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異世界へ

王子の大道芸

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    取り敢えずの現金は必要だけど、私達にあくせく働いて稼ぐだけの時間はない。
    だから、手っ取り早く稼げる方法を選択する。……幸いこの四人は素晴らしい素質を持っている。
     彼ら、顔は良いし身体も鍛えてるからスタイルも良い。そして王子だけあって品もある。
     ――見世物をするのに一番大事な掴み。
     これだけイケメンだと同性は逆に敵に回すかもしれないけど、女性の気を引くならこれ以上の逸材はなかなか無い。
    ただ、場所だけは慎重に選ばないと。
    お約束的に「場所代払え」と絡まれたらマズイ。戦力的にはチンピラ程度ならどうとでも出来るメンバーが揃ってるけど、下手に騒ぎを大きくしたらもっとマズイ。
     取り敢えず顔役に挨拶はしとかないと。
    「――おい、アオイ。お前、俺たちに何させる気だ?」
    「見世物」
    「あ?」
    「大道芸を見せてお捻り貰うのよ」
    「はぁ!?」
    「……あの、嶺仙辺りならまだしも、その様な芸事はあまり――」
    おずおずと幸守が自己申告してくるけれど。
   「あら、貴方達の魔法を手品と言ってそれなりに体裁整えて見せれば、後はその顔で充分稼げるわよ。……そりゃ本格的にやるなら話は別だけど、今は手っ取り早く稼げればそれでいいんだから」
    その辺の露天で噂話を仕入れながらついでに食料やら何やら買い込んで、件の人物に挨拶に行く。
    幸い恰幅の良い迫力あるオバチャンだった。……正直エロ親父でやらしい事迫られるかもと戦々恐々してたけど、売上の10%上納で話はついた。
    「さー、やるわよ!」
    「……何か気のせいかな?    アオイ、随分楽しそうじゃない?」
    うん。まあね、この四人に限っては私の〝男嫌いフィルター〟も外れかけてるから。となれば、彼らは極上のイケメン揃いな訳です。しかもそれぞれタイプの違うバラエティー豊かなイケメン達。
    私も一応女なんで。
    まあ、そりゃ楽しいですよ。
    「私は広告紙面を作る仕事なんでちょっと畑違いではありますけど、一応広告業なんでね。こういうイベントの企画とかちょっとやってみたかったんですよ」
    さらさらっと軽く流れを説明し、広場に赴く。
    ――さぁ、ショーの始まりだ。
    「くそっ、後で借りは返して貰うからな!」
    あー、うん。力を使わせるからね。一応そっちの覚悟はしてる。
    「今日は路銀だけ稼いだら宿屋で休もう」
    流石に勝手の分からない世界で日が落ちてから町と外での野宿は……。路銀の節約程度の理由でするには怖すぎる。
    いくらこちらの戦力が充実してても安全マージンはなるべく確保しておきたいし、体力も温存させておきたいし。
    この興行で力を使わせても後で血を吸わせればチャラになるなら、ここは攻めるべき所だけど、野宿は攻めるべき所じゃない。
    ……そう思えるくらいには、彼らに血を吸われる事に対する抵抗感も薄れている。
    いや、影家の副作用についてはまだ慣れきらないけど、そこはそれ。本人にもどうしょうもないなら責める訳にもいかないし。
    ……そして。
    がっかり稼いだ私達はオバチャンに上納金をきっちり納め、何だか疲れきった様子の彼らを連れてオバチャンに聞いたおすすめの宿へ向かったのだった。
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