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異世界へ
疑似体験の賜物です。
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地図の通りにやって来た宿屋は、見た目和風な洋館だった。……表現が矛盾してるって? いやいや、開国以降に日本で建てられた洋館にはそういう仕様の物もあるからね?
……路銀を思うともっと安宿でも良いと思うのに、ちょぴっと上等過ぎる気もしてドキドキしてるんだけど。――まあ、服こそぼろいの着せちゃったけど、王子として一通りの教育を受けている彼らの気品は隠しきれてないんだろう。
……気を付けておかないと。
「お部屋はいかがなされます?」
――本音を言えば男と同じ部屋とかあり得ないんだけど、お金の事を思えば贅沢は言っていられない。
「一部屋で」
どうせ旅の間には小屋みたいなとこで雑魚寝だってしたんだし今さらだ。
幸い部屋にはトイレと風呂がついていた。
……魔法ではなく上下水道が完備されてるらしい。
ただ、風呂の燃焼の仕組みだけは理解できなかった。ただの科学技術でバスタブ一杯の湯を適温に沸かすなんて、一瞬じゃ出来ない。どんな高価で高性能なシステムでも数分は必要なはずなのに、ここではコントロールパネルの操作で一瞬。
あ、コントロールパネルって言ってもモノ自体は温度調節の回転式つまみといくつかのボタンがついてるだけの簡単な物。
……マナを奪ってるくらいだしね。やはり魔法っぽい技術はあるみたい。
けど、奴らが見せてた魔法には驚いていたから、あの世界とは魔法の仕組みや使い方は異なるのかもしれない。
……色々考え込みながらもそんな考察を彼らに伝えてみる。
「――俺達を見世物にしやがった件は言いたい事が多々あるが、しかしお前なんだか随分と手慣れてないか?」
「そりゃ……実体験した事はないけど、RPGゲームじゃ定番中の定番ミッションだからね。町の人に話を聞いて情報集めて。お金を手に入れて。ついでに経験値や便利アイテムなんかを手に入れられれば文句なしだけど、流石に現実でそれは望みすぎだよね」
流石に他人の家に無断侵入して家捜しして……ってなお約束は実行できるハズないし。
「あん? あーるぴーじー?」
「……この手の疑似体験が出来る遊びだと思ってて」
「遊び……なのですか」
「言っとくけど別にスパイ育成用のナントカみたいのじゃないからね。つーか別に分からなくて良いから。それより今はこれからの事よ!」
「いや、その前に……まずは借りを返してもらおうか」
和貴がニタッと笑う。
「勿論、覚悟は出来てるんだよな?」
「あー、ハイハイ」
腕を差し出したけど。
「いやいや、俺達を散々見世物にして辱しめてくれたんだ。相応の対価は払って貰うぜ」
和貴は笑みを深めて、つつぅーっと人差し指で私の首筋をなぞった。
「……え、」
「――覚悟しろよ?」
笑ってるのに有無を言わせない圧を感じる。
……動けない。
え、あれ?
無理矢理捕まれたり押さえつけられてる訳じゃないのに抵抗しようという気が何でか起きない。
どうして?
顔が近づいてきて。ぷつりと牙が肌を破る。
――高鳴る鼓動が果たして副作用のせいなのか、分からない。
その様を呆れながら眺めていた他三人は普通に腕とか指からとかで済ませてくれたのに。
なんかイタズラを成功させた男の子みたいな笑顔をするから……。文句も言えなくて。
結局取り敢えず引き続きの情報収集を、とだけ決めるだけで終わった話し合いの後で、私達は宿近くの酒場に繰り出したのだった。
……路銀を思うともっと安宿でも良いと思うのに、ちょぴっと上等過ぎる気もしてドキドキしてるんだけど。――まあ、服こそぼろいの着せちゃったけど、王子として一通りの教育を受けている彼らの気品は隠しきれてないんだろう。
……気を付けておかないと。
「お部屋はいかがなされます?」
――本音を言えば男と同じ部屋とかあり得ないんだけど、お金の事を思えば贅沢は言っていられない。
「一部屋で」
どうせ旅の間には小屋みたいなとこで雑魚寝だってしたんだし今さらだ。
幸い部屋にはトイレと風呂がついていた。
……魔法ではなく上下水道が完備されてるらしい。
ただ、風呂の燃焼の仕組みだけは理解できなかった。ただの科学技術でバスタブ一杯の湯を適温に沸かすなんて、一瞬じゃ出来ない。どんな高価で高性能なシステムでも数分は必要なはずなのに、ここではコントロールパネルの操作で一瞬。
あ、コントロールパネルって言ってもモノ自体は温度調節の回転式つまみといくつかのボタンがついてるだけの簡単な物。
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けど、奴らが見せてた魔法には驚いていたから、あの世界とは魔法の仕組みや使い方は異なるのかもしれない。
……色々考え込みながらもそんな考察を彼らに伝えてみる。
「――俺達を見世物にしやがった件は言いたい事が多々あるが、しかしお前なんだか随分と手慣れてないか?」
「そりゃ……実体験した事はないけど、RPGゲームじゃ定番中の定番ミッションだからね。町の人に話を聞いて情報集めて。お金を手に入れて。ついでに経験値や便利アイテムなんかを手に入れられれば文句なしだけど、流石に現実でそれは望みすぎだよね」
流石に他人の家に無断侵入して家捜しして……ってなお約束は実行できるハズないし。
「あん? あーるぴーじー?」
「……この手の疑似体験が出来る遊びだと思ってて」
「遊び……なのですか」
「言っとくけど別にスパイ育成用のナントカみたいのじゃないからね。つーか別に分からなくて良いから。それより今はこれからの事よ!」
「いや、その前に……まずは借りを返してもらおうか」
和貴がニタッと笑う。
「勿論、覚悟は出来てるんだよな?」
「あー、ハイハイ」
腕を差し出したけど。
「いやいや、俺達を散々見世物にして辱しめてくれたんだ。相応の対価は払って貰うぜ」
和貴は笑みを深めて、つつぅーっと人差し指で私の首筋をなぞった。
「……え、」
「――覚悟しろよ?」
笑ってるのに有無を言わせない圧を感じる。
……動けない。
え、あれ?
無理矢理捕まれたり押さえつけられてる訳じゃないのに抵抗しようという気が何でか起きない。
どうして?
顔が近づいてきて。ぷつりと牙が肌を破る。
――高鳴る鼓動が果たして副作用のせいなのか、分からない。
その様を呆れながら眺めていた他三人は普通に腕とか指からとかで済ませてくれたのに。
なんかイタズラを成功させた男の子みたいな笑顔をするから……。文句も言えなくて。
結局取り敢えず引き続きの情報収集を、とだけ決めるだけで終わった話し合いの後で、私達は宿近くの酒場に繰り出したのだった。
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