19 / 114
私、ざまぁ系ヒロインに転生してしまったかも……!?
ゲーム開始のカウントダウンが始まる様です。
しおりを挟む
「今晩は旦那様がお帰りになります。
――旦那様付きの執事から、お嬢様方も晩餐の席に着くようにと言付かっておりますので」
……と。
今朝、ジークリンデ様のお宅に伺う前、久々にデリアに身繕いして貰ったんだけど。
一日に二回も侍女に身支度をして貰うなんて、侯爵家に来て初めての事。
しかも、エッカルト公爵家へ招待された理由も、あの三人組の人となりをロジーネ経由で知る侯爵家の使用人にはおおよそ予想されていたため、デリアも最低限失礼には当たらない程度の身繕いで済ませていた。
が、その“旦那様”が私を引き取ったのは政略結婚の駒にするため。
駒の価値を高め少しでも高く売るために教師を雇う等の手間と金をかけている。
それを半端な身繕いのまま晩餐の席に送り出して、侍女の不手際と当主が判断すれば、クビになるだけでなく、再就職も危ぶまれる事態になりうるから、デリアも必死だ。
幸い、自宅の、家族での晩餐の場に着て行くくらいのドレスは揃えられている。
私の桃色髪に映える白のフリルシャツに臙脂のワンピーススカート。
白のレースで出来た花飾りの付いたドレスカチューシャを頭頂に装備し、ツインテール……。
うわぁ、モロ頭お花畑のヒロインスタイル……。
ドレスの色がピンクじゃなく、ドレスのタイプもブリブリのプリンセスラインじゃいのがせめてもの救いか……。
いや、今の私の容姿じゃマルグリット様の様な格好良い系のドレスが似合わないのは分かってるんだけどね。
そして仮にも乙女ゲームヒロイン役とあって、元の出来は悪くないのよ、私。
ちょっと前までの栄養状態のせいで肌や髪の状態がイマイチだったのも、やせ細っていたのも改善されつつあるからね。
まぁ、今の格好はとても似合っていて可愛い。
……自分で言うのはどうかと思うけどさ。
でもまぁ、昼にあんな事があったからさ、尚更気になってるんだと思う。
事実、気は重いけど。
この国で、貧しい平民の女に生まれておきながら、毎日温かい食事が3食しっかり食べられて、暖かく清潔な服と寝床があるだけでありがたい子となんだから。
「フィリーネ様、旦那様がお帰りになりました。
晩餐の支度が整っておりますので、食堂へどうぞ」
いつもはない、執事による食堂への案内。
……いくら広いとはいえ自宅、それも基本立ち入らない使用人区画や他の家族の専有スペース区画ならともかく、自室から食堂までの経路に案内なんか必要ないんだけど。
そこは侯爵家のお嬢様としては当然の事、だそう。……と、カルラ女史から教わった。
実際お義姉様やお義母様は執事か侍女に連れられてやって来るもんね。
義弟はまだ乳母に抱っこされて来ることもしばしばなんだけど。
私の侍女はデリア一人だから、私は一人で食堂へ行くことが大半だ。
私が珍しく執事が開けた扉から食堂へ入ると、既に義両親と義弟が席に着いていた。
義姉の姿はまだない。
さっき侯爵家の馬車が戻って来たのは見たから、今はお召し替え中なんだろう。
……あの後始末をなさっていたのだから、さぞお疲れだろうし。
「お久しぶりにお会いします、フィリーネに御座います。日々を恙無く過ごせるのもご当主、ラルフ侯爵様のお陰でございます」
私はカルラ女史直伝のカーテシーをして見せる。
「ふん、小汚い小娘だったがまぁ、見られる様にはなったか」
そう私を品定めする様に不躾に眺め回す、“小太り”なんてレベルじゃ収まらない巨漢。……勿論ムキムキマッチョ的な意味ではない。
それも魔○ブウみたいな可愛い系おデブちゃんではなく、喋るたびにたぷたぷするアゴや、前屈みの姿勢を取るだけで大変そうな脂肪だらけの腹と、女でもないのに乳房の様に膨らんだ胸肉。
幸いお貴族様だけあって清潔にはしているし、香水も使っているから汗臭かったりはしないのだが。
そして、残念な事に。
こんな容姿はこの閣下のみに限らず、このセイントランド聖国の貴族男性や富裕層の男性には珍しくないんだよね。
何というか、これが裕福だという証明の様に思われているというか……。
私の前世の死因を思えば、生活習慣病を心配したくもなるけど、まぁ聞き届けて貰えるとは思えない。
「後程、ロジーネが来たら詳しい話をするつもりなんだがな。どうだ、入学準備は?
そろそろ書類も届く頃合いだろう?」
あ……成程。その為か、滅多に寄り付かない屋敷にこの方が戻って来た理由は。
でも。
せめて今日くらいその話題は勘弁して欲しかったなぁ……。
――旦那様付きの執事から、お嬢様方も晩餐の席に着くようにと言付かっておりますので」
……と。
今朝、ジークリンデ様のお宅に伺う前、久々にデリアに身繕いして貰ったんだけど。
一日に二回も侍女に身支度をして貰うなんて、侯爵家に来て初めての事。
しかも、エッカルト公爵家へ招待された理由も、あの三人組の人となりをロジーネ経由で知る侯爵家の使用人にはおおよそ予想されていたため、デリアも最低限失礼には当たらない程度の身繕いで済ませていた。
が、その“旦那様”が私を引き取ったのは政略結婚の駒にするため。
駒の価値を高め少しでも高く売るために教師を雇う等の手間と金をかけている。
それを半端な身繕いのまま晩餐の席に送り出して、侍女の不手際と当主が判断すれば、クビになるだけでなく、再就職も危ぶまれる事態になりうるから、デリアも必死だ。
幸い、自宅の、家族での晩餐の場に着て行くくらいのドレスは揃えられている。
私の桃色髪に映える白のフリルシャツに臙脂のワンピーススカート。
白のレースで出来た花飾りの付いたドレスカチューシャを頭頂に装備し、ツインテール……。
うわぁ、モロ頭お花畑のヒロインスタイル……。
ドレスの色がピンクじゃなく、ドレスのタイプもブリブリのプリンセスラインじゃいのがせめてもの救いか……。
いや、今の私の容姿じゃマルグリット様の様な格好良い系のドレスが似合わないのは分かってるんだけどね。
そして仮にも乙女ゲームヒロイン役とあって、元の出来は悪くないのよ、私。
ちょっと前までの栄養状態のせいで肌や髪の状態がイマイチだったのも、やせ細っていたのも改善されつつあるからね。
まぁ、今の格好はとても似合っていて可愛い。
……自分で言うのはどうかと思うけどさ。
でもまぁ、昼にあんな事があったからさ、尚更気になってるんだと思う。
事実、気は重いけど。
この国で、貧しい平民の女に生まれておきながら、毎日温かい食事が3食しっかり食べられて、暖かく清潔な服と寝床があるだけでありがたい子となんだから。
「フィリーネ様、旦那様がお帰りになりました。
晩餐の支度が整っておりますので、食堂へどうぞ」
いつもはない、執事による食堂への案内。
……いくら広いとはいえ自宅、それも基本立ち入らない使用人区画や他の家族の専有スペース区画ならともかく、自室から食堂までの経路に案内なんか必要ないんだけど。
そこは侯爵家のお嬢様としては当然の事、だそう。……と、カルラ女史から教わった。
実際お義姉様やお義母様は執事か侍女に連れられてやって来るもんね。
義弟はまだ乳母に抱っこされて来ることもしばしばなんだけど。
私の侍女はデリア一人だから、私は一人で食堂へ行くことが大半だ。
私が珍しく執事が開けた扉から食堂へ入ると、既に義両親と義弟が席に着いていた。
義姉の姿はまだない。
さっき侯爵家の馬車が戻って来たのは見たから、今はお召し替え中なんだろう。
……あの後始末をなさっていたのだから、さぞお疲れだろうし。
「お久しぶりにお会いします、フィリーネに御座います。日々を恙無く過ごせるのもご当主、ラルフ侯爵様のお陰でございます」
私はカルラ女史直伝のカーテシーをして見せる。
「ふん、小汚い小娘だったがまぁ、見られる様にはなったか」
そう私を品定めする様に不躾に眺め回す、“小太り”なんてレベルじゃ収まらない巨漢。……勿論ムキムキマッチョ的な意味ではない。
それも魔○ブウみたいな可愛い系おデブちゃんではなく、喋るたびにたぷたぷするアゴや、前屈みの姿勢を取るだけで大変そうな脂肪だらけの腹と、女でもないのに乳房の様に膨らんだ胸肉。
幸いお貴族様だけあって清潔にはしているし、香水も使っているから汗臭かったりはしないのだが。
そして、残念な事に。
こんな容姿はこの閣下のみに限らず、このセイントランド聖国の貴族男性や富裕層の男性には珍しくないんだよね。
何というか、これが裕福だという証明の様に思われているというか……。
私の前世の死因を思えば、生活習慣病を心配したくもなるけど、まぁ聞き届けて貰えるとは思えない。
「後程、ロジーネが来たら詳しい話をするつもりなんだがな。どうだ、入学準備は?
そろそろ書類も届く頃合いだろう?」
あ……成程。その為か、滅多に寄り付かない屋敷にこの方が戻って来た理由は。
でも。
せめて今日くらいその話題は勘弁して欲しかったなぁ……。
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
クラヴィスの華〜BADエンドが確定している乙女ゲー世界のモブに転生した私が攻略対象から溺愛されているワケ〜
アルト
恋愛
たった一つのトゥルーエンドを除き、どの攻略ルートであってもBADエンドが確定している乙女ゲーム「クラヴィスの華」。
そのゲームの本編にて、攻略対象である王子殿下の婚約者であった公爵令嬢に主人公は転生をしてしまう。
とは言っても、王子殿下の婚約者とはいえ、「クラヴィスの華」では冒頭付近に婚約を破棄され、グラフィックは勿論、声すら割り当てられておらず、名前だけ登場するというモブの中のモブとも言えるご令嬢。
主人公は、己の不幸フラグを叩き折りつつ、BADエンドしかない未来を変えるべく頑張っていたのだが、何故か次第に雲行きが怪しくなって行き────?
「────婚約破棄? 何故俺がお前との婚約を破棄しなきゃいけないんだ? ああ、そうだ。この肩書きも煩わしいな。いっそもう式をあげてしまおうか。ああ、心配はいらない。必要な事は俺が全て────」
「…………(わ、私はどこで間違っちゃったんだろうか)」
これは、どうにかして己の悲惨な末路を変えたい主人公による生存戦略転生記である。
断罪ルートを全力で回避します~乙女ゲームに転生したと思ったら、ヒロインは悪役令嬢でした~
平山和人
恋愛
平凡なOLの私は乙女ゲームのヒロインに転生した。貧乏な男爵家の娘ながらも勉強を頑張って、奨学生となって学園に入学したのだが、蓋を開ければ、悪役令嬢が既にハーレムを作っていた。どうやらこの世界は悪役令嬢がヒロインのようで、ざまぁされるのは私のようだ。
ざまぁを回避すべく、私は徹底して目立たないようにした。しかし、なぜか攻略対象たちは私に付きまとうようになった。
果たして私は無事にざまぁを回避し、平穏な人生を送ることが出来るのだろうか?
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
悪役令嬢に転生したら溺愛された。(なぜだろうか)
どくりんご
恋愛
公爵令嬢ソフィア・スイートには前世の記憶がある。
ある日この世界が乙女ゲームの世界ということに気づく。しかも自分が悪役令嬢!?
悪役令嬢みたいな結末は嫌だ……って、え!?
王子様は何故か溺愛!?なんかのバグ!?恥ずかしい台詞をペラペラと言うのはやめてください!推しにそんなことを言われると照れちゃいます!
でも、シナリオは変えられるみたいだから王子様と幸せになります!
強い悪役令嬢がさらに強い王子様や家族に溺愛されるお話。
HOT1/10 1位ありがとうございます!(*´∇`*)
恋愛24h1/10 4位ありがとうございます!(*´∇`*)
転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています
平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。
生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。
絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。
しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。
彩世幻夜
ファンタジー
※ 2019年ファンタジー小説大賞 148 位! 読者の皆様、ありがとうございました!
裕福な商家の生まれながら身分は平民の悪役令嬢に転生したアンリが、ユニークスキル「クリエイト」を駆使してシナリオ改変に挑む、恋と冒険から始まる成り上がりの物語。
※2019年10月23日 完結
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる