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召喚されました。
真っ平御免だよ!
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翌朝。日の出とほぼ同時にやって来た女性たちにわらわらと服を着せ替えられて朝食を突っ込まれ。
その身一つで馬車に放り込まれた。
――同行するのは例の四人の王子様、のみ。御者も居なければ護衛の兵もお世話役の従者やメイドさんも居ない。
……それでも他の、世の普通のお嬢さんなら、これだけのイケメンに囲まれたら少しはほだされてしまう娘も居たかもしれない……と思うくらいには美麗な顔だ。
私は見てるだけでイライラしてくるけど、流石に芸術品みたいな顔に青タン作るのは――高価な壺をうっかり割るような罪悪感と後々の面倒が恐ろしくて実行には移せなかった。
「――で? 私は何処に行かされるわけ?」
けど。暴力は自重しても、もう言葉まで自重してやるつもりはない。
「あー、と。まずは帝都の教会へ」
……国を持たない皇帝も、流石に政治や軍務に携わる者や使用人を住まわせ、その生活を成り立たせる為の最低限の城下町は持っている。
その町にあるのが今回の元凶たる女神を奉る教会の総本山。
政治や軍への影響力は皆無であるが、神託による御言葉だけは皇帝の勅命に唯一勝る影響力を持つのだと言う。
――即ち、皇子や王子程度では逆らえるはずもなく、命じられたように動いただけだと言いたいらしい。
「いいわ。なら、その女神とやらに直接文句を言ってやるだけだわ。――よくも断りもなく勝手に私の人生を……これまで重ねてきた全ての努力を踏みにじって、ふざけた事しやがって。……とっとと元の世界へ帰せと」
私があの会社で働いて、まともに暮らせるようになるまでどれだけ苦労したか。
どう見てもパソコンなんてあるはずのない世界ではゴミ能力と化した数々の、あんなに頑張って取った資格。
そうやって少しずつ給料上げて貰って必死にコツコツ貯めてきた貯金は?
それを全部不意にさせといて勇者をしろと?
もしこの美麗な取り巻きがご褒美のつもりなら、女神の目と頭は本気で腐っているとしか思えない。
「ねえねえ、何を怒ってるの?」
きゅるんと丸く大きな瞳であざとく上目遣いにすり寄ってくる緑髪のショタっ子。
「――寄らないで」
「おいおい、愛想の悪い女だなあ。もう少し愛嬌ってモンを身に付けた方が良いぜ?」
学生時代にも社会人になってからも一定確率で居たナチュラルに女にセクハラかますだいぶんらしい赤毛。
「余計なお世話だわ」
「……随分と強気なものですね。今の貴女くらいなら私は片手でくびり殺せるのに」
興味無さそうに淡々と切って捨てるのは白金髪。
「まあまあ、お互い初対面も同然なのですし……突然厳つい男に囲まれれば若いお嬢さんでは警戒されても致し方ありますまい」
……黒髪のおいちゃんだけは、まあこの中では多少好感が持てるかもしれないけど。
「――悪いけど。初対面だろうが長年の付き合いがあろうが、私は男という生き物が、心の底から大ッ嫌いなの。出来れば全員この世から消えて欲しい位には憎んでるの。……ええ、分かってるわよ実際にはそんなの無理だしオトコがいなくなったら子供も作れないもんね? だから公の場では譲歩してやるけど、プライベートに男は要らない。私の視界に入らないで、声を聞かせないで、触らないで!」
私はすり寄ってきていた緑髪の手を叩き落とした。
「私は。私の意思に関係なく無理矢理誘拐やらかした女神の世界なんて救いたくない。ましてやそれを実行した男の命令に唯々諾々と従うあんたらみたいな男と一緒に旅? 冗談じゃないわ!」
その身一つで馬車に放り込まれた。
――同行するのは例の四人の王子様、のみ。御者も居なければ護衛の兵もお世話役の従者やメイドさんも居ない。
……それでも他の、世の普通のお嬢さんなら、これだけのイケメンに囲まれたら少しはほだされてしまう娘も居たかもしれない……と思うくらいには美麗な顔だ。
私は見てるだけでイライラしてくるけど、流石に芸術品みたいな顔に青タン作るのは――高価な壺をうっかり割るような罪悪感と後々の面倒が恐ろしくて実行には移せなかった。
「――で? 私は何処に行かされるわけ?」
けど。暴力は自重しても、もう言葉まで自重してやるつもりはない。
「あー、と。まずは帝都の教会へ」
……国を持たない皇帝も、流石に政治や軍務に携わる者や使用人を住まわせ、その生活を成り立たせる為の最低限の城下町は持っている。
その町にあるのが今回の元凶たる女神を奉る教会の総本山。
政治や軍への影響力は皆無であるが、神託による御言葉だけは皇帝の勅命に唯一勝る影響力を持つのだと言う。
――即ち、皇子や王子程度では逆らえるはずもなく、命じられたように動いただけだと言いたいらしい。
「いいわ。なら、その女神とやらに直接文句を言ってやるだけだわ。――よくも断りもなく勝手に私の人生を……これまで重ねてきた全ての努力を踏みにじって、ふざけた事しやがって。……とっとと元の世界へ帰せと」
私があの会社で働いて、まともに暮らせるようになるまでどれだけ苦労したか。
どう見てもパソコンなんてあるはずのない世界ではゴミ能力と化した数々の、あんなに頑張って取った資格。
そうやって少しずつ給料上げて貰って必死にコツコツ貯めてきた貯金は?
それを全部不意にさせといて勇者をしろと?
もしこの美麗な取り巻きがご褒美のつもりなら、女神の目と頭は本気で腐っているとしか思えない。
「ねえねえ、何を怒ってるの?」
きゅるんと丸く大きな瞳であざとく上目遣いにすり寄ってくる緑髪のショタっ子。
「――寄らないで」
「おいおい、愛想の悪い女だなあ。もう少し愛嬌ってモンを身に付けた方が良いぜ?」
学生時代にも社会人になってからも一定確率で居たナチュラルに女にセクハラかますだいぶんらしい赤毛。
「余計なお世話だわ」
「……随分と強気なものですね。今の貴女くらいなら私は片手でくびり殺せるのに」
興味無さそうに淡々と切って捨てるのは白金髪。
「まあまあ、お互い初対面も同然なのですし……突然厳つい男に囲まれれば若いお嬢さんでは警戒されても致し方ありますまい」
……黒髪のおいちゃんだけは、まあこの中では多少好感が持てるかもしれないけど。
「――悪いけど。初対面だろうが長年の付き合いがあろうが、私は男という生き物が、心の底から大ッ嫌いなの。出来れば全員この世から消えて欲しい位には憎んでるの。……ええ、分かってるわよ実際にはそんなの無理だしオトコがいなくなったら子供も作れないもんね? だから公の場では譲歩してやるけど、プライベートに男は要らない。私の視界に入らないで、声を聞かせないで、触らないで!」
私はすり寄ってきていた緑髪の手を叩き落とした。
「私は。私の意思に関係なく無理矢理誘拐やらかした女神の世界なんて救いたくない。ましてやそれを実行した男の命令に唯々諾々と従うあんたらみたいな男と一緒に旅? 冗談じゃないわ!」
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