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第一章
言い訳タイム
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「あはは、何か失礼な事を言われたりされてる予感がしてるんだけどさ。悪いね、これ、君の世界で言う手紙みたいなものでね。あくまで一方通行なんだよ」
へらへら笑う半透明の像に、こめかみがひきつる。
「まぁ、それはそれとして。本題だ」
けど、奴は一方的に捲し立てた。
「この端末に、色々と教材をインストールしておいた。……その世界の共通語になっている神語の和訳辞書とか。話し言葉だけは規則の抜け道使って最初の一ヶ月だけ効果のある翻訳魔法かけたけど、一月過ぎたら効果も切れるから」
……これまでの異世界生活で、初期の知識常識のインストールには慣れているとはいえ。
「じゃ、そゆことで。頼むよ!」
ひらひらとお気楽に手を振ってやがるこいつに一矢報いたいと、憤りが溢れるのを止められない。
プツリと音声が途切れ、像もかき消える。
「……はぁ」
イライラして仕方ないけど、今はいくら憤ってもそれだけでは何も得られない。
一旦怒りを追い払うために息を吐き、その時の為にも知識を詰め込む方に専念するため、そのアイコンを指でつついた。
電子書籍の様に、その端末で読める辞書や参考書。
私は早速言語の勉強を始める事にした。
かつてはこの手の初期チュートリアル的な勉強は野宿をしながら……なんて事もザラにあったから、雨風凌げる家の中なら、例え廊下でも問題は無い。
……贅沢を言えば、寝袋くらいは欲しいところだけど。
「そこは板張りの床じゃないだけマシか」
ふるふると頭を横に振り、思考を切り替え――
ぐうぅ、と間抜けな音に気付いたのは辺りがすっかり暗くなった頃の事だった。
「今、何時だ……? いや、この世界の時間の測り方なんか分からないし意味無いか」
しかし、空腹を覚える程度には時間が過ぎたのは確かだろう。
近くの窓から外を覗いてみると、さっきは明るい青空だったはずの円の空は、今は周囲の星空に馴染むように一体化していた。
「……さて、ご飯どうするかな」
最低限のサバイバル料理と家庭料理の腕はあるけど、食材も調味料も無しには流石に何も作れない。
というか、その為にここにいる。
……あいつは、通販と言っていた。
恐らくこの端末に、通販サイト的なものも入っているのだろうが、流石に今日の今日でいきなり読み書き出来るはずがなく。
仕方なしに、取り敢えずキッチンにそっと侵入しあちこち探ってみる。
コソ泥の様で情けないけど、腹が減っては戦も出来ないのである。せめて、パンとチーズくらいは欲しい。
「――おい」
へらへら笑う半透明の像に、こめかみがひきつる。
「まぁ、それはそれとして。本題だ」
けど、奴は一方的に捲し立てた。
「この端末に、色々と教材をインストールしておいた。……その世界の共通語になっている神語の和訳辞書とか。話し言葉だけは規則の抜け道使って最初の一ヶ月だけ効果のある翻訳魔法かけたけど、一月過ぎたら効果も切れるから」
……これまでの異世界生活で、初期の知識常識のインストールには慣れているとはいえ。
「じゃ、そゆことで。頼むよ!」
ひらひらとお気楽に手を振ってやがるこいつに一矢報いたいと、憤りが溢れるのを止められない。
プツリと音声が途切れ、像もかき消える。
「……はぁ」
イライラして仕方ないけど、今はいくら憤ってもそれだけでは何も得られない。
一旦怒りを追い払うために息を吐き、その時の為にも知識を詰め込む方に専念するため、そのアイコンを指でつついた。
電子書籍の様に、その端末で読める辞書や参考書。
私は早速言語の勉強を始める事にした。
かつてはこの手の初期チュートリアル的な勉強は野宿をしながら……なんて事もザラにあったから、雨風凌げる家の中なら、例え廊下でも問題は無い。
……贅沢を言えば、寝袋くらいは欲しいところだけど。
「そこは板張りの床じゃないだけマシか」
ふるふると頭を横に振り、思考を切り替え――
ぐうぅ、と間抜けな音に気付いたのは辺りがすっかり暗くなった頃の事だった。
「今、何時だ……? いや、この世界の時間の測り方なんか分からないし意味無いか」
しかし、空腹を覚える程度には時間が過ぎたのは確かだろう。
近くの窓から外を覗いてみると、さっきは明るい青空だったはずの円の空は、今は周囲の星空に馴染むように一体化していた。
「……さて、ご飯どうするかな」
最低限のサバイバル料理と家庭料理の腕はあるけど、食材も調味料も無しには流石に何も作れない。
というか、その為にここにいる。
……あいつは、通販と言っていた。
恐らくこの端末に、通販サイト的なものも入っているのだろうが、流石に今日の今日でいきなり読み書き出来るはずがなく。
仕方なしに、取り敢えずキッチンにそっと侵入しあちこち探ってみる。
コソ泥の様で情けないけど、腹が減っては戦も出来ないのである。せめて、パンとチーズくらいは欲しい。
「――おい」
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