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私、ざまぁ系ヒロインに転生してしまったかも……!?

出会った場所は……

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 「へぇ、社交ダンスの練習ねぇ」

 大妖精のルドルフに頼んで届けて貰った手紙で呼び出したミヒャエルに、明後日から詰めに詰め込まれたブートキャンプカリキュラムを愚痴る。
 場所は学園前のオシャレなカフェだ。

 そう、『学園』。

 この国、セイントランド聖国の貴族の子女ならここの卒業資格があって当然、無い者はそれだけで就職・昇進・結婚に支障が出る“訳アリ”物件となってしまう。
 そして勿論ここが乙女ゲームの本番の舞台となる。
 その為か、この周辺には良家のご令息やご令嬢の利用にも耐えられる飲食店や商店が軒を連ねている。

 付け焼き刃な侯爵令嬢の私は、さっきら周囲から浮いていないかソワソワしていると言うのに、このミヒャエルの落ち着き様は何なんだろうか……?
 しかも、私よりこの風景に馴染んで見えるのは気のせいか……?

 「いや、ミヒャエルは知らないかもしれないけどね、あそこでよく見たお店のオネェチャンが踊る脱げばそれだけで喜ばれる様なダンスじゃないんだよ?
 勿論下町のお祭りで女の子が踊る様な誰でも踊れるダンスでもないし!」

 「そりゃ、知ってるさ。多分、今の君よりは。……ところでパートナーは決まったのかい?」

 「ん? それどういう事意味よ。
 そんなの昨日の今日で決まる訳無いじゃない。先生だって急すぎてさすがに明後日からって話になったから私は今ここに居られるんだよ。
 いくら図書館の裏口が屋敷の裏口の直ぐ側にあって、こっそり抜け出すには絶好の位置取りって言っても、さすがに先生の授業はサボれないし」

 「基本のステップを覚えたんなら、後は教師の腕よりパートナーのリードの腕前の問題だろうに。
 相手が初心者なら特に、な。
 パートナーが優秀なら、そのブートキャンプとやらは必要なくなると思うよ」

 「だから、そのパートナーのアテがろくにないまま、ろくでもない男共が待ち構える場に出てかなきゃならないから困ってるんだって」

 本来、最低限の教育が終わらなければ社交デビューできないお貴族様の世界に、あえてまだ勉強中と分かっている私を喚ぶのも実はマナーに抵触する行為なのだけど。
 命じたのが王族だし、命じられた相手は元平民。……明らかに嘲笑目的だろう。

 まぁ、一つ有り難い……と言っていいのか悩む所なのだが、先生の足を踏んだら踏んだだけ罰と言ってかなり痛い鞭の一撃を食らうから、先生に対して申し訳ないって気持ちは吹っ飛ぶのよね。

 「なら、僕がそのパートナーと言う名の練習相手に立候補しても良いよね?」
 「……いやいや、ムリでしょ。嘲笑目的で呼ばれた元平民な私だけど、一応対外的には侯爵令嬢って事になってるのよ、今の私は。
 元は私と同じ立場でも、貴族でもなければ貴族の縁者でもないミヒャエルは連れていけないよ」
 「大丈夫だよ、だって僕も貴族令息だからね」
 「……ミヒャエル、何か悪いものでも食べた?
 それとも昨夜私が愚痴だらけの手紙出しちゃったから寝不足とか、変な夢でも見た?」
 「いや、無いから。事実だし」

 いやいやいやいや、ナイでしょ。

 「なんでその『貴族令息』様が、この国でも治安が悪い事で有名なシュレッター伯爵領の、これまた裏稼業関係者がわんさと居るようなスラム近くの賭場や娼館が建ち並ぶ界隈で、そこに居て違和感ない格好で護衛も従者もなくウロチョロしてるのよ!」
 「そこはまあ……我が家の教育方針と言うか、課題の一環だったんだよね。そもそも貴族と言ってもこの国の貴族じゃないからさ」

 「え……?」
 この国の、貴族じゃない……?

 「さて、それじゃあ急がないと。明日までに申し込めるよう親父に許可取って根回ししなきゃ。
 午後は忙しくなるな」

 ニコニコとコーヒーをぐいっと飲み干したミヒャエルは。

 綺麗な顔をほころばせ、周囲の席に居たお嬢様方を軒並み赤面させて去っていった。

 ちょ、どう言う事よミヒャエル!
 せっかく愚痴って少しでもこのモヤモヤを晴らしたかったのに、まさか追加でモヤモヤさせられるとは……!
 ミヒャエルめ……!
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