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第一章

無人の街が出来ました。

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    まずは風魔法を身に纏う。
    風の結界で中に空気――というか酸素を閉じ込め、さらに外気と遮断することで内部の温度を一定に保つ。

    かつて高山地帯を旅するのに便利でお世話になった魔法だ。
    そして、恐る恐る、エリアの外にまずは足の爪先だけをそっと出す。
    寒くは……ない。
    手を突き出してみても……あの時みたいな一瞬で凍りつきそうな寒さは感じない。

    ――が。
    これはあくまで“高山地帯仕様 ”の魔法だ。
    例えマイナス気温でバナナで釘が打てる寒さでも、空気のない宇宙空間よりは圧倒的に暖かい。
    流石に結界越しでも日本の雪国の冬程度には寒い。

   「これは……防寒対策は必要だわね」
    次いでゆっくり頭をエリアの外へ出し――息を吸って……吐き出す。
   「呼吸、出来るわね」
    これでエリア外海とでも一応活動出来る事が分かった。

    翌日。改めてしっかり防寒具に着替えて再チャレンジ。うん。問題ないね。

   「じゃ、始めましょうか」
   地水火風の四大魔法を大いに活用し、アイテムボックス内の物も惜しまず使い。

    半月後にはディズニーランド(シー込み)並の面積を誇る街が完成した。
    ……ただし、住居は従業員用の必要最低限のみ。
    残りは宿泊施設、温泉リゾート施設、遊園地にカジノ含むアミューズメントパークに商業施設(テナント空っぽだけど)、劇場など、あらゆる娯楽施設とを配置し、見目も美しい街になった。

    ――ただ。
   「やっぱり無人の街じゃ空しいわね……」
    シンと静まり返った無音の街は、ただでさえ寒いのに余計に寒々しい気分にさせてくれる。

    ITっぽい技術のある世界だし、ある程度の接客は機械に任せても良いけど。
    「商業施設を仮にマイブランドで揃えるにしても、そもそも売り物も無いし」

    いや、アイテムボックス内のレアアイテムとかはもしかして売れるかもしれないけど、それだって限りがあるし、あくまで異世界の物なのだから、後々面倒に巻き込まれる可能性は多分にある。

   「けどまぁ、次の審査には通るでしょ」
   これでどれだけ時間が稼げるか。

   一応勉強も続けているけど、いくら電子書籍の教科書とにらめっこしていても、人の縁は繋がらない。
    今回は大丈夫でも、必ずいつかはあの男を動かさなくてはいけない日が来る。

    ……せめて、この世界の住人を、最低でも一人は紹介してくれない事には、私にはこうして無人の街を量産するしかできない。
    時間があれば、それでこの星を満たす事は出来るだろうけど……。

    「それじゃぁ駄目……なんだよね?」
    私は一人ため息を吐いた。
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