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私、ざまぁ系ヒロインに転生してしまったかも……!?

ゲーム開始のカウントダウンが始まる様です。

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 「今晩は旦那様がお帰りになります。
 ――旦那様付きの執事から、お嬢様方も晩餐の席に着くようにと言付かっておりますので」

 ……と。
 今朝、ジークリンデ様のお宅に伺う前、久々にデリアに身繕いして貰ったんだけど。
 一日に二回も侍女に身支度をして貰うなんて、侯爵家に来て初めての事。

 しかも、エッカルト公爵家へ招待された理由も、あの三人組の人となりをロジーネ経由で知る侯爵家の使用人にはおおよそ予想されていたため、デリアも最低限失礼には当たらない程度の身繕いで済ませていた。

 が、その“旦那様”が私を引き取ったのは政略結婚の駒にするため。
 駒の価値を高め少しでも高く売るために教師を雇う等の手間と金をかけている。
 それを半端な身繕いのまま晩餐の席に送り出して、侍女の不手際と当主が判断すれば、クビになるだけでなく、再就職も危ぶまれる事態になりうるから、デリアも必死だ。

 幸い、自宅の、家族での晩餐の場に着て行くくらいのドレスは揃えられている。
 私の桃色髪に映える白のフリルシャツに臙脂えんじのワンピーススカート。
 白のレースで出来た花飾りの付いたドレスカチューシャを頭頂に装備し、ツインテール……。

 うわぁ、モロ頭お花畑のヒロインスタイル……。

 ドレスの色がピンクじゃなく、ドレスのタイプもブリブリのプリンセスラインじゃいのがせめてもの救いか……。
 いや、今の私の容姿じゃマルグリット様の様な格好良い系のドレスが似合わないのは分かってるんだけどね。
 そして仮にも乙女ゲームヒロイン役とあって、元の出来は悪くないのよ、私。
 ちょっと前までの栄養状態のせいで肌や髪の状態がイマイチだったのも、やせ細っていたのも改善されつつあるからね。
 まぁ、今の格好はとても似合っていて可愛い。
 ……自分で言うのはどうかと思うけどさ。

 でもまぁ、昼にあんな事があったからさ、尚更気になってるんだと思う。

 事実、気は重いけど。
 この国で、貧しい平民の女に生まれておきながら、毎日温かい食事が3食しっかり食べられて、暖かく清潔な服と寝床があるだけでありがたい子となんだから。

 「フィリーネ様、旦那様がお帰りになりました。
 晩餐の支度が整っておりますので、食堂へどうぞ」

 いつもはない、執事による食堂への案内。

 ……いくら広いとはいえ自宅、それも基本立ち入らない使用人区画や他の家族の専有スペース区画ならともかく、自室から食堂までの経路に案内なんか必要ないんだけど。
 そこは侯爵家のお嬢様としては当然の事、だそう。……と、カルラ女史から教わった。
 実際お義姉様やお義母様は執事か侍女に連れられてやって来るもんね。
 義弟はまだ乳母ナニーに抱っこされて来ることもしばしばなんだけど。
 私の侍女はデリア一人だから、私は一人で食堂へ行くことが大半だ。

 私が珍しく執事が開けた扉から食堂へ入ると、既に義両親と義弟が席に着いていた。
 義姉の姿はまだない。
 さっき侯爵家の馬車が戻って来たのは見たから、今はお召し替え中なんだろう。
 ……あの後始末をなさっていたのだから、さぞお疲れだろうし。

 「お久しぶりにお会いします、フィリーネに御座います。日々を恙無く過ごせるのもご当主、ラルフ侯爵様のお陰でございます」

 私はカルラ女史直伝のカーテシーをして見せる。

 「ふん、小汚い小娘だったがまぁ、見られる様にはなったか」

 そう私を品定めする様に不躾に眺め回す、“小太り”なんてレベルじゃ収まらない巨漢。……勿論ムキムキマッチョ的な意味ではない。
 それも魔○ブウみたいな可愛い系おデブちゃんではなく、喋るたびにたぷたぷするアゴや、前屈みの姿勢を取るだけで大変そうな脂肪だらけの腹と、女でもないのに乳房の様に膨らんだ胸肉。
 幸いお貴族様だけあって清潔にはしているし、香水も使っているから汗臭かったりはしないのだが。

 そして、残念な事に。
 こんな容姿はこの閣下のみに限らず、このセイントランド聖国の貴族男性や富裕層の男性には珍しくないんだよね。

 何というか、これが裕福だという証明の様に思われているというか……。

 私の前世の死因を思えば、生活習慣病を心配したくもなるけど、まぁ聞き届けて貰えるとは思えない。

 「後程、ロジーネが来たら詳しい話をするつもりなんだがな。どうだ、入学準備は?
 そろそろ書類も届く頃合いだろう?」

 あ……成程。その為か、滅多に寄り付かない屋敷にこの方が戻って来た理由は。

 でも。
 せめて今日くらいその話題は勘弁して欲しかったなぁ……。
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