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旅立ち

男はクズだよ

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    私、環蒼生は男という生き物が嫌いである。
    ……だからといって女を無条件に好く訳でもない。ろくでもない女が居ることも知ってるから。
   ただ、私のこれまでの人生に於いてより最悪だったのは男という生き物だった。
    まずは父親。
    大抵の人間にとって最も身近な男。特に幼い子供なら尚更に。
    ウチの父親は母親と揃って猛毒親だった。
    とにかく長男様第一、男尊女卑な考えの人たちで、弟を所謂愛玩子、私を搾取子として育てた。
    加えて父親はくず野郎だった。
    弟は可愛がったが、酒を飲めば暴れ、ギャンブルで借金を作り、他所に女を作りとやりたい放題だった。
    ――それでも。外にまともな大人が居てくれたら、少しは違ったのかな?
    分からないけど。
    搾取子としてネグレクトと言って良い様な扱いを受けていた私は、いつも着た切り雀でガリガリのやせっぽちのチビでだった。
    流行りのマンガもアニメもゲームも弟には買い与えても、私には無しだったから、クラスメイトの話にもついていけず。
    女の子は大人しめの子が多かったから、少し遠巻きにされるだけで済んでいたけど、男子に体格の良い暴れん坊が居た。
    ……当時の担任に虐められたと訴えたら――先生からも嫌がらせを受けるようになった。……新任の男の先生だった。
    家でも学校でも苛まれる日々。
    いつも逃れるように、図書館の分室に逃げ込んでいた。
    本館に比べて狭く、閲覧用のテーブルセットも四人分だけ。蔵書量も少なく、司書さんもおばちゃんが一人いるだけ。
    でも、利用者も近所のおばちゃんばかりだったから、ひたすら本を読んだ。
    物語の本が勿論一番好きだったけど、私はこの地獄から逃げ出す為の知恵を求めて、ひたすら勉強した。
    おかげで、高校は女子校へ特待生での入学が許された。
    ああ、あの三年間の楽しかったこと!
    ……先生には男の人も居たけど。
    そのまま奨学金を貰って女子大へ進学。
    実家を出て独り暮らしを始めたんだけど……。
    あるバイト帰りの日の夜、暴漢に襲われた。
    ――それまでもそうだったけど、あまりに決定的な出来事だった。
    私は、男という生き物があの黒い害虫と同じものにしか見えなくなった。
    見るもおぞましい、同じ部屋に居るなんて以ての他、見たら即座に叩き潰したい衝動にかられる。
    そういうレベルで男が嫌いになった。
    ……けれど悲しいことに、この世の半分は男なのである。
    女性の多い職場は望めても、それを取引先にまでは求められない。……仕事をしてお金を稼いで食い繋いでいくには、悔しいけど妥協せざるを得なかった。
    せめてプライベートにだけは男はノーセンキュー。
    老後まで独り身でも困らないよう、資格を取りまくって給料を上げ、貯蓄に励んだ――励んでいた私。
    ああ、あと1ヶ月でボーナスだって出たのに!
    色々さらっと流したけどね……。
    一つ一つのエピソードを語ったら長いのよ?
    エグいし、気ぃ滅入るし。
    ねぇ、女神サマ?
    そんな女に四人も男ばかりあてがって一緒に旅とか。
    ……お前、実は悪魔か鬼の類いだろ?
    ははは。そういうヤツを倒してこそ勇者、だよねぇ?
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