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異世界へ

強行突破

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    「……どうやら第二皇子殿下の異世界人嫌いは筋金入りの様だ」
    私を馬車に乗せて何処かへ運ぼうとしていた連中から色々と聞き出した結果、どうやらそもそも私を召喚する時点で既に皇子と教会の間で不和の兆候はあったらしい。
    けれど、国の方針を決める権限を持つのは皇帝で、その命令に第二皇子は逆らえない。何より女神からの神託とあっては……。
    異世界に搾取され続け、異世界人を憎んでいるのに、よりによって異世界人に助けを求める。そんな屈辱に耐え、いざ儀式をしてみれば、召喚されて来たのは無礼な小娘で。しかも元凶と関係がありそうとまで聞かされたら、もう我慢ならなかった、と。
    ……こちらにも言い分はあるけど、まぁ皇子の気持ちも分からなくはないけどね。
   「――本来なら即刻皇帝にご報告申し上げ、相応の対応を致すべきなのですが、いかんせん今は……」
    今、事を荒立てては異世界へ行くための儀式が滞り、この世界が危うくなる。それでは処罰云々言ってる場合でなくなる。
    「皇帝への報告のみ、極秘裏に行い、その後の事は戻った後に改めて対処に当たることとなるでしょう。とにかく今は儀式に集中させていただきたい」
    王子達四人揃って頭を下げてくる。
   「……分かりました。私にも原因の一端はあるみたいだから、今は置いておきます。私も、今は余計な事に煩わされたくないから」
    そう、私だってあの疑惑の件で一杯一杯なのに、これ以上の面倒事なんてノーサンキューだもの。
    「取り敢えず、今宵はこの屋敷でこのままお休み下さい。家の者にしっかり警護させますので」
    「明日、誰が何を言おうと異世界へ行く。これは決定事項だ。――この世界の為に、もう二度と搾取されない様にするんだ」
    和貴が強く決意を込めて言う。
   「……まあ、私は私の為に頑張るわ」
     ――そして翌日。改めて護衛がばっちりついた立派な馬車に乗り、私達は教会へ向かい。
    祭壇に描かれた魔法陣のような紋様の上に立たされ、周囲を取り囲む神官に揃って祈りを捧げられ――なんか全身かゆくなる思いでいた、次の瞬間。覚えのある強すぎる光が私達を襲い――
    私達はふわりと浮遊した。
    床が、落とし穴のように抜けて放り出されそのまま落下しているような。
    しかしもう、それまで延々続いていた神官達の祈りの声は聞こえない。他の周囲の音も。
    そっと目を薄く開けてみれば、目映い乳白色一色に染まるだけの、左右上下も奥行きもサッパリ分からない景色が見えるだけ――
    そう思って落ちながら首を回し辺りを見回そうとしたところで再び強烈な光を浴びせられ。
    ――唐突に耳に音が戻り、どこかへどすんと乱暴に放り出された。
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