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異世界へ
家捜し
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夫婦の寝室にある引き出しを探る。
……が、目ぼしい物はやはりない。
彼女は隣の部屋を――弟の部屋へと踏み入った。誰も居ない部屋だが、物だけはぐちゃぐちゃとあって、とても騒がしい雰囲気の部屋だ。
テレビに繋がれた幾つかのゲーム機とソフトの山。パソコンにソフトらしいCD。漫画にラノベ。
パソコンは――あぁ、やっぱり電源はつかない。けど、引き出しを開けて見ると、ノートの山が出てきた。
何かと思えば――
「日記……?」
ボールペンで書かれた日記には読みにくい弟の字で書かれていた。
《異世界に来た! ある日寝て起きたら家ごとどこかの広野に居る。夢かと思って外に出てみたが、どうやら夢ではないらしい。電気水道ガスは……使えない。とにかく冷蔵庫の物をまずなんとかしなければ》
《――この世界の人間に出会った。つーか向こうから訪ねてきやがった。面倒だが奴ら俺より強そうだし、取り敢えず話を聞くことにする》
《すげぇ、ここに町を作ってくれるってさ! 代わりに色々研究手伝えって……。ちと面倒だが楽しそうだ。取り敢えず言語チートはあるみたいだけど、他にも何かチート要素がねぇかな?》
……最初の方はこんな感じで軽く書いてある。が。
《取り敢えず奴らの望みは叶えた。俺はもう限界だ。体も心ももう……。くそ、どうして……!》
最後の方はこんな内容ばかりになって。
――だけどこれで確定してしまった。あれを作ったのは間違いなく私の弟で、その資料が城にある事が。
「……取り敢えず資料燃やして秘密を知ってそうな連中を何とかしたらゲームクリア、かな」
そして、私は。私は……。
「……アオイ?」
「どうかされましたか?」
尋ねる二人に私はへにゃりと力なく微笑んだ。
「うん。取り敢えず手掛かりは見つけたから、まずは戻ろう?」
そう言って彼らを促しキャンプへと帰る。
「よう、おかえり」
「何か手掛かりは見つけたか?」
和貴たちが出迎えてくれた焚き火の前で、私はそのノートを彼らに見せた。
そして、そこに書かれた内容について彼らに説明する。
「……そうか」
それを告げると、和貴が一言そう言って天を仰ぎ見た。そこに広がる星空を見上げ、彼は軽く言った。
「だが、やらかしたのはお前じゃない。お前自信は悪くない。……だから俺は、お前を守る。――国が一番なのは変わらねぇが、お前も一緒に守ってやるよ」
「――ですね」
「ああ、うん」
「……だな」
彼らはそう言って、いそいそと寝る支度を始めた。
「本番は都に着いてからです」
「しっかり寝ないと、ね。アオイ、顔色悪かったし」
「そら、寝た寝た!」
――そして、それから数日後。私達の馬車は王都の門前に並んだのだった。
……が、目ぼしい物はやはりない。
彼女は隣の部屋を――弟の部屋へと踏み入った。誰も居ない部屋だが、物だけはぐちゃぐちゃとあって、とても騒がしい雰囲気の部屋だ。
テレビに繋がれた幾つかのゲーム機とソフトの山。パソコンにソフトらしいCD。漫画にラノベ。
パソコンは――あぁ、やっぱり電源はつかない。けど、引き出しを開けて見ると、ノートの山が出てきた。
何かと思えば――
「日記……?」
ボールペンで書かれた日記には読みにくい弟の字で書かれていた。
《異世界に来た! ある日寝て起きたら家ごとどこかの広野に居る。夢かと思って外に出てみたが、どうやら夢ではないらしい。電気水道ガスは……使えない。とにかく冷蔵庫の物をまずなんとかしなければ》
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《すげぇ、ここに町を作ってくれるってさ! 代わりに色々研究手伝えって……。ちと面倒だが楽しそうだ。取り敢えず言語チートはあるみたいだけど、他にも何かチート要素がねぇかな?》
……最初の方はこんな感じで軽く書いてある。が。
《取り敢えず奴らの望みは叶えた。俺はもう限界だ。体も心ももう……。くそ、どうして……!》
最後の方はこんな内容ばかりになって。
――だけどこれで確定してしまった。あれを作ったのは間違いなく私の弟で、その資料が城にある事が。
「……取り敢えず資料燃やして秘密を知ってそうな連中を何とかしたらゲームクリア、かな」
そして、私は。私は……。
「……アオイ?」
「どうかされましたか?」
尋ねる二人に私はへにゃりと力なく微笑んだ。
「うん。取り敢えず手掛かりは見つけたから、まずは戻ろう?」
そう言って彼らを促しキャンプへと帰る。
「よう、おかえり」
「何か手掛かりは見つけたか?」
和貴たちが出迎えてくれた焚き火の前で、私はそのノートを彼らに見せた。
そして、そこに書かれた内容について彼らに説明する。
「……そうか」
それを告げると、和貴が一言そう言って天を仰ぎ見た。そこに広がる星空を見上げ、彼は軽く言った。
「だが、やらかしたのはお前じゃない。お前自信は悪くない。……だから俺は、お前を守る。――国が一番なのは変わらねぇが、お前も一緒に守ってやるよ」
「――ですね」
「ああ、うん」
「……だな」
彼らはそう言って、いそいそと寝る支度を始めた。
「本番は都に着いてからです」
「しっかり寝ないと、ね。アオイ、顔色悪かったし」
「そら、寝た寝た!」
――そして、それから数日後。私達の馬車は王都の門前に並んだのだった。
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