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第一部 第一章 花嫁選びの宴

いざ王城へ!

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 日が沈み、星が瞬き出す時刻。

 普段から賑やかな王都だけど、今日ばかりは賑やかなんて言葉じゃ足りない。
 街にある全ての貴族屋敷から漏れなく馬車が出され、王都の主要な道は多くの馬車で溢れかえった。

 その一つに私も乗り、王城を目指していた。
 ……馬車が渋滞して、さっきから亀の歩みだけどね。

 これで一応渋滞のし過ぎを緩和する為に、下位の貴族から会場入りする事が決まっていて、男爵家のうちの馬車も早くに屋敷を出発したから、城の門はもう目の前だった。

 ……あー、胃が痛い。

 「……凄い顔してるよ、従姉ねえさん」

 夜会に出る今夜は流石に一人では馬車に乗せて貰えなかった。
 夜会とくればエスコート役は欠かせないからね。
 けど、お父様はお母様をエスコートするし、兄は義姉のエスコートをしなければならない。
 その為、この夜会で私のエスコートをする為だけに呼び出されパシられ役に抜擢されたのは、父方の従弟、ヨシュアだ。

 彼も婚約者はまだ居ない。今日は絶好のチャンスのはずが、私のせいで申し訳ない。

 「いや、俺はそもそも招待されてないからな? 従姉さんのエスコート役だから会場に入れるんであって、当主でも嫡男でもないからな?」

 そんな事を言い合っている内に、どうやら馬車は入口に到着してしまったらしく、馬が歩みを止めた。
 先に馬車を降りたヨシュアのエスコートで馬車から出る。

 楚々と取り繕って歩き、会場へと足を踏み入れた。

 「……さすが王城ね。広いわ。ウチの小麦畑よりは狭いけど」
 「そりゃ、耕作地と建物の広さを比べる方が間違ってるだろうよ。まぁ、ウチの屋敷と比べるのも逆の意味で間違ってるけどよ」

 そうね。この会場にうちのお屋敷が幾つ入るかしら? ……その位広くて、まだまばらな人影に会場は少し寂しい感じもその時はしていたのだけど。

 「ふふふ、さっき寂しいとか思った私を蹴り飛ばしてやりたい……」

 続々と到着する招待客が、この広い会場を埋め尽くす頃には平民街のバーゲンセールに参加している気分になったわ。寂しいなんて感じる余地は皆無だわね。

 どうにか貴族としては最高位の公爵家の方々も全て会場に詰め込まれ、扉が閉められる。

 そしていよいよ王族の入場。
 これが終わればパーティーが始まる。

 なんか始まる前に既に疲れたんだけど、一応義務として最低限の挨拶をこなさねばならない。
 ダンスは……なんとかサボれないかな?
 挨拶だけしたらとっとと帰りたいのだけど、勿論帰してくれるのよね?

 「竜王陛下、ホルアス=ライトランド陛下、ご入場!」

 おっとその前に。
 光の国ライトランドの貴族の末席に名前があっても滅多にお目にかかれない、竜王陛下のご尊顔で目の保養をしておくか。

 頭を下げつつ、頭を上げる事を許す言葉を待つエルシエルは、ドキドキしながら耳を澄ませていた。
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