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第一章

少し現状が見えて来ました。

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    家事をしつつ勉強しながらこの屋敷に居座って、今日で三日目。

    貫徹は頭の働きを悪くするから最低限、1日三時間程の睡眠時間は確保したけれど、他二十一時間は大半を勉強に当て、家事は基本“ながら”で同時進行で終わらせた。
    結果、まだおぼつかないながらも文字を覚え、主要な単語を幾つか読めるようになった。……辞書を引きつつなら子供の絵本くらいは理解できる。

    だけど、既に三日も過ぎてしまった。
    あの男の言葉を信じるなら、あと四日程で審査員とやらがやって来る。
    それまでに何も出来ていないのはまず過ぎる。
    せめて、計画企画書の一つは仕上げておかないと……!

    「けど、荒れ地どころか岩と砂だけの極寒の地って。少なくとも農業漁業は無理よね……」
    と、なるとお約束としては観光か教育施設を作って人集めだろうか?

   「けど、ツテも無いし、ゼロから教師集めてカリキュラムやら設備やら揃えて……って、無理だよね?」
    当選観光資源も皆無。
    だけど、だだっ広いだけの土地だけはある。

    ていうか、そもそもここどこよ?
    ……って、調べましたよ!

   「何、ファンタジーかSFか、世界観どうなってんのよ!」

    神々の世界というここは、一つの大きな星。
    どのくらいの大きさかと言えば、太陽が、太陽から見た月サイズに見えるサイズの巨大惑星。
    そして私の居るここは、土星の輪のようにその星を囲う小惑星群の一つ――何だけど。
    そもそも母星のサイズが桁違いなだけに、小惑星と言いつつ普通に月くらいの大きさはある。

    資材や何やらは母星から通販で購入すれば良く(当前お金は必要だけど)、小惑星群の中にも大小様々あって、既に開拓済みの所もあるそうだ。

    「へぇ、見に行ってみたいなぁ……」
    けど、とにかく今は間近に迫ったタイムリミットに向けて対策を打たなければ。

    「……正直、これで誤魔化せるかは微妙過ぎるけど、他に出来る事も無いし」
    私は紙束とペンを前に気合いを入れる。

   「さぁ、やるわよ!」
    そして。
    丸々四日かけ、私は幾つかの企画書を仕上げた。

    「それではこれを、その審査員とやらにお渡しくださいね?」
    笑顔でそれを彼に押し付けて。

    私は久々の長い眠りに就いたのだった。


    ※    ※    ※


   「……意外ですね。まさか貴方がこんなまともな企画書を提出してくるとは……思っていませんでしたよ?」

   「だろうな。俺もそんなつもりじゃなかったが、余計な世話を焼いた奴が居てな」
   「あの方もご苦労な事で。まぁ、今回はこれで首の皮一枚繋がった感じですかね?    次は一月後に来ますから、その時までにはせめて、この屋敷以外の建物が見たいですねぇ」

   「――うるせぇ、うせろ」
   「では、また」

   「……チッ、面倒臭ぇ」
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