美男子の背にある翅の存在が、彼らが精霊族だと言外に示している。
 これが下位貴族の坊ちゃん方であれば嫌味の一つと言わず百と浴びせたかもしれない周囲の貴族たちも、遠巻きにするしかない。

 ……そう。ロジーネお義姉様を迎えに来たトビアス様と、それに引っ付いてきたブルーノ様と第二王子様以外は。
 そのパートナーのマルグリット様とジークリンデ様が必死に宥めていた様だが、馬耳東風とばかりに彼らは堂々とこちらへ近づき。

 開口一番。

 「おい! どういうことだ!」
 と、いきなり喧嘩腰に罵声をあげる。

 「この間は突然だったと目こぼししたが、今回はそもそも開催が当然の会だ。
 人トドキに続き、侯爵家はどうしても人族以外のパートナーを選びたいらしい!」

 「……フリードリヒ様、確かにこの夜会は毎年恒例、それはこの国の貴族として常識ですが。
 同時に、学園入学前のデビュー前の者については申請しなければ出席しないと見做す、これもまた常識のはず。
 そして当家ではフィリーネについては今年のデビューは見送り、申請は出していないにもかかわらず招待状が届きました。
 故に慌ててパートナーを探す事になりました。
 それも、前回のような練習の場ではなく、陛下も臨席される正式な夜会の場に耐えられるパートナーを。

 それが如何に無茶振りか、貴族の常識があるならご理解いただけますね?

 まして、今回フィリーネのエスコートを引き受けて下さったのは恐れ多くも火の大精霊、及び水の大精霊様。
 そして闇の精霊様と大妖精様もいらっしゃるのです。

 あまり滅多な事を口になさらない方が得策かと」

 それにピシャリと苦言を呈すロジーネお義姉様、とっても格好良いです!
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