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旅立ち

王子の名前

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    〝皇都〟と呼ばれるらしい城下町。広さはせいぜい皇居より少し広いか、プラスアルファで下町セットにしたよりは狭いか。
    少なくとも山手線一周で囲める中には収まる程度の町を出れば、そこはもう
    ……私をイラつかせる者ばかりのこの世界で、唯一まともそうな黒髪短髪が第二王子の位にある冬氷とうひの国。
    ……まあまともったって、あくまで最悪の中の最良だ。到底信用なんか出来ないけど、他の若い三人に比べれば対応が大人。
    面倒な会話をうっちゃるために、先の自己紹介が意味不明だと言ったら、丁寧な説明付で名乗られた。
    ――曰く。
    彼の名はとう はく 幸守ゆきもり
    氷の国の爵家の幸守さん、と言う名なのだと。
    同様に、赤毛は夏火かかの国の侯爵家の出で、夏侯和貴かこう かずたか
    緑髪は春茨まじの国の伯爵家出身の春伯影家しゅんはく かげいえ
    白金ブロンドが秋黄あきの国の子爵家出身の秋子嶺仙しゅんし れいせん
    「は?    あんた達、第二とはいえ王子じゃなかったの?」
    「ったりめーだ、全員正真正銘の第二王子だ。自分で勝ち取った地位を偽るわけねーだろ」
    何を阿呆なことを言っている、とばかりに赤毛――もとい和貴が噛みついてくる。
    名前を覚えてやるのも癪だが、いつまでも赤毛じゃ自分が面倒臭い。
    何せこいつら王候貴族の髪色は皆同じ――国別の色違いが統一されているらしいから。
    今はいいけどその内毛色呼びで結局自分が面倒になるのもムカつくし。
    教会へ連れて行かれる時に乗せられた豪華馬車、役割のローテーションはあれど、車の中に一人、御者席に一人、両脇に護衛の騎馬のポジションのまま馬車は進む。
    「何よりこいつらは何なのよ」
    我が物顔で車内の席で惰眠を貪る畜生ども。
    「だーかーらー、それも神獣様方からご説明があっただろーが!」
    「ええ、それについても納得いかないのよね」
    今、奴ら四人は揃って首飾りを下げている。
    この畜生が彼らにした物だ。
    それぞれルビー、グリーンサファイア、ホワイトサファイア、ブラックサファイアと石の種類の違う、でもデザインは同じ首飾り。
    ――こうして旅だった今でも私自身に勇者の力など無い。
    あの首飾りの宝石に王子達が力を籠めると、対応している獣がその力を受け、そいつが私に憑依して初めて力が使える、らしい。
    しかもこの力は代償が必要と来た。
    その代償とやらが何かを聞かされ、奴らの説明不足が発覚した。
    ――力の代償は、私の血。
    奴らは、人間ではありませんでした。
    ……いやまあ赤毛……でなく和貴の角と言う突っ込み処にこれまで突っ込む余裕が無くて忘れかけてた点については己の落ち度を認めよう。
    けど。力を使ったら、その力を籠めた野郎に血を吸わせなきゃならんらしい。
    ――知るかッ!
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