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私、ざまぁ系ヒロインに転生してしまったかも……!?
義父の条件
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「はぁ、はぁ……。これだから女と言う生き物は頭が足りなくていかん。
議会からの――ひいては陛下からのお声掛りとは言えそんな物は建前でしかないのだ。
お前たちが頷くなどと考えているものは、この案の発案者であるあの逆賊の国の役人だけだ。
むしろ大半の者はお前達が首を横に振り、あの者が赤っ恥をかく姿が見たいだけなのだ。
――だから。分かるな?」
一通り喚き散らした義父は、蔑む目をこちらへ向けながらYESしか認めない問を投げかける。
だけど、ここでYESと言えば、少なくとも私は破滅フラグへ一歩また近付く事になってしまう。
ロジーネお義姉様とて、あのモラハラ婚約者との学園生活を余儀なくされる。
「いいえ。分かりません。
せっかく選べるようになった選択肢であり可能性です。
この機会を逃したくはありません」
「――私もですわ。
将来、宰相となられるトビアス様の妻としてサポートするのに、敵を知るのは悪くないと考えますがいかがでしょう?」
「ふん、敵国の学校へ行った娘を娶りたいと考える馬鹿者がどこに居る!
特にフィリーネ!
貴様の婚約者はまだ決まってすらおらんのだ。
何のためにお前を引き取ったのか。これまでかけた金を無駄にする様な事を、許すと思うか!?」
「……簡単ではない事は承知の上です。
拾っていただき、衣食住を保障し教育を与えて下さった事には感謝いたしますが、籠の鳥になるにしても、せめて籠の中で賢く生きる為の知恵は付けておきたい。
その絶好の機会が目の前にあるのですから、私は掴みに行かせて貰います」
強く義父である侯爵の目を正面から見据え、フィリーネはきっぱり言い切った。
「ふん、元は貧民の小娘が、生意気な口を利きおって!
躾け直してやらんとな……!」
それが気に入らない義父が拳を振り上げフィリーネに暴力を振るおうとした――その時。
『――侯爵。こちらの提案を示した後、その答えを誘導するのは規約違反になるぞ』
部屋に、男性の声が響いた。
当然義父の声ではない。
使用人の声……でもなさそうだ。
部屋を見回すと、うぐいす色の綺麗な羽を持つ小鳥がどこから入ってきたのかふわりとダイニングテーブルの上に降り立った。
……これは、普通の鳥じゃない。
おそらく風の大妖精だ。
『フィリーネさん、だったかな。息子が世話になっていると聞く。間に合ったようで良かったよ、君に何かあればアレが煩いからね。
おっと、私とは初めましてだったな。
私はアレの義父でフライハイト王国大使をしているグリムとだ。
すまんね、日々ミヒャエルに君のことを聞くんでついつい知り合いの様な気になってしまって』
これは、おそらく風魔法の一つ。伝声魔法だ。
風の大妖精に力を貸してもらって、自分の声を遠くに届ける魔法だと聞いた事がある。
ミヒャエルも風の大妖精と契約しているけど、手紙を運ばせるのが精一杯で、伝声魔法を使っているのは見た事がない。
『さて、コルネリウス侯爵。規約違反となれば罰則もあるのは当然ご存知ですよね?
確かこの場合の罰則は……確か罰金でしたね、さて幾らだったか……』
「ま、待て! わ、私には何の事か……!」
「おや、今貴女の義娘さんを殴ろうとしていませんでしたかね?
それに罵声を浴びせて娘さん方の意向を捻じ曲げようとなさっていましたよね?
私――と言うか、私の妖精達が見ていましたよ?」
「ふ、ふん、証拠がないだろう、証拠が!
貴様の様な敵国の人間の証言など我が国の議会が信用するものか!」
「いやいや、私、今『精霊達』と言いましたでしょう?
そちらに送り込んだ仔はこの仔だけじゃありませんよ?」
そう言えば、先程から辺りがキラキラ煌めいているな、とは思っていたけど……。
これ、光の妖精か? あー、他の人は素質がないから見えないんだな……。
「証拠映像もバッチリですし。
出るトコ出てもこちらは一向に構わないのですが?」
大使の言葉に、義父が膝から崩れ落ち。
入試一発合格を条件に、私とお義姉様は留学の許しを得たのだった。
議会からの――ひいては陛下からのお声掛りとは言えそんな物は建前でしかないのだ。
お前たちが頷くなどと考えているものは、この案の発案者であるあの逆賊の国の役人だけだ。
むしろ大半の者はお前達が首を横に振り、あの者が赤っ恥をかく姿が見たいだけなのだ。
――だから。分かるな?」
一通り喚き散らした義父は、蔑む目をこちらへ向けながらYESしか認めない問を投げかける。
だけど、ここでYESと言えば、少なくとも私は破滅フラグへ一歩また近付く事になってしまう。
ロジーネお義姉様とて、あのモラハラ婚約者との学園生活を余儀なくされる。
「いいえ。分かりません。
せっかく選べるようになった選択肢であり可能性です。
この機会を逃したくはありません」
「――私もですわ。
将来、宰相となられるトビアス様の妻としてサポートするのに、敵を知るのは悪くないと考えますがいかがでしょう?」
「ふん、敵国の学校へ行った娘を娶りたいと考える馬鹿者がどこに居る!
特にフィリーネ!
貴様の婚約者はまだ決まってすらおらんのだ。
何のためにお前を引き取ったのか。これまでかけた金を無駄にする様な事を、許すと思うか!?」
「……簡単ではない事は承知の上です。
拾っていただき、衣食住を保障し教育を与えて下さった事には感謝いたしますが、籠の鳥になるにしても、せめて籠の中で賢く生きる為の知恵は付けておきたい。
その絶好の機会が目の前にあるのですから、私は掴みに行かせて貰います」
強く義父である侯爵の目を正面から見据え、フィリーネはきっぱり言い切った。
「ふん、元は貧民の小娘が、生意気な口を利きおって!
躾け直してやらんとな……!」
それが気に入らない義父が拳を振り上げフィリーネに暴力を振るおうとした――その時。
『――侯爵。こちらの提案を示した後、その答えを誘導するのは規約違反になるぞ』
部屋に、男性の声が響いた。
当然義父の声ではない。
使用人の声……でもなさそうだ。
部屋を見回すと、うぐいす色の綺麗な羽を持つ小鳥がどこから入ってきたのかふわりとダイニングテーブルの上に降り立った。
……これは、普通の鳥じゃない。
おそらく風の大妖精だ。
『フィリーネさん、だったかな。息子が世話になっていると聞く。間に合ったようで良かったよ、君に何かあればアレが煩いからね。
おっと、私とは初めましてだったな。
私はアレの義父でフライハイト王国大使をしているグリムとだ。
すまんね、日々ミヒャエルに君のことを聞くんでついつい知り合いの様な気になってしまって』
これは、おそらく風魔法の一つ。伝声魔法だ。
風の大妖精に力を貸してもらって、自分の声を遠くに届ける魔法だと聞いた事がある。
ミヒャエルも風の大妖精と契約しているけど、手紙を運ばせるのが精一杯で、伝声魔法を使っているのは見た事がない。
『さて、コルネリウス侯爵。規約違反となれば罰則もあるのは当然ご存知ですよね?
確かこの場合の罰則は……確か罰金でしたね、さて幾らだったか……』
「ま、待て! わ、私には何の事か……!」
「おや、今貴女の義娘さんを殴ろうとしていませんでしたかね?
それに罵声を浴びせて娘さん方の意向を捻じ曲げようとなさっていましたよね?
私――と言うか、私の妖精達が見ていましたよ?」
「ふ、ふん、証拠がないだろう、証拠が!
貴様の様な敵国の人間の証言など我が国の議会が信用するものか!」
「いやいや、私、今『精霊達』と言いましたでしょう?
そちらに送り込んだ仔はこの仔だけじゃありませんよ?」
そう言えば、先程から辺りがキラキラ煌めいているな、とは思っていたけど……。
これ、光の妖精か? あー、他の人は素質がないから見えないんだな……。
「証拠映像もバッチリですし。
出るトコ出てもこちらは一向に構わないのですが?」
大使の言葉に、義父が膝から崩れ落ち。
入試一発合格を条件に、私とお義姉様は留学の許しを得たのだった。
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