現代に生きる吸血鬼が異世界に勇者として召喚されたました。

不揃いな旅立ち

街の外へ

    選択の結果連れて来て貰った城の外。
    そこに広がる街の様子は、暗くて目にはよく見えないけれど、ある意味とても刺激的な街だった。

    ただでさえ常人離れしたその身体能力を駆使してくれたから今私は一応無事(？)にここに居るのは理解しているし、城の外でお別れと言われていたのも覚えているけど。
    その運び方のせいで酔って気持ち悪い。
    更に街が臭い。男の言う通り、ボットントイレの臭いが至るところから漂う、とても刺激的な街。

    今のこの現状で置いていかれるのは、先の約束を覚えていても嫌だったので、少々強引に朝が来るまでと期限を延長する事には成功したんだ、けど。新たな選択肢を提示され、再びの選択を迫られた。

    このまま街に置いてきぼりにされるか。
    それとも夜が明ける前に塀を越えて街の外に出るか、と。

    ……街の中はとにかく臭い。
    そして、ここがどんな街かは分からないけど、少なくとも日本に居る感覚でいたら大変な事になりそうな気がしてならない。……海外で日本人が平和ボケと揶揄され軽犯罪のカモにされるように、チンピラの類いを呼び寄せてしまいそうな。
    だけど、よっぽど運が悪くなければ死ぬ事はなさそう……いや、無いといいなぁ、って言うか。

    けど、嘘か本当か魔王が居る世界となれば、魔物だって居るかもしれないし、魔物でなくとも獣は居るだろう。
    うっかり遭遇でもすれば途端に命の危機。

    何しろ“ひのきのぼう”すら装備していないのだから。

    しかし、いずれ城から私たちを探しに出てくる人が居るだろうし、捕まればどうなるか……。

    またしても究極の選択だ。
    そして、私の答えは――

    「行く。この街から出して」