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異世界へ

きっかけ

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    ふっと目が覚める。
    薬品の臭いが充満していた馬車に詰め込まれてすぐ、寝起きだった私の意識は途絶えていたのだけれど、目隠しに猿轡に手足を縛られた状況での目覚めに、鈍い頭痛と乱暴に担がれたまま走られる酷い揺れに思考をかき回される。
    「おら、待てやお前!」
    けど、耳に届いた声はすぐに誰のものか分かった。
    「そこまでですよ」
     馬の蹄が石畳を蹴る音と同じ方から聞こえた声も。
    「これがどういう事なのか。無論我らにも説明があって然るべきでは御座いませんかな?」
    「うんうん。……人がせっかく一生懸命彼女の信頼を得ようと努力してるのに、こんな訳分かんない邪魔されるの、すんごく不愉快なんだけど?」
    「……ぐっ!」
    「ふふふ、痛い?    ごめんね、刺なし茨と間違えちゃったけど……いいよね?」
    「ええ、拘束ありがとうございます。――やはり念のため追跡の術を仕掛けておいて正解でした」
    「おう、俺らの知らぬ間にどうするつもりだったか知らねぇが、危うく俺らの手の届かない所でヤバい事になるとこだったぜ」
    和貴が男から私を奪い返し、拘束を解いてくれる。
    「……こやつ、皇城には連れて行かん方が良さそうですな」
    私を奪い返したと見るや即座に男の鳩尾に一発食らわせ気絶させた幸守が難しい顔をする。
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    「では、その様な繊細な仕事に向かぬ私は飯でも調達してきますよ。――何も食べていないのでしょう?」
    「じゃあ俺も……」
    「いや、和貴はアオイについててやれ。……念のためにも、な」
    ぽんぽんと話は進み。
    「――悪かったな、目ぇ離した隙にこんな事に巻き込んじまって」
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    「――助けに来てくれてありがとう」
    「は?    当然だろ」
    どうしよう。
    死んでたはずの心が嘘みたいに潤い始める。
    私は……和貴の事が――
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