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第一章

農場経営始めました。

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    さて。たった二人とはいえこれまでゼロだった人手がようやく手に入ったのだ。
     「家畜は流石に昨日頼んで今日には届かないけど、野菜や果物の種や苗は今朝届いたわ!」

    ……実は受け取ったのは私ではなくブラームスだったらしいけど。

    昨日、二人を農場の近くの家へ送り届けて戻ってすぐに予算の限り注文し、私は今日のためにさっさとベッドに入って翌朝までぐっすり良く寝ていた――その最中の早朝に、配送の人が来たらしい。
    日本じゃ「オリコン」と呼ばれていた折り畳み式の、両手で抱えるサイズのプラスチック製の箱が玄関の外に積み上げられ山の様になっていた。

    私はそれを一度アイテムボックスに片付け、朝ごはんの支度にかかる。
    ついでにブラームスの分のお昼を「レンチン」すればオーケーという段階まで仕上げ、私と他二人分のお弁当も用意する。

    そして。「次」の為に血を差し出して――
    「じゃ、行ってきます」
    私はさっさと屋敷を出た。

     ちなみに種も、注文した家畜も全部地球で見慣れた物。
     神々の世界だからか、実に様々な動植物が売っていて、明らかにかつて訪れた世界にいたファンタジー植物や家畜も見かけたから、いずれは挑戦してみたいけど。
    まだ元手しか資金の無い状態で冒険する程、私は身の程知らずにはなれなかった。

    アダムとイブに、せっせと畑仕事を仕込む日々が始まる。
    ……と、同時に。

   「この星で自給自足するだけならこのままで良いけど、作物を売って商売するなら、品種改良は必要不可欠よね」
    私は一人研究施設に種を持ち込み、魔法を駆使して商品価値を高める研究に打ち込む。

    「……これから本星と頻繁に物のやり取りを始めるつもりなら、宇宙港くらい造れ」
    頻繁に配達人がやって来る様になって、少々不機嫌なブラームスに専用の港と「配達ボックス」的な存在を教えられた。
 
    早速流通ルートを考慮して、一番良い場所に港を建設し、ついでに倉庫や配送センターを併設。
    その後もカイン、アベル、リリィと増えていく下僕達に牛や豚、鶏の世話を教え、その後に続く下僕達に仕事を教えられる様に教育を施す。

    ようやく見た目だけだった農村が一つ、まともに機能し始めた。

    私達の食卓にも“地元産”の食材が増えてくる。
    まだ“ブランド食材”の域には達していないが、日常的に食べる分には申し分ない出来映えだと胸を張れる美味しさだ。
    そろそろ加工品の開発も始めようかな?

    次の子に何をさせようかと考える。
   「……楽しそうだな?」
   「ええ。自分の命がかかってなければもっと気楽に楽しめるんですけどね」
   「その文句は親父殿に言ってくれ」

    ……相変わらず無愛想だけど、当初に比べれば少し当たりが柔らかくなった……かな?
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